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未来のために、食事を捨てる。

私には、幼い娘がいる。
本当に自分が生んだのかと疑うくらい、愛嬌たっぷりでかわいい我が子。
とてつもなくプリティでラブリーな彼女なのだが、
心配ごとがひとつ。
ごはんを全然、食べないのである。
離乳食のはじめは、わりと食べていた。でもある時からぱったりと食べなくなった。
食欲がないのか、味付けの問題なのか。
これはどうかな、あれはどうかなと試しては撃沈する日々。
だからほぼ毎日、食事を捨てている。
こんなことを書いたら、いろんな方面から怒られてしまいそうではある。SDGsとか、持続可能な社会を、とか言われているこの時代に食事を捨てるなんて、ありえない。あまりにも時代に逆らいすぎている。いや、時代の問題ではないのかもしれないけれど。
はじめのうちは、娘が残した食事は私が食べていた。どろどろのおかゆやペーストの野菜をスープやカレーに混ぜて食べていた。でも、成長するに従って「ムンッ」と口を閉じて食べないと抗議するだけだった娘は「投げ捨てる」ことを覚えた。私の反射神経ではとても追えない速度で飛んでいく食材、食器たち。床に散らばる残骸。さすがに、食べられない。ごめんなさいと唱えながら、捨てている。
食べないのは、遺伝なのだろうか?
母に聞いてみた。
「私、子どものころごはん食べてた?」
「食べてたよ」
遺伝じゃ、なかった。
「でも、全然寝なかった」
私は、夜泣きがすごかったらしい。あまりに寝ないから、夜な夜なドライブに行っていたらしい。車に乗ると、寝たのだそうだ。
私の娘は、夜通し寝てくれる。夜泣きも、ない。
食べるけど寝ない子と、食べないけど寝る子。
食べないのもしんどいけれど、寝ないのもしんどかっただろうなと思う。
内容は違えど、子育てって、悩みが尽きない。
たぶんみんな、何かしらでつまづいて悩んでいる。
それにたぶん、食べたら食べたで違う悩みも出てくるのだと思う。噛まずに丸呑みするとか、作っても作っても足りなくて食費がかさむとか。
かつて赤ちゃんだった私は、今は時間さえあれば寝ている。夜泣きで寝ていなかったなんて、今では信じられない。
娘も、きっと同じなんだと思う。
今は食べなくてもいつかは食べるだろうし、何十年後には「あのころ食べなかったんだよねぇ」と懐かしい思い出になるんだろう。…たぶん。
だから、娘のために私にできることといえば「いつか」を信じて食事を用意し続けることなんだと思う。たとえ捨てることになったとしても。

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