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武士道は死狂ひなり 〜残酷無惨時代劇「シグルイ」の味わい方〜
みなさん、山口貴由の『シグルイ』はご存知でしょうか? 30代以上の男性なら読んだことのある方も多いかもしれませんね。
シグルイは2003年から2010年までチャンピオンREDで連載されていた時代劇マンガです。原作は南條範夫の『駿河城御前試合』ですが、山口氏によるアレンジが多量に施されています。
なぜ新しいわけでも、今話題になっているわけでもない本作についてnoteを書いたかと言いますと。軽い気持ちでKindle Unlimitedにあるシグルイ1巻を読んだらドハマリしてしまい、その日のうちに全巻(15巻)買って読破してしまったからです。
私はわりとマンガを読むのが好きで、けっこうな量読んでいるのですが、久しぶりに魂を揺さぶるマンガに出会ったと思いました。
シグルイのストーリー
ストーリーは江戸時代初期、駿府城にて御前試合が行われるシーンから始まります。相対するのは主人公の隻腕の剣士・藤木源之介と、源之介とかつて同じ道場で剣術を学び、2人の師匠である岩本虎眼を討った盲目の剣士・伊良子清玄。
実は1巻でこの御前試合が描かれるのは試合開始直後までで、次に出るのは14巻です。長ない??? その間、源之介と清玄の道場時代や、2人がどのような因縁を持つのかなどの過去が描かれます。
シグルイのここがすごい!
キャッチコピー通りの残酷さ・無残さ
シグルイのキャッチコピーは『残酷無惨時代劇』。すごいですね。強い言葉が並びすぎて中学生が考えたのでは? と疑ってしまいそうですが、安心してください。マジで残酷で無残な時代劇です。そのコピーに偽りはありません。
拳で顔面を砕くわ、子どもの指は吹っ飛ばすわ、腹を切って臓物を撒き散らすわでとにかくグロいです。この人(作者)臓物描くの好きなんかな? と思うほどに美学を感じます。
グロだけではなく、ストーリーも江戸時代の階級社会の残酷さをありありと感じさせる救いのない展開なので、ダブルでダメージを受けるんですよね。とにかく陰鬱です。心身ともに健康なときに読むのをおすすめします。
あとイメージ?として男女問わず裸体が出まくります。この人(作者)裸体描くの好きなんかな? と思うレベルで出てきます。
戦闘シーンがかっこいい
いやほんともう、とにかく戦闘シーンがかっこいいんですよね。シグルイはけっこうナレーションが多いんですが、それがかっこよさを増幅させているというか……
1巻の御前試合から過去に切り替わる最後のシーン。
隻腕の剣士の刃は 骨を断つことが出来るのか?
盲目の剣士の刃は 対手に触れることが出来るのか?
出来る 出来るのだ
かっけぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!
文章だけだと伝わりづらいんですが、ナレーションなのにトゲトゲのフキダシがついてるんですよね。勢いがすごい。
山口氏の作品は独特の作風ゆえにギャグとして扱われることもありますが、私個人としては完全にかっこいいにカテゴライズしてます。濃くてアツい戦闘シーンは大好物です。
マンガって基本、見せたいコマとそうでないコマで力の入れ方を変えるのが常識っぽくなってますよね。でもシグルイは全部が見せゴマかってぐらい濃い。例えるならグツグツ煮詰まったお汁粉みたいな…… でもそのお汁粉の中に秘密のミラクル調味料が入ってて食べる手が止まらないみたいな…… そんな感じです(?)
もっとシグルイを味わいたい!
1巻を手にとってからその日のうちに全巻読み終わってしまったものの、「ああ…… 物足りない…… まだまだシグルイを楽しみたい……!!」と完全に中毒になっていました……
オタク的には二次創作を探すのが常道なんでしょうが、原作が好きすぎて二次創作を見る気になれず……
そこで絵描きとして考え出したのが
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まぁ顔とか自分の絵にしちゃってるし、全然正確に描けてはいないので正しい模写ではないんですが。原作をより深く味わうための模写なのでOKです(?)
描いてる最中、やっぱり漫画家ってめちゃくちゃ絵が上手いな〜とか(あたりまえ体操)、着物や袴の描き込みがリアルすぎるとか(実物見ながら描いたんかな…… じゃなきゃこんなに細かく描けない…… 着物と袴を…… 用意して……?)、輪郭がブレてる表現を描くのってめちゃくちゃめんどくさいんだな〜とか、着物と襦袢が重なってるところがややこしすぎて「私は絶対時代物は描かない」と心に決めたりとか、いろいろ発見したり考えたりして楽しかったです。山口先生も描いてる途中に「着物描くのめんどくせぇ〜」と思ったのかなとか考えたり(たぶん考えてない)。
そしてずっとかっこいい絵を見ているので、「刀の握りかっけぇ〜!!!!」「顔のライティングかっけぇ〜!!!!」「左もみあげのおくれ毛だけ前に流れてるのかっけぇ〜!!!!」「私の描いた絵もかっけぇ〜!!!!(※自分の絵大好きマン)」とかっけぇの波状攻撃を受け続けられて最高でした。
私は絵を描くタイプのオタクですが、ふだん絵を描かない人も、好きなマンガの模写をしてみると意外と楽しめるかもしれません。
シグルイはいいぞ
この記事でシグルイの魅力を伝えられた気は全然しないのですが、とにかく戦闘シーンがかっこいいので読んでください。あとよければ好きなシーンを模写してみてください。