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アパレル店員もなぜか秋は着るものがない

本格的に涼しくなり始めた最近。
ジェットコースターのような寒暖差に、腹が悲鳴をあげている。

まずい…と空調を止めると暑くなり、つけると寒くなる。もはや、風の子だった子ども時代は幻だったんじゃないかと疑うレベルで身体がついてこない。


それに「秋は着る服もなかなか決まらない」って会話を、昨日もしたばかりだ。

とくに私は、アパレル時代の仲間と出かけることも多いため、余計にこの話に発展しやすい。


お出かけだ!!と、はりきって服選びを始めるが、クローゼットをどれだけひっくり返してもコーデがなかなか決まらない。

ようやく服が決まったと思ったら、今度は小物で悩みだす。

カバンがしっくりこなくて散々鏡の前で合わせたあとは、靴下の色が決まらない。最終的に「緑がいいけど、私が合わせたい緑はこの緑じゃない!!」とかなんとか言いだして、当日買うか…?とか目論みはじめる。

このアイテムに合わせよう!とコーデを組み始めていたにも関わらず、散々こねくり回していたらもともと着る予定だったアイテムが全部いなくなってる…なんてこともザラだ。


洋服で散らかった部屋で一人、すっぴんパンイチで真剣にコーデを考えていると、ふと(いま誰かに見られたら恥ずかしさで蒸発するな…)と我にかえる。

そして、誰にも頼まれてないのに、コーデが決まる頃にはすっかり疲れ果てているのである。


あれ、秋関係なくなってない?


とはいえ、秋服が店頭に並ぶ季節、お客様から聞くことが多いセリフ同率一位は間違いなく「何着ていいか分からない」と「服がない」だ。異論は認める。

スタッフも全く同じである。
マジで何を着ていいか分からない。

それを言うと、「いやいや、これだけ店に服があるんだからいくらでも持ってるでしょ!!」と顧客様に必ずツッコまれるが、あら不思議。なぜか着るものがないんです。

半袖だと季節感が出ないし、長袖じゃちょっと暑い。トレーナーやニットが並び始めるけど、まだ実際に着る気にはなれないし。そうこうしているうちに、冬がやってくるし。

にも関わらず、一番心躍るアイテムが多いシーズン。秋というのはなんとも罪深い。


それにしても、毎年「着るものがない」って結構な量の服を買ってるはずなのに、一年経つとまた「着るものがない」って言うのはなぜなのか。

この現象に関しては、10年以上勤めていても解明できなかった。なので私は、秋服には立派な足が生えていると思うことにしている。足生えてるなら仕方ないもんね。


そういうわけで、この時季はいつまでも地縛霊のようにモール内を徘徊してしまう。出会えない、運命の子に出会えない…

今日も、店内の同じ棚のまわりを5周したあたりで、諦めるか…と泣く泣く店をあとにした。


せっかくいつもより遠くに足をのばしたのに、何も買わないのは癪だと目に入ったカフェの列に並ぶ。

持ち帰りでカフェオレを頼んでから、お財布の中には諭吉しかいないことに気付いた。トレイには“千円札が不足しています”の文字。気まずい。

「すみません…これで…」とおずおずとお札を出すと、「お預かりいたします!」と笑顔で返される。心が痛い、すまないお姉さん。


そして、少し間をおいて返されたトレイには、500円玉が1、2、3、4、5、6、7、8枚。

おお、こんなにたくさんの500円玉、はじめて受け取ったぞ。

「申し訳ありません、千円札を切らしておりまして…」


いえ、むしろ貴重な500円玉をすみません…キャッシュレスの流れに逆らいまくってすみません…と、ただただ心の中で懺悔する。


「財布…パンッパンだな…」

お洒落な秋服をゲットするはずが、パチンコ好きなウチの親父みたいな財布を持って帰宅したのだった。


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