アニメ平家物語を解説する 1話
今日から古典語りでは、アニメ「平家物語」を解説していこうと思います。
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こちらのアニメ、ネットニュースなどでも話題になっており、かなり評判が良いようですね。実際、私も推しが大活躍しているので毎週五体投地する勢いで見ております。
具体的には、アニメで描かれている内容について、古典の『平家物語』や史実に触れながら、私が解説できる範囲で掘り下げていきます。
歴史・古典モノにネタバレの概念があるのかはわかりませんが、『平家物語』全体を通して話をしていくことになると思うので、気になる方はアニメ視聴後に見ていただければと思います。一応、現在アマプラでも地上波でも5話まで配信されていると思うので、およそ1ヶ月遅れでやっていくことになるかな?
最初に言っておきますと、私は重盛の長男維盛(これもり)が最推しであり、重盛パパとその子たちの一家=小松家のことも大好きです。ので、解説がそちらに偏りがちになるかと思いますがよろしくお願いいたします。
と言うわけで、早速本編に入っていきましょう。
まず、第一話は光の中にいる一頭のアゲハ蝶からスタートします。アゲハ蝶といえば、平家の象徴ですね。白い椿のようなものは、沙羅双樹の花ですね。
それから「禿」の描写。ハゲに見えるけど、「かむろ」と読ます。禿は『平家物語』で言うと、巻1の4番目の章ですね。禿からスタートするのは意外でした。
このアニメのオリジナル主人公になる「琵琶」ちゃんと、その「おとう」が禿の狼藉を目撃します。おとうが禿について「平家を悪く言うものをひっとらえる」存在だと解説してくれる。
琵琶ちゃんが禿の被害者を助けに行こうとして止められます。琵琶ちゃんが「あんなひどい」って言っただけで、その責任をとって保護者のお父が殺されてしまった……。悲しい。
そこから、平曲風の語りで「祇園精舎」がうたわれます。この琵琶奏者、おそらく琵琶ちゃんの成長後の姿かなーとおもっているんですが、どうでしょうね。
ここでOP。このOPがまた良いんですよね。
羊文学さんの「光るとき」という歌です。
琵琶ちゃんと平家の人たちが出てくるんですが(把握してないけど源氏もいるかもしれない)、戦の描写と平和な描写が両方あります。平家の人たちには滅亡の運命が待っているけれども、確かにそこにいた、というアルバムを見ているような気持ちになります。切ないです。
本編が始まると早速清盛の大宴会。踊っている白拍子は2話でわかりますが、祇王ですね。
時忠が登場して清盛にご挨拶します。弟時忠が来るのが遅いと責める時子に唐突に甘える清盛。それを見て笑う幼い資盛(※すけもり、重盛の次男)と、照れる維盛、照れつつ困る重盛と、呆れる徳子。
維盛と重盛の反応に共通点があるところも親子っぽくて良いですね。
清盛とその子供たちにお世辞を言いまくる時忠。ここから一人ずつ紹介していくところは、ちょうど巻1の五番目、禿の次にある「吾身栄花」に対応しています。最後にはかの有名な「平家にあらずんば人にあらず」のセリフも出てきます。
名前を呼ばれなかった重衡(しげひら)もツルッとしていてかわいいです。ちなみに実際のところは、維盛と重衡は一歳しか歳の差はないのですが、関係上はおじと甥の関係なのでわかりやすくしているのでしょう。
清盛から重盛に「お前は真面目なところがいいけど面白くないな!」とダメ出し。ちょっとショックを受けてる感じの重盛が可愛いですね。この重盛は父に堂々と対峙しているという感じではなく少し気弱な感じで、真面目なことにコンプレックスもあるのかな。空気的にも維盛と似てる感じが出ている。
重盛に厳島神社の説明をしがてら、これまでの平家の歴史の復習。海のおかげで発展したということで、福原に移るよーと予告。「何もないところに!」と言う重盛に「海があるよ」とさらっと言う清盛。海大好きだな。
棟梁(※頭領ではない)を重盛に譲る宣言。
ここで回想という形で忠盛のエピソードを紹介。巻1の二番目の章「殿上闇討」に対応しています。セリフ一切ありませんが、不敵に笑う忠盛めちゃイケメンですね。『平家物語』によると「伊勢平氏はスガメ(斜視)なりけり」と言っていじめられていたようですが、どうもとてもモテてたらしいので実はただの嫉妬で、イケメンだった説もあるのでは……? すみません、妄想です。
面白くないと言われたことに地味にショックを受ける重盛。ここで特殊能力が明らかになります。どうも重盛には不思議な目があって、死んだ人が見えるらしい。もちろんオリジナル設定ですが、今後の重盛の懊悩が深まってめちゃめちゃいいと思います。
ここで琵琶の音と共に琵琶ちゃん登場。しばらくオリジナルシーンが続きます。
「お前たちはじき滅びる」と宣戦布告のようなことを言う琵琶ちゃん。でも出会ったのが重盛でよかったね。特殊能力持ちという共通点があるのもあってか、親しく語りかけてくれる重盛。そして特殊能力で、琵琶ちゃんの父が平家に殺されていることを知り、膝を折って謝る。
その後屋敷で琵琶ちゃんを引き取ることにした重盛。捨て猫を拾ってくるような感覚……?
