見出し画像

なぜカンボジアでVTSを始めたのか?1

そもそもなんでカンボジアに来たのか?

もともと自分は、日本でフリーランスでウェブデザイナーとして仕事をしていたのだが、2011年頃、日本が東日本大震災によって暗くなっていた時期は自分も仕事に面白みを感じることがなくなっていた。
そんな時にひょんなことから、仕事をいただいていたデザイナーの方から、ある会社がカンボジアでグラフィックデザインの会社を立ち上げたいので、デザインを教える人材を探しているという話をもらった。

自分にとってカンボジアは2013年に一度、旅行をしたことがあって興味のある国の一つだった。
そこで、二つ返事とは行かないまでも、一度日本を出てみるのもいいかもしれないと思い立ったのだ。

そして何度かの下見を経て、2011年9月にカンボジアに移住したのだった。

カンボジアに来て

当初の目的は先にも述べた通り、グラフィックデザインを教えるということだったが、全くの0からのスタートだった。
教室をつくり、生徒を集めることから始めなくてはならなかった。

同会社の別事業の事務所を、業務時間外に教室として使うことにし、PCの購入などから始めた。
当時、カンボジアで売っているほとんどPCは、型の古い中古しか入っておらず、それでも値段は結構高かった。1台$400〜600くらい。
日本でなら6万円だせば、ASUSの新品が買えたのに、こちらではASUSの中古だけしか買えない。
しかし、何台も持ってくるのは関税などの関係で難しかったので、当地で買うしかなく選定などに時間がかかった覚えがある。

そして、生徒集めには新聞広告なども出した。
しかし、そんな簡単には生徒は集まらず、結局、開講が迫る中、カンボジア人スタッフが、知り合いに声をかけてようやく5人集まった。

残念ながら、様々な理由によりこの試みは失敗し、三ヶ月でこの教室は閉めることになり、自分も会社との契約を終えた。

もちろん、学んだことも大きかった。
グラフィックデザインを教えてて思ったのは、とにかくあらゆる基礎がないということ。

当時のカンボジアの公教育は、小学校から大学まで美術の時間が全く無いので、全員クレヨンや色鉛筆さえ使ったことがない状態だった。
そういう生徒たちに、PhotoShopを教えようとしても、かなり難しい。
なぜなら、グラフィックソフトというのは現実のシミュレーターであるので、美術の基礎がないと理解が難しいのだ。

かといって、教室でそのようなことまで教えていては何年かかるかわからないので、まずは美術の普及から始めるべきだというのを痛切に感じていた。

Yamada School of ARTで教え始めた

そんな時に、たまたまプノンペンで知り合ったのが、王立芸術大学(RUFA)で客員教授をしていた山田先生だった。
先生は、カンボジアで初めての美術の公募展をしようと、支援者を集めているところだったのだ。

自分も心ばかりの金額を支援させていただいたが、話をしているうちに、先生も美術学校を作りたいと考えていたので、意気投合し Yamada School of ART を設立することになる。

画像1

(写真は開校当初のYamada School of ART)

そこでも生徒集めには非常に苦労したが、最初はRUFAの山田先生の教え子たち(絵画専攻)に教えることになった。

かれらはとても優秀な生徒たちであったが、RUFAでは上手な絵に見えるテクニックを教えることに偏重していたため、基礎の部分(色の知識や空間の知識)では、日本の中学生レベルでしかなかった。

RUFAの生徒以外の子達は、前述した通り、生まれてこのかたまともに絵を描いた子はいなかった。

そこでパースやら色相やらを、描くことを通して教えることになるのだが、これもかなり難しかった。

なぜなら日本などでは、学校以外で絵を習ったことがなくても、漫画やアニメなどを通して一通り学んでいるのだ。文化がある国の強みである。
そのため、少し話をするとすぐに理解ができるのだが、カンボジアの生徒たちはその知識すらないので、例えが通用せず苦労した。

極端な例を出すと、遠近法の説明をする時に「街で近くにあるビルは大きく見えるけど、遠くのビルは小さく見える」というのは、日本人ならだれでも理解できるだろう。
しかし、ベースとなる知識がない人には、この例が理解できないのだ。

そんなバカな、と思う人がいるかもしれないけど、日本にも西洋から遠近法の概念が入ってくるまでは、そういう考え方は無かったのだ。
なぜなら、遠近法は人間の自然な理解ではなく、発明されたものなのだからである。私たちはそういう概念がある環境で生まれ育ったために自然に理解できるが、そういう環境になかった人にはない概念なのだ。

そのため技法を教えるよりも、まずは概念をどう伝えるかというのが、大きな壁になった。

(多分続く)

いいなと思ったら応援しよう!