我慢は良くない 【バナーヌのエッセイ#2】
年の瀬で忙しい時期に焦ってしまった出来事が。
つい最近、少しお腹がぐるぐるしているなと感じながら、行きつけの居酒屋から徒歩15分ほどの我が家へ帰っていた。これくらいの感じなら15分は余裕でもつだろう。大人だし、そんな急に我慢できなくなることなんてない!
そう思いながら、帰路を急いだ。
だが、お腹の具合は急に変化するもので、自宅へ残り5分のところで唐突にお腹が痛くなってきた。
「やばい、もたないかもしれない…」口には出さず、心の中で呟く。
こうなったら走るしかないと思ったのだが、如何せん走るとお腹が刺激されて余計にヤバくなる。
あぁ40歳にもなって、漏らすなんてめちゃくちゃ格好悪いじゃないか。
いや、こんなことが許されていいはずはない!一応、まだ嫁入り前の女なのだ!(この発言自体、この時代だと叩かれそうというのはまた別の話)
思わず茂みがないか見渡すが、ここは大都会。見えるのはビルや街灯で全くもって暗くもない。この辺りは恐らく監視カメラがそこらじゅうにある。こんなところでお腹の違和感を自然に解放するわけにはいかない。
そろそろ頭の中もパニック状態になってきた。何か気を紛らわせる歌でも歌おうか。だが、こんな時に限って歌のひとつも思い浮かばない。
あぁいよいよか。40歳の年の瀬に盛大に恥ずかしい経験をするのか。時が経てば笑い話になるのだろうか。
疑問は尽きない。
こんなくだらない事を考えていたら、目の前に自宅が見えてきた!あぁ、あと30m、20m、10m…鞄からすぐさま鍵を取り出してドアを開ける。
なりふり構わず靴とコートを脱ぎ捨て、スカートを捲りながらトイレへダッシュ。時短を心掛けた。
タイツをずり下げ、便座に座ると同時に、体内に溜まっていたものを一気に解放してあげた。
なんという解放感。
言葉では言い表せないほどの感覚。
視界が一瞬にしてクリアになる。
それと同時に、我慢できたという達成感も湧いてきた。
自然と笑みも溢れる。
今日は良い夢を見られそうだ。
そして、お腹が痛いと少しでも感じた時は、決して我慢してはダメだということを学んだある夜の出来事であった。