「若年層のメール離れ」要因と対策を考えてみる
こんにちは、チーターデジタルでコンサルタントをしている小木です。
ブランドのメール担当者の皆さんから、よくこんな悩みを伺います。
「若い世代にメールを送ってもクリックしてもらえない…」
「20代の顧客にキャンペーンメールを送ったけど、反応がイマイチ…」
ため息が聞こえてきそうです。マーケターの皆さんは数字と格闘する日々、心が折れそうになることもあるでしょう。
今日はそんなマーケターの皆さんのお悩みに寄り添いたく、「若年層向けのメールの成果を改善するには?」をテーマに、特に20代・30代の若者に向けたメールマーケティングのヒントをお届けしたいと思います。
若年層のメールクリックは実際かなり低い…それでもメールが必要な理由
さっそくですが、若年層ってどのくらいメールに反応してくれないんでしょうか?
厳しい現実を言うと… メールの反応率はかなり低いです。弊社の調査では『若年層のメールクリック率は中高年の10分の1以下』なんていう事例もあり、この傾向は20代以下でかなり顕著です。
ちなみに、メール以外の配信チャネルとしてはアプリPush通知やLINEメッセージがありますが、こちらは反応率が高いケースも多いです。「じゃあ、メールから全部そっちに移行すればいいじゃない!」って思いますよね。
が、そう簡単にはいきません。アプリやLINEは、店頭で会員証代わりに使えるなど、それなりに強力な機能や魅力がない限り登録してもらえないので、戦略的にCX(顧客体験)設計を行い登録者を増やしていく必要があるのです。
さらに言うと、アプリやLINEは比較的ロイヤルティが高めの層とつながりやすい一方で、会員登録したばかりの層や、定着していない層(=育成が必要な層)とはつながりにくい傾向にあります。
そうなると、会員登録の時に取得する「メール」が、おのずと最大のアプローチターゲットとなってくるわけです。
メールは一般的に、会員登録直後からアプローチ可能なのでターゲットが広く、配信コストも相対的に安い。さらに1通のメールにたくさんの情報を載せられるメリットがあるので、これを最大限活用しないと!となります。
最近では、アプリやLINEの台頭によってメール経由の売上比率は縮小傾向にある企業が多いですが、それでも、デジタル売上全体においてはまだ、少なからぬインパクトを持っているのではないでしょうか。「メールは効果がないので辞めちゃいました!」なんていうブランドはまだかなり少数派ですから。
若年層はなぜメールをクリックしないのか?
いわゆる若年層のメール離れには複合的な要因がありそうです。実際のアンケート調査結果ではありませんが、私が活用している検索型の生成AI ”Perplexity”と高性能AI "Claude 3.5 sonnet"に協力してもらい、考えられる理由を抽出してみました。
使い慣れたプラットフォームへの偏重
LINEやInstagramなど、リアルタイム性の高いプラットフォームを日常的に使用
視覚的でインパクトのあるプラットフォームを好む
SNSでは仲間との交流のほか、ブランド情報も収集している(Instagram, TikTok, LINE等)
自分用のアルゴリズムで流れてくる情報を閲覧したり反応したり、に多くの時間を割いている
メールに対する意識や優先順位
メールは仕事や公式な連絡のためのツールというイメージ
セキュリティ意識からスパムやフィッシングメールを警戒している
プライバシー意識からクリックなどの追跡を嫌う
興味のない広告メールを嫌悪しがち
メールアドレスの使い分け(サービス登録用と個人用など)で企業メールは基本放置
メールのコンテンツは他のチャネルでも確認できるためスルー
情報量の多いメールは短時間で読めないので敬遠
パーソナライズへの期待
自分に合った情報しか要らない
アルゴリズムによるレコメンデーションに慣れている
こうして挙げてみると、メールはかなり分が悪いように見えてしまいます。でも、あきらめないでください。次に、対策を考えていきましょう。
メールへの注目度を上げる打ち手は?
LINEやInstagramに負けない魅力的なメールとは?
メール離れの要因を踏まえて、対策として考えられることを以下に挙げてみます。
メールを受信する明確なメリットを打ち出す
メールの配信許諾を取る時は、メールを受信することによる明確なメリットをはっきりと打ち出してください。これといって思い当たらないのであれば… この機会に一度「メールの価値」を整理してみるのはどうでしょう?
