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福岡5歳児餓死事件から、洗脳の手口を教える。


2020年4月18日、福岡県篠栗町に暮らしていた当時5歳の 碇 翔士郎 君が餓死した。

死亡当時男児の体重は10キロ程度しかなく、死亡前の10日間は水だけしか与えていなかった。


県警は今月2日、母親の碇 理恵、知人の赤堀 恵美子両容疑者を保護責任者遺棄致死容疑で逮捕した。

逮捕後の調べで分かってきたのは、碇と赤堀の「異常な関係性」

捜査関係者によりますと赤堀は碇から
およそ1200万円を搾取していたとみられていて、
家族旅行やブランド品の購入のほか、
パチンコなどの遊興費として使っていたことが分かりました。
引用元・Yahooニュース
2018年5月頃に赤堀が『他の保護者から碇の子供のトラブルのことで訴えられている。解決のためにはカネが必要。暴力団とつながりのある“ボス”がトラブルを解決する』などと架空のトラブルをでっちあげ、約50万円を碇から詐取した。

赤堀は碇を精神的に追い詰め、食費を切り詰めさせた。
「『(裁判で)離婚の慰謝料を多く取るために生活が困窮していると見られた方が有利だ』などとして、2019年8月頃から3人の子供に対する食事制限を指示していました。死亡時の翔士郎ちゃんの体重は10キロ前後しかなく、体はやせ細り、あばら骨が浮き上がった状態でした。同年齢の平均体重の半分ほどだった」
引用元・文春オンライン
碇は生活費の工面などで離婚をためらうことがあった。だが、赤堀が「私が食事の面倒は見るから」「夫の浮気を理由に裁判をすれば金を取れる」などと仕向けたという。
引用元・東京新聞


いわゆる「洗脳」と呼ばれる主従関係は、どのように発生したのか?
防ぐことは出来なかったのか?小さな命が犠牲にならず済む道はなかったのか?

翔士郎君は、なぜ餓死しなくてはならなかったのか?


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こんにちは。

谷塚総合研究所・心理学部の塚本です。

今日は、今月2日の報道をきっかけに明らかになりつつある「福岡5歳児餓死事件」を、心理学的な観点から記事にします。


洗脳は徐々に、しかし確実に行われる。

この事件において、最もフォーカスが当てられている問題は、
碇と赤堀の関係。つまり、赤堀が碇を支配する「洗脳」です。

洗脳というと、自分には関係のないこと。異常な宗教なんかで行われているもの。という認識が多くの人の中にあります。

ですが、洗脳というのは非常に身近で行われている行為です。

事件捜査で徐々に明らかになることとは思いますが、今はすでに明らかになっている情報と、そこから見える洗脳の考察をもとに記事にします。


身近に存在する「サイコパス」

赤堀のすでに出ている情報を見るに、彼女はいわゆる「サイコパス」的な傾向の強い人間です。

世間一般のサイコパスの認識は「人の痛みが分からない人」というものでしょうが、最も大きな特徴はそこではなく、

「異常なまでの自己に対する価値評価の高さ」です。

自分はもっと価値を得るべき人間だという評価が、サイコパスは異常に高いのです。

例えばあなたが、食べる物がなく異常なまでにおなかが減っているとする。
そんなとき、たまたま通りかかった人が、食べ物片手に楽しそうに誰かと歩いていたら。
通行人は、自分の空腹とは無関係と分かっていても、その通行人が憎く感じる。

たとえ食べ物がない原因が自分にあったとしても、人はその感情の矛先を無関係な人や社会に向けたりします。

その人たちが悪い。と認識出来ないとその人たちから奪えないからです。
自らの命の危険を感じているときに人は、取引や交渉などのトレードを介さず、略奪します。それは、生きるための脳の仕組みです。
略奪を正当化するために脳は「彼らが悪い」と仕立て上げます。

自己に対する価値を高く考えるサイコパスは、常にこの空腹のような状態です。
「こんなに頑張っているのに評価されないのはおかしい」
「こんなに困っているのに助けがないのはおかしい」

