マガジンのカバー画像

ショートショートのような

11
あったらいいな、と思う小さな世界たちです
運営しているクリエイター

#夢

【夢の話】アンモナイトの化石

【夢の話】アンモナイトの化石

その夢の中で、私は十歳くらいの少女になっていた。重みを含んだ暗さと、靴の下のふかふかとしたカーペットが、本当にここを歩いているのか、と心許な気になるが、それはいつかの現実の世界で感じていた感覚だった。
建物のどこか奥の方にある機械が発しているような埃っぽさと、それを電気の力で浄化しようとしているような臭いがする。
そこは博物館のような場所だった。展示物の場所だけが、黄色く、明るく灯っていた。近づい

もっとみる
【ショートショート】HOME

【ショートショート】HOME

 その時私が乗り込んだ電車はずっと昔から走り続けていたようで、長年の煤に覆われていた。

 発車時刻を一時間過ぎても予定の電車は一向に来る気配がなかった。日本の端っこに取り残されたようにぽつりと存在する海町なのだから、そんなことは日常茶飯事だろうとも思ったけれど流石に遅い。休日であれば一部の物好きな観光客で賑わうその小さな町も、週のど真ん中の平日では、他の乗客の姿は一人も見当たらなかった。簡素なホ

もっとみる