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最初の開店日

「ふつうの喫茶店を、やろう」

前回のブログを書いてから、昨日、最初の開店日だった。



とても嬉しい1日だった。

古くからの友人が、はるばる愛知から来店してくれた。

時々ケーキをオーダーしてくれたりと、やりとりはあったものの、実際に顔を見れるのは7年ぶり位。

初めて出会った時は、お互い、大きな大きな人生のターニングポイントにいた。

そしてお互い、今はそれぞれの場所で、それぞれの表現を大事にしながら暮らしている。

夫婦で来店してくれたその人は、喫茶店の雰囲気や食事、飲み物すべてにとても感動して、喜んでくれていた。

彼女の営みの1つに、小説を書き、ペンネームで世に公表するというものがある。

小説の中に、今度ラムピリカを登場させてほしいと言われた。

快諾させてもらった。

彼女の五感で感じとられた喫茶店が、どんなふうにストーリーの中に組み込まれるのか、とても楽しみだ。



大学時代の友人も、仕事の昼休みに来店してくれた。

彼はなんと、喫茶ラムピリカとなる今の建物を私が初めて内見したときに、一緒に付き添ってくれた人である。

何年も入居者のなかった、平屋の古民家。

土壁は崩れ、蔦が張り、薄暗く埃っぽくて。

「ボロボロ」と言う形容が正しいラムピリカの原型をを見たとき、彼はびっくりしていた。

「本当に、ここで喫茶店を開くの?」

質問に対して、私は、


「絶対ここだと思う!」


断固として譲らなかった。


戸惑いながらも彼は、ふーむと言いながら、内見の最中、平家の古民家の引き戸という引き戸を全て外した。

4つの部屋を遮っていたふすまや障子が取り外されて、建物全体に光が通る。風が通る。新鮮な空気が流れる。

この建物に入ってくる光は、美しいんだということに気づいた。

「引き戸を外す」と言うアイディアを持っていなかった私は、その様子を見たときに、


「あ、これは、気持ちいい。
やっぱりここで、喫茶店ができるんだ!」


確信をした。



そんな、記念すべき瞬間を共有してくれた友人が、久しぶりに訪れてくれたことが本当に嬉しかった。

あれから何年も経って、すっかり変わったラムピリカの内装を、彼は興味深そうに眺めていた。

私と同じ教育学部を卒業した彼は、教員を経て、今は市の教育委員会にいるという。


出世したねえと感心したけれど、話していたら学生の時と何ら変わらない気さくさ、愉快さ、笑顔だった。うれしくなってしまった。

と思ったら、彼も、たくさんの来客にテンパってオーダーを間違えたりしてる私を見て

「よっちゃん大学の時から全然変わってないねぇ」

と笑っていた。


言われるだろうなと思ってたけど、やっぱり言われたか…苦笑


他にも、児童文学を書く昔からの常連さん。

二度目の来店、ギターと歌の最高に素敵な生演奏を聴かせてくれるミュージシャンの2人組。

「おいしいー!」「おいしい…!」
と何度も言って、飲み物も食べ物も次から次へとどんどんオーダーしてくれる常連さん。帰る時、お土産まで買ってくれた。


各々心地良さそうに、楽しそうに過ごしていってくれた。

そして、心の真ん中に触れるような会話がいくつも生まれた。



来月の頭に、喫茶店では、友人主催の「オープン・ダイアログ」のイベントが予定されている。

私も初めて出会うコンテンツで、とても楽しみなのだが、ざっくり簡単に説明するとーー

安心して話ができる空間での対話。

解決や、結論を出すことを目的としない。

一人一人が思っていることを、安全な場所で、ただ話してみる。

そのことで、生まれるものを見ていく。


そういった内容のもののようだ。

友人のナビゲートによって、オープンダイアログは展開されていく予定だ。


「ただ話をするだけじゃん」

と言いたくなる人もいるかもしれないけれど、このオープン・ダイアログ、「やってみないとわからない」「やってみたからこそわかってしまった」という部分が、かなりあるらしい。


やってみると、思いもよらなかったような自分の本音が飛び出してきたりして、泣く人が続出したりするらしい。

そして、ヨーロッパでは、オープン・ダイアログは民間の人々の間で当たり前のものとして、社会的に浸透しているらしい。
様々なコミュニティーで、ご近所で、盛んに行われているとのこと。


ひとに話してみるだけで解決してしまう、癒されて、なんだかスッキリしてしまうというようなことは確かに、結構あるなぁと。
自分の人生を振り返ってみても思う。

だからそれを、改めて場を設けて、誰かのナビゲートのもとに開いてみるというのは、なかなかのインパクトがありそうだなと思う。



そして、実は喫茶ラムピリカというのは、開業時からずっと、結局はずっと、

「オープン・ダイアログができる場所」

として、自然と機能してきたんだな、と思った。

ここでは安心して、皆、鎧を外した自分のそのままの姿を見せてくれる。
力抜いて、みんな、本音の本音を話してしまっている。

「そんな話まで、今日初めて出会った人にしてしまっていいんですか?」
そうツッコミたくなる場面を何度もかけてきた。

そんな人たちもいれば、

自分自身との会話を、ひとりで安心して楽しんでいる、という人も結構見かけられるように思う。


別に謀ってそうなるようにと、喫茶店を作ったわけではないけれど、結果的にそうなっていたと言うのなら、それは喫茶ラムピリカの1つの長所、強みと言っても過言じゃないんだろうな。

認めて、これからも大事にしていこうと思う。



訪れる人が安心して、どんな形であれ、自分の本音に、自分のそのままの姿に触れて、自然と認めることのできる。

そんな場所であって欲しいと思う。

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