琵琶ちゃんのお風呂のシーン、ちゃんと平安時代のサウナ風お風呂の描写になってて良いですね。
琵琶ちゃんが女の子と知って、女御(女房)にしようとするけど、琵琶ちゃんの意見を尊重してそのまま受け入れてあげる重盛。暮らすのに困らないように、礼儀作法の教育の指示も。この辺りの配慮重盛っぽいですね。名を聞かれて初めて、琵琶ちゃんが名乗ります。おとうが名前を読んでくれなかったから、自分で名前をつけたって言ってましたが、何か生まれに事情があったりするんでしょうか。
翌朝、自分の子供たちを紹介する重盛。
地味にびっくりしたのが、維盛・資盛・清経まではいいとして、ちゃんと四番目に有盛がいるところ!!!
有盛が出てくるのってめっちゃレアなんですよ。大抵の『平家物語』もしくは歴史ドラマ系で平家をあつかう作品で出てくるのは維盛と資盛くらいで、清経がいたら良い方なんですけど、四番目の有盛まで入れてくれるとは……。
重盛の子供たち、もとい維盛の兄弟は実は人数が多いです。『平家物語』に出てくるだけでも、維盛・資盛・清経・有盛・師盛(もろもり)・忠房・宗実(この子だけ養子)と七人います。
その中でも有盛という人の登場場面は格段に少なくて、大体資盛とセットで出てきます。単品でのセリフ・活躍シーンは無いはず。それどころか、貴族日記にもほとんど登場しません。五番目の師盛は貴族日記には楽器演奏でちょこちょこ出てくるし、『平家物語』では一の谷でまるっと一章もらってるんですけどね……。
とにかくそんな感じなので、まさか有盛の幼少期をアニメで拝めるとは思わなかった。おとなしそうなかわいい子……女の子かと思った。
まず「何者ですか」と無遠慮に口を開く資盛がお調子者感出てて良いですねー! 琵琶ちゃんが「琵琶法師の子だ」というと「下賤の者か」って言っちゃうあたりも、ちょっとわかる……。資盛は兄弟の中では一番軽率と言っても過言では無いと思う。
怒った琵琶ちゃんが大暴れするのを抱えて止める重盛。なんだかんだ力が強そうなのが武士っぽくて非常に良いです。
そこへ、ちゃんと手をついて礼儀正しく「よろしくお願いします」と挨拶をする維盛。そんなお兄ちゃんをじーっと見ている弟三人がまたかわいいです。
頭を下げられてちょっと落ち着く琵琶ちゃん。清経と有盛が真似して頭を下げてるのがまたかわいい……。資盛はハナホジからのアッカンベーで、琵琶ちゃんと犬猿の仲って感じ。その態度を怒らない重盛は、『平家物語』よりは史実の重盛のイメージかな。これはまた後ほど。
それから日常シーンで、維盛が弓の作り方(?)を琵琶ちゃんに指南している様子と、それをからかう資盛。こんなに大人しそうなのに、やってることが武士の子!!!って感じで良いですね。維盛は敗戦の将のイメージが強いので、普段から武具に触ってないイメージを持っている方もいるかと思うのですが、実は鹿狩りとかもしてるし、小さい戦には出て勝ってることもあるので、ちゃんと武士らしいこともやってるんですよ。その片鱗を見せていただいてる感じですごく嬉しいですね。
縁側で琵琶ちゃんと並んで、桜餅をあげる維盛。一緒に食べる二人がかわいい。そんな様子を見てにっこりする重盛パパ。穏やかで平和な時間です。桜吹雪の描写も美しいですね。次には蛍の飛ぶ月明かりの下で琵琶を弾く琵琶ちゃんと、それを優しい表情で聞く重盛。さりげなく季節が移っていますね。『枕草子』にもある通り、蛍は夏の象徴ですからね。
さーて、ここで『平家物語』に戻りますよ。
鷹狩にいく準備をする資盛。これが巻1の11番目の章「殿下乗合」に対応しています。
アニメでは徳子が遊びにきました。琵琶ちゃんを見て一目で女の子だと見破る徳子。この時はまだ入内前のようですね。
