太宰治のメリイクリスマス【本】
昔むかし……太宰治に傾倒している男に会った。
ドライブに行った。
中山道馬籠宿へ向かった。
真籠が島崎藤村の故郷という話から文学の話になり、だんご屋で向かい合ったとき彼が言った。
「俺は、太宰に傾倒している」と。自分に酔っているように聞こえた。
その帰り道、喉が乾いたわたしは「休憩しませんか」と言った。
彼は顔を赤らめて、デヘヘヘと笑った。
ち、違います! 喫茶店です!
彼は意外そうな顔をした。
なんだか勘違いが気持ち悪くて「彼氏がいるので、もう会いません」と伝えた。彼は物凄く、意外そうな顔をした。
太宰治アイロニー傑作集『女神』に収録されている、『メリイクリスマス』を読んで、彼を思い出した。
今なら「違いますよ~、もう!やだなぁ~」バシッと肩を叩ける。彼が純真で健康的な男の子というのもわかる。あの頃は若かった。
もちろん作品は、そんな話ではない。編者の長山靖生氏はこう解説している。
なんだか、可愛くて憎めない男の話でした。
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お読みくださり、ありがとうございます。いただいたチップで、本を買いたいです。