見出し画像

ちょっとニッチな児童文学13『ぼくらの胸キュンの作り方』

こんにちは。ちょっとニッチな児童文学にようこそお越しくださいました。
このnoteを投稿しているMaemichiと申します。
「ちょっとニッチな児童文学」では、世の中であまりメジャーとはいえないジャンルの児童文学を、わたくしMaemichiがつらつらとご紹介いたします。
内容には多くのネタバレを含んでいるのでご注意を!

今回ご紹介するのは、神戸遥真さんの『ぼくらの胸キュンの作り方』です。

あらすじ(結末がバレてしまうので注意)

 目黒日向(めぐろひなた)は中学2年男子のサッカー部。少女マンガを読むのが好きで、Web小説サイトに恋愛小説を投稿している。それがクラスメイトの雪村唯斗(ゆきむらゆいと)に知られてしまい、日向が原作小説を、唯斗が漫画を描き、少女マンガ雑誌、「ミント!」に応募することになってしまった。

サッカー部や、家族にバレないように製作を続けていた日向だが、幼なじみのシュンにそのことがバレてしまい、咄嗟に「こういうのって何が面白いのかよくわからないよな」という一言を放つ。偶然それを聞いた唯斗は、描き上げた原稿を踏みつけてしまう。
その原稿は、シュンの姉のみかげによって修復され、「恋する放課後クリーンタイム」は最終的に二人の手で完成。無事に応募できた。

ここから感想ージェンダーの刷り込みと好きなこと

 日向の考えている「らしさ」はおじいちゃんから刷り込まれたものだろう。
しかし、自分が少女漫画や恋愛小説が好きなことは否定できない。おじいちゃんは好きなものが少女漫画や小説となると、LGBTQとか、日向が女の子になるんじゃないかと考えていた。

 世代間のギャップというのもあると思うが、男が女性的なものを好きという感覚がわからないのだろう。おじいちゃんが子供だった時代は男は男らしく、女は女らしくが当たり前の時代で、その考えの輪から外れてしまうことが、現代よりも非難されやすい時代だった。

神戸遥真さんは本書とは別の児童文学、『ぼくのまつり縫い』でも、
「好きなこと×ジェンダー」で読者にジェンダーについて疑問を投げかけている。
別にその人が何を好きでも誰も否定はできないんだけども。「ぼくらの胸キュンの作り方」に出てくるミキは、日向とは対照的な自由人で、漫画オタクであることを隠していない。兄妹で漫画好きであることは同じなのに、周りに向けて表現している姿が真逆になっていておもしろい。少女漫画好きを隠そうとする兄と、少年漫画好きを堂々とさらけ出している妹。のびのびと好きなことを表現している妹の存在は日向にとって呆れながらも、羨ましくもある存在になっているのではないだろうか。

好きなものを共有すること

 唯斗と日向は漫画を描いてコンテストに応募することを目標に2人で原作と漫画を描いていた。どちらも少女漫画を描いていること、恋愛小説を描いていることは周りに隠している。そんな2人が一つの目標を達成しようと知恵をしぼり、少しずつ漫画を完成させていく様子には「好きなことを誰かと共有できる楽しさ」が詰まっている。

 唯斗は漫画を描くことが得意でストーリーを組み立てるのは苦手。日向は小説を書くことが得意だが漫画を描くことはできない。唯斗は胸キュン場面を考えることを恥ずかしいとは思わない。だが日向は「胸キュン」シーンを想像したりすると恥ずかしくなる。
日向と唯斗できない部分を補い、強みを発揮し合うことで、一つの作品を完成させることができた。

「早く行きたいなら1人で行け。遠くへ行きたいなら共に行け」という有名なアフリカの諺がある。1人だったら挑戦できなかった目標、長い道のりだったコンテストへの応募。でも2人が得意分野を合わせて「胸キュン」な漫画を書き上げて、コンテストに応募することができた。仲間がいる、というのは心強く、簡単には諦めない力にもなる。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?