資盛がボコられて帰ってきました。摂政殿の車と行き合った時に下馬の礼をとらなかったので、当時の摂政松殿基房は激おこ。『平家物語』には「清盛の孫とも知らず、または少しは知っていたけれども知らないふりをして資盛や一緒にいた侍をみんな馬から引き下ろしてボコった」という旨の話が書いてあります。流石に確信犯でしょうね。
この基房のお兄ちゃん基実には清盛の娘盛子が嫁いでいます。基実はイケメンで優しく穏やかな性格だったそうなのですが、残念なことに早世してしまっています……。貴重なイケメンで性格の良い藤原氏が……。
重盛、子供にやる仕打ちとしては酷すぎるなあ、と言いながら、資盛を叱ります。「いい気味!」って感じに笑う琵琶ちゃん。ことの重大さ的にはまあまあやばい事案なんですけど、子供にはわかんないよね……。
摂政に親である自分からもお詫びを、と言いかける重盛を止める清盛。まあ、端的に言えば「やられたらやり返す、倍返しだ」ってやつですね。清盛は馬から引き摺り下ろしただけではなく、もとどり……つまりチョンマゲを切ってしまうのです。
当時は烏帽子の中の髪を見られるのは、下着をおろされるのと同じくらいの恥辱。その上さらに髪を切られちゃったら、もうほんと言葉には言い表せないくらいひっどいことです。それを私情でやっちゃうんだから、清盛ってほんとひっどいジジイだな、という流れになるわけです。
大爆笑する清盛とそれを諌める重盛。「面白かろう?」とのたまう清盛。清盛の口癖が「面白かろう?」であることがよくわかる第1話でしたね……。
そんな清盛の所業に激おこな後白河法皇!! と言うところで一話が終わります。
『平家物語』でも、アニメでも重盛は資盛を怒り、清盛の所業に嘆き、頭を悩ませるというように描かれています。しかし実は、この復讐の首謀者は重盛だったらしいのです。『玉葉』など貴族が書いた記録ではこの事件を起こしたのは重盛だとはっきり書いてあるのでした。
重盛がここまで激おこになるのは珍しく、百人一首の歌人の一人でもある慈円は『愚管抄』で「心の美しい重盛どのにしてはおかしなことをしたもんだなあ」とコメントしています。みんなびっくりしたんでしょうな。
これは私の個人的な見解ですが、重盛は結構子煩悩というか自分の子大好きなとこがあるのでよっぽど怒ったんじゃないかなと思います。維盛のこともちょいちょい褒めてたり、維盛見て立派だ……って泣いたりしてる。まあ、主には「平家をコケにされた」というプライドや名誉のための行動だとは思いますが。その代わり、史実でもちゃんと後で資盛にも罰は与えてますよ。
以下、おまけとして「今日の維盛」のコーナーです。
本編紹介中もテンション高めで紹介していますが、中でも細かい部分は別立てにしてお送りしようと思います。推しへの愛が止まらない。
・大宴会のシーン
個人的には、維盛が照れてるのも可愛いけど、資盛よりもさらに幼い弟のお世話しているのが見どころでした。ご飯食べさせてあげてる!!
まだ烏帽子をかぶってないので元服前という設定のようですが、維盛も少将ということになってましたね。実際は「維盛」と言う名前をもらっていることからも少将になった際には元服はしているはずです。維盛の幼名は「五代」です。ただ、もしかするとこのアニメの設定では幼名を使わないのかもしれない。
・琵琶ちゃんとの初対面シーン
資盛の無礼な態度に琵琶ちゃんが大暴れしている中きっちり頭を下げる姿が、とってもお兄ちゃんしている。最高。高めに結った長い髪が、頭を下げた時にハラリとこぼれるのがびっくりするくらい美しいですね…………。
続く日常の場面での桜餅のシーンは維盛の食べ方がお上品。姫みたい。
維盛は「桜梅のように美しい」という理由で「桜梅少将」というあだ名がついていたのですが、桜が似合う感じがすごい出てて、非常にテンションが上がりました。
と、いうことで今回はこんな感じでしばらくは平家アニメレポートをしていきたいと思います。
平家は登場人物が多いので、また人物紹介もできるといいな。