実際は正当な報酬や利益を得ていても、彼らのサイコパスは自己評価が高すぎてたりない。おかしい。と考えます。

その結果は、先ほどの例のように略奪を正当化する。というもの。

彼らサイコパスが人の気持ちや痛みを理解できない根本原因です。


略奪サイコパスの特徴

サイコパスは生まれながらの特徴なので、小さい時からその自己評価の高さを持って生きています。

すると彼らは、小さいうちから働きより多くの報酬を求めるので嫌われる。

嫌われると小さいうちは集団の中で生活が出来ないので、彼らは生きるために失敗から学びます。


サイコパスが幼少期に学ぶ生存戦略は、大きく分けて二つ。

①自己評価に見合う評価を、他人から受けるよう努力する。

②普段は自己評価を隠していて、奪い取れる相手を選別して奪う。


①の例の場合は、実際に自己評価を満たすために努力するので、周りの人の評価も高い。
社会的地位が高い人にサイコパスが多い。という検証結果もあり、サイコパスが個人的・社会的に優位に働く例です。

②の例の場合は、普段はいい人を演じ、ターゲットを見分けて徐々に自己評価を満たす価値を略奪する。
今回の赤堀はこの②のケースのサイコパスだと考えます。
分かりやすくするために「略奪サイコパス」と呼びます。

略奪サイコパスは、普通に接触しても違和感を覚えることはありません。
ですが、接触回数が増えていくうちに、おかしな部分が出てきます。

かれらは私たちを略奪できる人間か?と試します。


略奪サイコパスの手口

略奪サイコパスの試す行為に多いのが「○○が足りなくて困っている」という言葉。

「今月は○○でお金が必要で、今月の生活費が苦しい」
「○○さんを守るために××さんと話し合いをしたのだが、××さんが逆上して困っている」など。

この話をしたときの私たちのリアクションを、かれら略奪サイコパスは観察しています。

重大な話ですが、この試す言葉はほぼ嘘です。
かれらにとってこの言葉は、私たちを試すためだけに使われるもので、実際のことは関係ないのです。
その瞬間のリアクションさえ取れれば、かれらの目的は達成です。

かれらが略奪出来ると踏んだ相手には、さらに嘘を重ねます。
自分がどれだけ理不尽な目に合っているかをアピールするためです。

実際、略奪サイコパスは自分が理不尽な目に合っていると信じています。
彼らにとって理不尽は、嘘ではなく本当のこと。

嘘を積み重ね、略奪可能だとかれらが判断すると、実際に略奪を始める。
それはごく小さなものから始まり、彼らは非常に腰を低くして奪う。

「明日お金が入るんだけど、今日のご飯代がなくて。。」
「知人の急な訃報なんだけど、持ち合わせがなくて。。」

最初はこんな風に、ごくわずかな金銭などを略奪する。
ここで「いつ返してくれる?」と返済を求める相手であれば、彼らの略奪は収まります。
借りることは出来ても、奪うことは出来ないと認識します。

ですが「困ったときはお互い様。返さなくていいからね」などと言ってしまえば。
彼らはあなたを略奪可能な相手だと認識し、大きな略奪へと変わっていくのです。


エスカレートする嘘

嘘は次第に大きくなります。

「身内が交通事故を起こしてしまって、○○万円必要だ。」
「親が○○という病気にかかって、緊急手術に○○万円いる。」

繰り返しますが、これらの話は嘘です。
かれらは生きるために今まで繰り返し嘘を発してきた嘘のプロなので、聞いた限りは、とても信ぴょう性の高い物語を話すのです。

「母親が○○という病気で救急搬送された。近くに住む弟が病院に駆けつけ、今は一命をとりとめたらしい。
だが、すぐにでも手術が必要で、弟の持ち合わせの○○万円、私の持ち合わせの○○万円を用意したが、○○万円足りない。
姉にも連絡しているのだが、長く疎遠になっていて、今はどのように生活しているかも分からない。」

こんな話をするのだが、下手すると姉すら存在しない架空の人物ということだってある。
かれらは嘘のプロだ。

ここまでくればさすがに大半の人は「貸してもいいが返済はいつになる?」と返済を約束させる。

だが、彼らは毎月のように突発的な非常事態が発生する。
「今度は○○が起きてお金が必要だ。申し訳ないが来月まで待ってくれ」
それを繰り返し、多くの人から奪えるだけ奪ったら夜逃げする。