例:時々メルマガ会員限定クーポンがもらえる
メール読者限定の先行販売イベントがある
商品の再入荷や値下げのアラートを受け取れる
パーソナライゼーション
若い世代は、自分に合った情報を求めているので、顧客に合わせたメール=パーソナライズドメールが効果的です。
弊社の調査では、パーソナライズによってクリックが2倍、3倍…のように大幅に改善した例が多く存在します。
パーソナライズというと、システム導入やらデータ連携やら壁が大きく見えるかもしれません。でも、ここで大切なのは、一気に完璧な1to1を目指さないことです。まずは一部のセグメント向けのコンテンツを少し変えるなど、できるところから始めて、効果を見ながら徐々に高度化していく。そんなやり方をおすすめします。
例:入会チャネルによるウェルカムメール出し分け(店舗/ECなど)
購買履歴に基づくレコメンド
好きなカテゴリの新着情報を配信
ライフステージに合わせた商品提案
プログラムランクに応じたオファー
視覚的なデザイン
瞬時に情報をキャッチしたい若年層には、大胆なビジュアル戦略が効果的だと思われます。
例えば、アパレルブランド『ZARA』のメールでは、商品画像だけが並んだまるで美しいショーケースのようなメールがあります。
他にも、商品名や価格を表示しない、説明テキストも最小限、ビジュアルは大きく、アニメーションGIFや動画も使って、退屈しやすい若者の目をとらえるといった工夫は、特にアパレルや家具・インテリアの業界によく見られます。若者のもっと「見たい」「知りたい」欲求を巧みに刺激しているように感じます。
SNSなどと同様に、メールにおいても「見て楽しい」「すぐ分かる」が重要なキーワードではないでしょうか。若年層に合わせたコンテンツ
コンテンツの中身も若年層の興味や嗜好に合わせたいものです。
従来のメルマガコンテンツは、大部分がWebサイトからのピックアップでした。しかし今日ではWebサイト以外にも、YouTubeやInstagramなど様々な企業情報発信メディアが存在し、ユーザーが生み出すUGC(User Generated Content)もあります。それらも含めて、若者が本当に知りたい、見て楽しい、誰かと共有したくなるコンテンツとは何か、ぜひ考えてみてください。
例:TikTokやInstagramReelsなどのショート動画を活用
アスリートやタレントなど、インフルエンサーとのコラボ
インスタLIVEやタイムセールなどのリアルタイム情報
SNSでシェアしたくなるゲームやクイズなどの参加型企画
メールの技術的な仕様
さらに… セキュリティに敏感かつデバイスも自分仕様にカスタマイズしちゃってる、そんな若年層へのメールで特におすすめしたい技術仕様が2つあります。ダークモード対応
若い人たちの間ではスマホの「ダークモード」が良く使われます。
簡単にいうと… スマホ画面の背景色を強制的に暗くして、逆に文字色を明るくする表示モード切替のこと。目に優しいし、スマホのバッテリーも長持ちします。
なんと、20代の8割以上が「ダークモードでメルマガを読むことがある」と回答しているとのデータもあります(株式会社ベンチマークジャパン調べ)。
メールのダークモード対応をしておかないと、メーラーによっては表示がガタガタになったり、読むことすらできなかったりするので、もはや必須の対応と言えます。
具体的な対応としては、背景色が切り替わってもきれいに見えるよう、画像の透過やマージンを調整する、黒いロゴが背景に溶け込まないよう白縁をつける、などです。
ダークモード対応することで、時代によりマッチした印象を与えられますよ!BIMI対応(Brand Indicators for Message Identification)
皆さんはBIMI(ビミ)をご存知ですか?
BIMIとは、簡単に言うとメールの差出人欄に会社のロゴを表示する仕組みのことです。Gmailなどで、メールBOXの差出人部分に企業のロゴが表示されているのを見たことがあるかもしれませんが、あれです。
BIMIに対応しておくと以下のようなメリットがあります。
・ 「あの会社からのメールだ!」と一目で伝わる
・詐欺メールではないことを証明でき、安心してクリックしてもらえる
BIMI導入にはいくつかの技術的ステップが必要ですが、セキュリティ意識の高い若者に安心してメールを開いてもらうためにも、思い切って対応を検討してみてはいかがでしょう?
>詳しい設定方法はこちら: Google:BIMI を使用してメールにブランドロゴを追加する(Googleサイトへ)
>BIMI対応について:弊社ウェビナーのアーカイブを視聴はこちら:ウェビナーレポート下部よりお申し込みください(弊社サイトへ)
以上、考えられる対策を挙げてみましたがいかがでしたでしょうか?
明確なメリット、ビジュアル表現、パーソナライズ、コンテンツ、そしてセキュリティ。これらをうまく組み合わせれば、若者の受信BOXに再び注目を集められるかもしれません。
若年層を理解することは、全世代のマーケティングにつながる
さて、若年層の特性やメールにおける対策を考察してきましたが、その過程で重要な気づきがありました。
「それって中高年にも結構あてはまる」ということです。
自分仕様の情報を欲しがったり、ビジュアルに惹かれたり、SNS投稿を見るのが好きだったり。
これらを若年層の特性として挙げたものの、実はアラフィフの私にも、だいたい当てはまりました。(職業柄ってのも多少ありますが…)
若者の特徴って、実は若者だけのものではなくどんどん他の世代にも広がっています。例えば、スマホの使い方とか、SNSの楽しみ方とか。
今は「若者っぽい」と思われていることも、きっとこれからはみんなのものになっていくでしょう。ただ、新しいものを取り入れるスピードが世代によって違うから、今はまだ「若者の特徴」みたいに見えているだけなんじゃないか、とも思います。
・新しいものへの慣れ方が世代で違う
・その差が「若者らしさ」を生み出している
・でも、その差はだんだん小さくなっていく
つまり、「若者向け」と思っていたことが、いずれは「みんな向け」になっていくのです。
だから、若年層向けのメールマーケティングを一生懸命考えることは、何も若者のためだけじゃありません。
若年層をよく観察して、若者向けのマーケティングを考えることは、結果的に全世代に通用する次のマーケティング手法を生み出すことに、大きく役立つのではないでしょうか!
最後に…
メールマーケティングは険しい道のりの途上にあるかもしれませんが、大切なことは、いつも同じです。メールそのものの魅力を増強して、反応を見ながら、継続的に改善を行っていくこと。
トライ&エラーを恐れず、継続的に、最適な方法を見つけていきましょう!
Author
小木 奈々美 (Nanami Ogi)
Manager, CX Consulting Service - CHEETAH DIGITAL
WebサイトとMAマーケティングを中心に、デジマ分野で約20年。現在はMAを活用した実践的な施策の立案からクリエイティブ制作に至るまで、マーケターへの一貫したサポートを提供しています。
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