白衣の天使だからって自分を犠牲にしなくてもいい
看護師をしていた時のことだ。
不眠、生理がこない、偏頭痛、手指消毒頻回による手荒れ、元々持病であるアトピー性皮膚炎の悪化など数知れず体調不良に悩まされた。
特に夜勤によるバイオリズムの狂いや、重症患者を含め多くの人を一人で看なければならない重圧に苦しみ、夜勤日の出勤前に決まって腹痛や呼吸苦などの症状が出た。
看護師の同期達とよく、私達は命を削って仕事をしていると言いながら働いていた。
特に新人時代などは断片的にしか記憶がなく、今思い出すと人生の中であれほど辛かった時期はない。まさにドン底と思える程しんどかった。それが身体にも顕著にSOSとして現れていた。
今、コロナ禍で更にそれ以上の重圧に耐え、医療の現場を支えてくれているナースを始め医療関係者の方々には心からの敬意しかない。医療者の善意と責任感でしか機能していないとも言えるコロナ禍の医療現場で働く看護師達。この状況下で憂いていることがある。ナースを始めとする医療関係者のバーンアウトと離職だ。
私はあくまでも、自分の経験から述べるのだが決して自分の体調を犠牲にしてまで働く事を自分に強要しないで欲しい。トラウマになるまで、自分がその状況に居続ける事を強制しないでほしい。他人の命を助けたり、病人をケアするのが仕事ではあるけれども、看護師自身ももっと自分達の為にセルフケアの時間をかけていいと思う。
フロントラインで働くヘルスケアワーカー達は自分のみならず、自分の家族への感染すらもリスクにかけながら正に命懸けで働いている。その重圧は自分が看護師であった時とは比にならない。だからこそ、もっと然るべき形で看護師達の働き方や給与など改善するよう社会が考慮すべきだと思う。
知り合いのドクターが仰っていたのだが、ワクチン接種には国が莫大な費用を投入しているためワクチン投与は1人につき、いくらという換算でだいぶお金がもらえるらしい。しかし、コロナ病棟や重症者などの処置に当たる最前線の医者や看護師達にこそもっと費用を割くべきではないかと疑問を持っておられた。
コロナ後看護師の離職が進んでいると話を聞くが、この辺りも改善されるべきポイントではないかと感じる。
話を戻す。
私は看護師を辞めると決めた時、両親や先輩方、友人など様々な人からアドバイスを頂いた。それでも最終的には自分の身体と心がSOSを出し続けており、限界だと実感していたので辞める決断を貫いた。
そしてそれを、今も後悔していない。
誰が何を言おうと、その時の自分の状況を分かってあげられて、全部事情を把握した上で味方になれるのは自分だけだ。その時になしうる最大限の努力をして自分が決断を下したのだから、その決断に自信を持っていたい
といつも思っている。
今振り返ってみると、あの頃は人生の中で1番大変だった。しかし、その分学んだ事も多かった。特に優先順位をはっきりさせ、それを時間軸に沿って決め導線を考えながら動くということが身に付いた。また世の中が、夜勤という大変なシフトを担っている人達がいるお陰で回っていることも痛いほど実感した。
今ではその辛かった期間もなんとか仕事を続けた自分に感謝しているし、その経験があるからこそ今があるのだと思える。
人生に起こるすべての事には意味があると思っている。でも今は健康で、心に比較的余裕があるからそう思えるのだろう。
だから、もしも身体や心がSOSを出していて、それを見て見ぬふりをしながら仕事を続けている人がいたら自分が壊れてしまうまえに、無理をしないで自分自身も労ってあげてほしい。
白衣の天使だからって、自分を犠牲にしなくて良い。
貴方が健康でいてくれたら、もっとハッピーな人が増えるのだから