ごくまれに、ここまで大きなお金であっても、返済を迫らない人がいる。
恐らく。ではあるが、今回の碇容疑者もそのような人物だったのだろう。

略奪サイコパスはここで、手口を大きく変える。


実際に略奪を始める

いままで腰を低くして略奪を繰り返したサイコパスは、ここから立場を逆転させる。

以下は今回の事件の実際のやり取り。

「ママ友らが悪口を言っている」「私は味方だ」
2018年5月頃に赤堀が『他の保護者から碇の子供のトラブルのことで訴えられている。解決のためにはカネが必要。暴力団とつながりのある“ボス”がトラブルを解決する』などと架空のトラブルをでっちあげ、約50万円を碇から詐取した。
 その次は『碇の夫が浮気をしている』と嘘をつき、『浮気相手のキャバ嬢が妊娠した。キャバ嬢のバックにいる暴力団と交渉しているので慰謝料が必要』『お前の夫の浮気調査費用を“ボス”が立て替えている』『夫との離婚裁判で書面代が必要』などとありもしない話を次々に碇に信じ込ませ、カネを引っ張った揚げ句、ついには2019年5月に離婚に追い込んだ
『(裁判で)離婚の慰謝料を多く取るために生活が困窮していると見られた方が有利だ』などとして、2019年8月頃から3人の子供に対する食事制限を指示していました。死亡時の翔士郎ちゃんの体重は10キロ前後しかなく、体はやせ細り、あばら骨が浮き上がった状態でした。同年齢の平均体重の半分ほどだった
 赤堀が“ボス”と呼んで恐れさせていたのは、実在するママ友。
実際には無関係のママ友を、まるで暴力団に近い人物であるかのように説明していたという。

食事制限中、赤堀は碇に対し、『監視カメラで“ボス”が見張っている』などとも言っていた。騙し取った金額は起訴されているだけで約200万円だが、そのカネというのも元々は碇が受け取っていた生活保護費や児童扶養手当などの毎月約20万円の収入。
 立件には至っていないが、県警は赤堀がそのほかにも碇の車を売却させたり、複数の消費者金融から借金させて、合計で1200万円ほど引っ張ったとみている。


被略奪サイコパスが被害を助長する。

ここで話を赤堀から、母親の碇に変える。

始めは赤堀の小さな嘘から始まった関係。
普通であれば、どこかの段階で金の返済を約束させるだろう。

恐らく、碇はそれをしなかった。
「困ったときはお互い様」「助けを求める人が目の前にいるのなら助ける」
碇が赤堀を助け続けた本心は、私にはわかりません。
ですが、ここまで大きな略奪が生じたのは、碇にも被略奪サイコパスの素質があったと認めざるを得ない。

碇と赤堀のような関係は、略奪サイコパスと被略奪サイコパスが重なった珍しい例ではあります。

ただし、略奪サイコパスは常に身近な人から略奪可能な人間を漁っている。
放っておけば必然と、略奪サイコパスは獲物を捕まえるのです。

略奪サイコパスが自身に対する価値評価が高すぎるのと同じように、
今回の事件の碇のような人物は、自分の身の丈を理解せず人に尽くしたことが、自分を含めた周りの人間に不幸を招いた。

自分の身の丈を理解せずに人に尽くすことは、長い目でみれば罪です。

自分はおろか、自分の周りの人の自由を奪ってしまう。
今回の事件では、碇自身の三男である翔士郎君の死を含め、長男・次男の慢性的な貧困、父親は浮気をでっちあげられ離婚している。

元をただせば、碇容疑者の身の丈を超えた他人への奉仕が原因だ。

私たち自身も、事件を教訓に身の丈を超えて他人に尽くすことは、自分の周りの人間を不幸にするということを学ばないといけません。


監視と仲介が略奪の武器

赤堀に話を戻し、略奪可能な人間を捕まえた略奪サイコパスは、次第に助けてもらう立場から、助ける立場へと変わっていきます。

一体、何から助けるのか?

