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【先生の心をゆるめるマインドセット】話すことと笑うこと
「実は今日、うちのクラスで窃盗事件があったんです……」と隣の席のK先生が話し始めた。
ええ、それは大変!と丸つけをしていた手を止めて話を聞いた。
「図工の時間に男の子たちが、油粘土をこっそり持ち帰ろうとしてたんですよ」
図工の授業中、コソコソ怪しい動きをしてる子たちを見ていたら、工作で使った油粘土を、豆粒サイズにちぎって筆箱に入れていたそう。
理由を聞くと、消しカスを集めて大切に作っている“ねり消し”にどうしても混ぜ込んでみたかったから。
学校の物を持ち帰るのは当然ダメなこと。
だけど、みんながコネコネしてきた学校の小汚い粘土と、“窃盗”という言葉のアンバランスさが面白くて、つい笑ってしまった。
かわいい。そんなに欲しかったのね。
(粘土の男の子たちはもちろんきちんと指導されていた)
*
子どもとのエピソードを、笑いを交えながら楽しく話すK先生。
ああ、子どもたちが本当にかわいくて仕方がないんだなあ、と愛を感じる。
K先生の隣の席になってからは、私も自分のクラスでの出来事をよく話すようになった。私の話もいつもニコニコしながら聞いてくれる。
先週、「K先生の教室はいつも笑いがあって、広い心で子どもたちと接してますよね。私も見習いたいです」と伝えると、
「私は、職員室で先生たちに話すことで、気持ちを軽くしたり落ち着けたりしてるんですよ」と返ってきた。
教室では、ムキー!っとなってしまったり、落ち込んでしまったりしたことも、他の先生たちに話してみると「案外大したことなかったな」と思うことはよくある。
話を聞いて笑ってくれると、「そんなに思いつめなくてもよかったかも。明日もう一回声をかけてみよう」と前向きに捉え直すことができる。
自分の気持ちもふっと軽くなるし、心にゆとりを持って子どもと向き合うことができる。
子どもと過ごす毎日は、面白いことがたくさんある。
面白がれること、の方が近いかも。
時には笑いで済まされないことが起きる日もあるけれど、
子どもは間違えて当たり前。間違いを、笑って受け止められる大人でいたい。
教室で担任は自分ひとりだから、悩みを抱えてしまいがち。
だからこそ、話すこと、笑うことで心をゆるめたい。
“教員が笑顔でいること”が、子どもにとって安心できる教室をつくるのだから。
ある日のこと。
「せんせー、牛乳こぼしましたー!」
倒れたままのビンからは、まだドボドボと牛乳がこぼれている。
「いいから、先にビンを立てて!!!」
その時はもーっ!となってしまったけど、振り返ると笑えてくるエピソード。