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なぜカンボジアでVTSを始めたのか?2

どうやって概念を伝えられるか

そもそも絵を習いに来る子たちの目的はなにか?

「上手い絵」を描けるようになりたいからである。

では「上手い絵」ってなんだろう。
それは人によって違うが絵を習う動機としては、写実的なかっこいい絵を描きたい、というのがほとんどだろう。
もちろん、カンボジアの生徒たちも大体そういう理由だ。「写真みたいな」絵を描けたらカッコいいと。

それはいい。

しかし、かっこいい写真をみて写すのならともかく、自分で描くときは自分が思う「カッコいい」ビジョンが必要になる。
大げさに言い換えれば「自分なりの美学」だ。

作品のテーマはこの「美学」によって決まり、構図やその他諸々は「テーマ」に沿って決められるため、まずは「美学」の習得が鍵となる。
それは、机上で教えられるものでは決してなく、今まで観た作品の数や質によって決まる。

なので、できる限りの名画などを見せたいと思って、日本で美術の本をしこたま買ったのが、やはりというか、興味のある本しかなかなか見てくれなかった。
わかりやすいレンブラントやミュシャなんかは、本が壊れるほど読まれているけど、クラーナハなどは未だに新品同様だ。

それでも少しづつでも、見続けて入れば絵の持ついろいろな意味や概念が養われるだろうと長い目で見ていた。

短期間で習得するには?

習う期間が決まっていない、Yamada Schools of Art はそれでいいとしても、タームで区切られた授業をしている専門学校では、そんな悠長なことはしていられない。
STEP IT Academyというロシア系のITの専門学校のグラフィックデザインコースでは、週一の半年間、絵画の授業がある。

そこにはグラフィックデザイナーになりたい生徒たちが通ってくるので、今まで以上に絵画への興味と知識がない子たちが対象になる。
デザイナーにはすごい絵を描けるスキルは必要ないが、観察力はさらに重要になる。

良いデザインを見たときに、なぜそのデザインはいいのか?デザイナーの意図は?などを知るには、観察力が必須の能力になる。
それができなければ、優れたデザインから学ぶことができないため、デザイナーとしての成長の阻害要因になってしまう。

そこでいろいろ試行錯誤をしていたのだが、なかなか難しい。
絵画を見せることを選んだのは、デザインよりもアーティストの意図が把握しやすいからだ。
(優れたデザインは言わない部分も多いために、背後にある文脈を読み取る力も必要だからだ)

しかし、ただ見せるだけでは暖簾に腕押し、ほとんど効果がなかった。
単に「このアーティストはどんな意図を持って描いたのか?」と聞いても、他人の考えなんか興味ない、とばかりに「I have no idea.」しか帰ってこない。
意見を言ってもらうにはどうしたら良いか悩んでいた。

そんなときに、ネットでVTSというものを知って、書籍も購入したところ、これこそが今、自分のやりたいこと教えたいことにぴったりマッチしていた。

(まだ続く)

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