見出し画像

金木犀の香りを辿る散歩

今年もしれっと訪れて、気がついたら終わりかけの金木犀の季節。
30まで北海道で生まれ育ったためこの可愛らしいオレンジの花と香りを知らずに生きてきました。

初めてその香りを嗅いだのは結婚して愛知に移り住んだ年の秋でした。香水かと思うほど強く甘い香りが団地中に広がっていて夢のような世界になっていました。周りを見渡しても香りの発生源がわからず、数日で終わってしまったことからきっと植物なんだろうなと思っていました。

離婚して関東に移り住んで数ヶ月、またあのいい香りが窓の外から流れてくることに気が付き、こんなにいい香りのする植物は何なんだろうとフラッと散歩に出かけました。
周りを見渡してもそのような花は見当たらず、しばらく歩いてやっとオレンジの小さな小さな木に咲く花がその香りの発生源だとわかったとき、嬉しさと喜びで写真と入浴剤を祖母に送ったことを今でも覚えています。北海道にはない花の香りを祖母にも知ってもらいたかったのです。

それから毎年金木犀の季節になると香りを追いかけるように金木犀から金木犀を巡る散歩に出かける様になりました。
ルールは単純、金木犀の香りがする方向に歩くだけです。
そして金木犀の花を確認したらまた歩き出し、次の金木犀の香りを探してまた歩くというーー

ーこれって、不審者じゃないかー

そもそも散歩って何なんでしょうか、Google先生に確認した所【気晴らしや健康のために、ぶらぶら歩くこと。】とのことでした。私ももうアラフォーということで、出来れば長生きはしたくないと思いつつもぽっくりとこの世を去るまでは好きなものを食べて健康に生きていきたいという願いはあります。そのためにも以前書いたようなマラソンのようなスポーツもいいですが、いかんせん雨だなんだで出来ない理由が五万と出てきてしまいます。でも散歩というのは歩くだけです。そして治療中となる適応障害には陽の光を浴びるということがとてもいいということじゃないですか。

ただしぶらぶら何の理由もなく歩き続けるということは、このご時世不審者扱いをされてしまっても仕方有りません。身体のために歩いているといくら訴えても受け取る側がどう受け取るかなので。

金木犀散歩は年々姿を変え、今では金木犀の季節は積極的に移動を徒歩にするというものになってきています。
香りの素晴らしさから秋の三大香木と呼ばれていますが、シーズン真っ盛りのときは木の近くまで行かなくても、どこにいてもほのかに風に乗ってあの甘い香りが漂ってきます。今咲いているんだなと思うだけでただの通勤路も楽しいように感じます。

今年はもう終わりかけとなっていますが、今では金木犀の香りの物が沢山出ていて年中その香りを楽しむことが出来るようになりました。それでも本物の金木犀の香りは特別なものと思います。
あと少しだけのこの素晴らしい季節をお腹いっぱい吸い込んで楽しみたいと思います。

#散歩日記


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集