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塔の魔導師 free

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「君には魔導師の才能がある。」 奴隷階級の少年リンは、旅の魔導師ユインからそう告げられる。 その日からリンの魔導師を目指す旅が始まった。リンはユインに連れられて魔導師の街グィンガ…
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2017年5月の記事一覧

第78話「三大国の編入生」

第78話「三大国の編入生」

前回、第77話「艦隊の季節」

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 入港管理局の職員達はラディアットの態度に圧倒されていた。

(これが軍事大国スピルナの上級貴族か。まだ少年だというのに既に軍人の気風が備わっているではないか)

「どうした? お前達は我々を案内してくれるのではないのか? それとも何か問題でも?」

 職員がハッとして我に帰る。

「もちろん案内しよう。問題など何もない。君達のことは聞き及んでいる。ク

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第77話「艦隊の季節」

第77話「艦隊の季節」

前回、第76話「ラドスの4人組」

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 リンは師匠のユインと月に一回の面会を行っていた。

 授業選択の相談と今後の進路について話し合うことが目的だ。

 まずユインが口を開いた。

「では早速面会を始めよう。まず聞きたいんだが、君はこの塔で何を目指しているんだい?」

「はい。師匠。僕は塔の頂上を目指しています」

「ほう。それはどうして?」

「えっと……立派な魔導師になるために…

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第76話「ラドスの4人組」

第76話「ラドスの4人組」

前回、第75話「移ろいゆくもの」

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 リンはユヴェンとテリムに連れ立って貴族達のお茶会に参加していた。

 入学式を終えた貴族の新入生達が祝福されている。

 彼らは会場のステージに立って一人一人白銀の留め金を受け取っている。

 こうして彼らは貴族としての自覚を持ち、自分が特別であることを理解して、互いに強固な仲間意識で結びつくのだ。

 リンは会場の美々しさに息を飲んだ。

 テ

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第75話「移ろいゆくもの」

第75話「移ろいゆくもの」

前回、第74話「200階の魔女」

各話リスト

 リンとテオが廊下を歩いていると向こうからユヴェンとテリムがやってきた。

 二人とも中等クラスの魔導師のアイテムを装備している。

 この二人も無事中等クラスに進級していた。

「やあ、リン。テオ。新学期もよろしくね」

 テリムが上品な仕草で挨拶をしてくる。

「あら、裏切り者とおべっか野郎じゃない。どうしたの? こんなところで」

 ユヴェン

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第74話「200階の魔女」

第74話「200階の魔女」

前回、第73話「少年と春風」

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 魔導師の塔の一角にもかかわらず太陽石の光が届かない薄暗い場所。

 ただろうそくの日による微かな明かりが揺れるのみで足元すら覚束ない。

 ここは塔内で罪を犯した魔導師達が収監される牢獄。

 堅固な岩石で囲まれ鉄柵で仕切られたそれぞれの部屋には手足に枷をはめられた囚人達が座り込んで俯いている。

 いくつもの牢屋が並べられ捕まった囚人達にできるのは

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第73話 少年と春風

第73話 少年と春風

前回、第72話「絶対零度の剣」

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「うっ、イテテ」

 リンはテオに助け起こしてもらいどうにか立ち上がる。

 魔力を失った反動で体の節々に痛みが走った。

「大丈夫か?」

 テオがリンを気遣うように言った。

「うん。なんとか大丈夫。君こそ大分痛めつけられてたんじゃないの」

「っ、そういえばさっきからあの女に踏みつけられた方の手が言うこと聞かねーや」

 テオは思い出したように

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第72話「絶対零度の剣」

第72話「絶対零度の剣」

前回、第71話「塔に正邪善悪の境目なし」

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 ロレアの杖がテオの頭に振り下ろされんとしたその時、斜め上から鉄球が飛んでくる。

 鉄球はロレアの杖を弾き飛ばし、ズンと鈍い音を立てて地面にめり込んだ。

「ぐっ」

 ロレアが杖を弾き飛ばされた衝撃に顔をしかめ、痺れる手を押さえる。

「うう。なんだ」

 テオが呻きながら鉄球の方を見ると鉄球は光の破片になって消えた。

(これは物質生

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