「空気感が伝わらない」に逃げるな-企業Ver.-
緊急事態宣言発令以降、オンライン面談が急速に進み、最終選考まですべてオンラインで完結させる企業も増えてきた。
スムーズに移行して、採用を出せる企業もある中で多くはまだまだオンラインへの抵抗に頭を悩ませている印象がある。
同時に、学生側もオンラインに切り替わってから就職活動へのモチベーションが維持できなくなったり、オフラインでの選考や説明会が復活することを待っているという声が多くあり、両社が共に訴えるのが「オンラインだと空気感が伝わらない」ということだ。
そもそも「空気感」とは何か?
目に見えないオーラや発している体温から読み取れるオカルティズムな情報だとしたら解決することは難しいかもしれないが、本当に改善の余地は無いのだろうか。
また、オンラインに切り替わったことで相手の情報を上手く読み取れなくなった人は、オフラインで正確に読み取れていたのかというところも疑問が残る。多くの場合、表情や会話、仕草などから総合的に判断していた「慣れ」から、読み取っているという勘違いをしていただけに過ぎないだろうか。
何より「空気感が伝わらなくなった」人たちは、舞台や演劇であれば役者の熱量が伝わるけど、ドラマや映画ではわからないと言うのだろうか?
大前提として、自分の慣れ親しんでいるオフィス(企業視点)/就活の現場だと気合を入れる場所(学生視点)から、自室に切り替わっていることや、上半身しか映らない映像から読み取れることを考えると変化はある。
しかし、地域コミュニティが前提として電話が発明されたときに「電話だとわからない」と使用しなかったり、メールが流通したときに「文章だけだと伝わらない」と使用しないことと同義であり、それぞれで必要とされるスキルは変わるものの「伝わらない」という結論を出すのは単なる工夫不足としか言いようがない。
実際にテレアポは20年以上営業手法の第一線にいるし、オンラインショップで写真と文章だけで購入することも当たり前となっている。
さて、改めてこの「空気感が伝わらない」の正体について考えてみると、これまで自分が相手を判断するときに用いていた情報と、相手に判断させるときに用いていた情報の変化にあることが考えられる。変化の一例は以下の通り。
・スーツ/リクルートスーツの服装
→お互いカジュアルな服装
・身振り手振りなどのジェスチャー
→胸の下で使っているジェスチャーは見ることが出来ない
・全身の大きさ、シルエット
→胸の上からでしか判断出来ない
確かに、これだけ見ると情報量が減っている。
特に、相手の実態が全体像として把握できないことはどこか得体の知れない印象を残し「相手の挙動が把握出来ない」ことに繋がっていることが想像される。
企業対就活生、という構図も紐解けば一人の人対人になるため、不安材料が残るとその不安に名前をつけたり理由を探すのは当然だが、一方で「工夫をするだけその分印象に残しやすい」という点もある。
例えば、説明会などではチャットで随時質問を送ることが出来るし、PCを使うのかスマホを使うのか、ノイズが入らないように場所や周りの環境をどうするのか、カメラの見え方はどの位置にするのか、服装は何を基準に決めるのか...。
こうやって考えてみると、全身像や身振り手振りなどがわかりにくくなった一方で、それ以外の周辺情報はかなり得やすくなったと言えるし、都心の企業であれば「よく会える周辺地の学生」のほうがよく見えるというマジックが無くなり、全国すべての就活生を一律同じように判断出来るという意味だと、恩恵を受ける学生のほうが多いだろう。