ここでも、嘘を使います。

かれらが使う嘘の特徴は「監視」と「仲介」です。

赤堀は碇に対し、さんざん「あなたは監視されている」と伝え「私が仲介しているから安心しろ」と。

監視が碇に与える影響は、思考能力の著しい低下です。
人間は常に監視されていると考えると、自分自身の行動の一つ一つに神経を消耗し、まともな思考が出来なくなります。

仲介によって、碇は赤堀以外の人間との関係を遮断され、赤堀以外を信じられなくなります。

これらは急に発展するのではなく、時間をかけてゆっくりと起きるものです。

人間関係の遮断は、関係の薄い人間から、一人ずつゆっくりと始まります。

碇の場合は2018年5月、
「碇の子が友達に砂をかけた。」
「子供自身は反省しているから、責めないでやって欲しい」
「ただ問題があって、、相手の親が非常に怒っていて、裁判にまでするようだ」
「子供には関係のないことだ。むしろ子供を安心させてやって欲しい」
「私が『ボス』に仲介を依頼する。ボスは暴力団とつながりがあり、以前も他の子のトラブルを解消させた。彼女に頼めば安心だ。今回の依頼であれば50万円で受けるといっている」
「ボスと暴力団の関係を知っているのは、私を含めた一部だけだ。なので碇はボスとは無関係を装うこと。ボスには私から感謝を伝えておく。」

何度も繰り返すが、彼らは嘘のプロだ。
碇がわが子に事情を問いただせば嘘はバレるだろう。
碇がボスに感謝を伝えれば嘘がバレるだろう。
そうならないよう赤堀は仲介役を買って出る。
やり取りを遮断するためだ。

続いて赤堀は、碇の旦那の浮気をでっちあげ、碇夫婦を離婚させている。
「浮気相手のキャバ嬢が妊娠した。キャバ嬢のバックにいる暴力団と交渉しているので慰謝料が必要」
「お前の夫の浮気調査費用をボスが立て替えている」
「夫との離婚裁判で書面代が必要」
ここでも赤堀は、碇夫婦とボスとの仲介を買って、やり取りを遮断している。

もし碇が旦那に事の顛末を問いただしていたら?
矛盾が連発して、赤堀の嘘が暴けたことだろう。

「旦那はもちろん嘘をつくだろう。だがそれを信じてしまっては、子供が不幸になる。旦那の言うことを信じては子供のためにならない。あなたがしっかりと旦那を遮断しなければ。それが母親の務めだ。後のことは私とボスに任せなさい。」

架空のボスに恩を売り、碇はボスの意向に従わなくてはならない。
ボスとされた人物は実在であるが、その内面はすべて赤堀の嘘だ。


『監視カメラで“ボス”が見張っている』

恐らくこの段階ですでに碇の所持金はなく、ボスに金を借りているという構図だったのだろう。

「ボスに借りた多額の金を返すためには、あなたの家族は生活保護や旦那からの慰謝料・養育費をなるべく多く得なければいけない。」
「ボスは貸した金を返さない人間を許さない。」
「ボスはあなたたち家族が、金を返すために誠意を尽くしているかを監視している。」
「ボスは監視カメラを、あなたたち家族を監視するために取り付けた。」
「あなたたち家族の誠意をボスは監視している。」
「家庭で問題が生じたなら私に連絡しなさい。私からボスに話をする。」
「一日も早く、ボスに金を返し、ボスにしてもらった恩を返しなさい。」
「生活するための食事は、私が寄付する。少しでも多くの金をボスに返しなさい。」

全て赤堀の嘘だ。
結果として、赤松は碇から総額1,200万円もの大金をまきあげ、その代償に5歳の翔士郎君は命を落とした。


洗脳は他人事ではない

ここまで読んで「洗脳なんてバカバカしい」と言えるだろうか?
実に巧妙で、多くの人をふるい分け、適切な被略奪サイコパスから、監視と仲介を通じて行われた、嘘による略奪だ。

もちろん、事件の全容は明らかになっておらず、碇の精神状態を考えると、真実がすべて明るみに出るとは思えない。
赤松は略奪サイコパスという嘘のプロなので、そもそも言葉を信じることが出来ない。
私自身の考察が大いに混じった内容で、もやはフィクションなのかもしれないですが、「サイコパス」を理解するためには役に立つかと思います。

最後になりましたが、5歳の翔士郎君の命は失うべきものではなかったはずです。
どこかの段階で、誰かが気づいていれば防ぐことが出来たのでしょう。
せめて私たちはこの事件から何かを学び、いまある命を守らなくてはいけません
翔士郎君の命を考え想います。