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瀬戸 夏樹
2017年1月23日 12:00
前回、第16話「学院魔導抗争」各話リスト 学院に入学して1ヶ月。 リンとテオは相変わらず試験と課題に追われる日々を送っていたが、それでもずいぶん慣れてきて幾らか余裕が出てきていた。「今日は物質生成魔法の授業だな。課題終わってるか?」テオが学院の書を開いて歩きながら、リンに話しかける。「あと最後の仕上げだけ。休み時間のうちに終わるよ」「じゃ、教室でやれるな。早めに行って席とっ
2017年1月15日 12:00
前回、第9話「賢い杖の選び方」各話リスト レンリルの街には木枯らしが吹きすさび、道行く人々はコートを着て身を縮こまらせながら歩いている。太陽石には季節に合わせて気温を調節する効果もあるようだ。 試験が近づくとレンリルの人々はみんな急にソワソワし始める。大丈夫、試験までまだ期間は十分にあるとタカを括っていた見習い魔導師たちも隙間時間に魔法語を暗記しようとポケットからメモを取り出し、ブツブ
2017年1月14日 12:00
前回、第8話「魔法の工場」各話リスト 工場を後にしたリンとテオは商店街の中にある杖屋を目指した。平日の昼間だというのに商店街は大勢の人で賑わっている。リンとテオは商店街の奥にある杖やにたどり着くまで人ごみをかき分けるようにして進まなければならなかった。 商店街は様々な種類の看板に彩られている。食料品店の看板、雑貨屋の看板、薬屋の看板、あるいは得体の知れない意味不明な看板もあった。
2017年1月13日 12:00
前回、第7話「魔導師協会」各話リスト 昼食の後、リンは再び協会の方に足を運んだ。 師匠であるユインに挨拶に行くためだ。 ユインの部屋は工場地区である10〜49階の上にある学院地区のそのまた上にあるエリアに位置しているそうだ。 見習い魔導師である今のリンには立ち入ることが許されない場所だ。 そのためリンがユインに会うためには、ユインの方からレインリルまで下りてきてもらう必要が
2017年1月12日 12:00
前回、第6話「見習い魔導師の街」各話リスト リンとテオは魔導師協会の受付が開くまでの間、街の主要施設を見て回った。 図書館、病院、銀行、鍛冶屋、雑貨屋、食料品店、各種商店、神殿、競技場などなど。 いずれもリンからすれば立派な建物に見えた。特に広大な敷地を利用して建設された競技場は息をのむ壮麗さだった。ドーム状の観客席から魔導師達が技を競い合うのを観戦するのは想像しただけでもワクワク
2017年1月11日 18:00
前回、第5話「ルームメイト」各話リスト 朝起きるとリンは柔らかい光に包まれていた。陽の光とは違うがろうそくやランプとも違う不思議な光だった。そのため起きてしばらくは自分が今どこにいるのかわからなかったが、部屋の内装を見渡しているうちに自分が昨日、塔の安宿に入寮したことを思い出した。 テオのベッドの方を見るとすでにもぬけの殻だった。リンは布団から出て背伸びをする。(今何時くらいだろう
2017年1月9日 18:00
前回、第3話「奇妙な面接」各話リスト リンは叫び声を上げて逃げそうになるのを必死にこらえた。以前猟師から猛獣に背を向ければ襲い掛かられるという話を聞いていたからだ。 リンはライオンを刺激しないようにゆっくりと後退りした。ライオンは緩慢な動きで起き上がりながら、リンを睨みつける。目は血走り、口元にはヨダレが垂れている。何日も餌を与えられていないのは明らかだった。グルルと唸り声を上げる。
2017年1月8日 18:00
前回、第2話「塔の迷宮」各話リスト エレベーターに乗って数十分。リンとユインを乗せた檻は99階に到達した。作動した時と同様ガクンと揺れて止まる。 そこは辺り一面真っ暗闇だった。 ユインがまた呪文を唱える。 すると燭台に火がつき、オレンジ色の光で照らされた通路が現れる。 通路のすぐ先には扉があった。「あそこが試験会場だ」 ユインが扉を指差す。「扉をくぐれば試験官が
2017年1月7日 18:00
前回、第1話「石像に祈る少女」各話リスト「もう行かなきゃ」 白いローブの少女は時計台を見てそう呟いた。「私、アトレアっていうの。あなたは…?」「……リン」「リンね。よろしく。次は塔で会えるといいわね。それじゃ」 そう言い残して、アトレアは雑踏の中に消えていく。 アトレアがいなくなると、入れ違うようにしてリンをこの街に連れて来た魔導師、ユインが彼を迎えに来た。「リ
2017年1月6日 18:00
魔導師の街、グィンガルドは今日も大勢の人で賑わっていた。 港へと伸びる大通りには様々な職業や身分の人々が行き交い、その広い道路を溢れんばかりに埋め尽くしている。 彼らは皆、魔導師達の作った珍しい品物を交易するために世界各国からグィンガルドに訪れているのだ。 かくも賑やかなグィンガルドの大通りだが途中の脇道にぽっかりと人のいない一画があった。いたるところが渋滞にまみれている大通りとその