誘惑を踏みとどまる力 強制力よりも自制心だよ
銀行の支店長がお客さんの貸金庫から10億円以上盗み取ったり、若者は次々と闇バイトに手を出したり、裁判官まで出向先で違法な株取引をしたり、誘惑に負けてしまう人が本当に多いね。
だけど、この誘惑に踏みとどまる力には2種類しかないと思うよ。
それは罰則を強化して外側からやらないように強制する力と、自分の内側の自制心を強くするか、どちらかしかないよね。
まず内側の心の力による自制心だけれども、これはやっぱり宗教だよ。
仏教では五官煩悩と言って、お釈迦様の時代から貪ることを戒めるからね。
そのために死んだ後で地獄に行って、特に誘惑に負けて貪ることをした人は、畜生道というところに行くことになっているんだよ。
これは芥川龍之介の杜子春に出てくるよね。
杜子春のお父さんとお母さんが地獄に落ちて、動物の体になってしまってるんだよ。
そこで杜子春はお父さんとお母さんを助けようとして、本当は黙っていなきゃいけないんだけれども、声を出すところで仙人の出した課題に失敗するという話だよ。
それからお釈迦様の弟子で目蓮という人がいるけれども、この目蓮のお母さんも貪りが原因で地獄に落ちているということになってるからね。
これは仏教だけじゃないみたいだよ。
スウェーデンの霊能者でスウェーデンボルグという人も閻魔帳のことを書いてるからね。
死んだ後であの世に行ってみると、ノートのようなものが飛び出てきて、そこで自分でやったことや思ったことが全部書かれているんだよ。
それを読まれたら恥ずかしくなって、自分から地獄に行くということになっていたよ。
だから自制心というのは、結局、天国と地獄があって、地獄に行かないように欲望をコントロールするということだよね。
心の中には欲望と、欲望をコントロールする善なる心があって、この善なる心を強くしろということだよね。
だからこれは、人間には皆、自制心を強くすることができるという前提があるわけで、性善説に立っていると言えるよね。
その反対が性悪説だよ。特にマルクスレーニン主義と言うのは極端な性悪説だと思うよ。
人間は放って置くと常に悪いことをするから、監視して秘密警察が常に行動をチェックしているし、恐怖心によって外側から悪いことをしないようにタガをはめるという考えだよね。
だけど、どんなに罰則を強化しても、人間の欲望や悪は止められないと思うよ。
最近では中国でも、罪のない一般の人を道連れにして、何十人も車でひいて、そして自殺するという極悪非道な事件が立て続けに起きているからね。
これは監視社会の中国で、悪いことをしないように罰則を厳しくしても、やっぱり限界があるということだよね。
どちらがいいか選ぶのは、やっぱり国民的な選択だと思うよ。
アメリカではトランプさんが勝利したけれども、これは結局、性善説に立って、人間に最大限の自由を保障して、宗教の力によって自制心を働かせようという運動だと思うよ。
アメリカは監視社会よりも、やっぱり自由な社会を選ぶ国だよ。そしてそれが人間の社会としては正しい道だし、アメリカはこれから復活してくると思うよ。
トランプさんが当選して、孤立主義に入るようにみんな思っているけど、そうじゃないよ。
自由主義社会のリーダーとして踏みとどまると見たほうがいいと思うよ。
それから日本も、もっと宗教を奨励したほうがいいよ。
あの世は地獄のことも小学校でちゃんと教えておけば、誘惑から踏みとどまる力も強くなるしね。
室町時代のお坊さんで夢窓疎石という人がいるけれども、当時の権力者だった足利直義と対話をしてるんだよ。
そして直義が「神仏は徳を積み、正義を愛する人を高く評価するはずだが、世の中を見渡してみると、立派な行いをしている人が、必ずしも神仏に愛されているようには見えないのはなぜですか」と質問したんだよ。
そうしたら、夢窓疎石はこう答えたそうだよ。
「あなたは視野が狭い。この世の因果だけで物事を見ているが、因果には前世から後世までを含むものがある。前世で悪いことをした人が、今世でどれだけ善行を積んでも、その報いはまだ現れないのかもしれない」
こういうことを権力者にちゃんと教えている夢窓疎石はエライよ。
日本のお坊さんたちも、お葬式で忙しいと思うけれども、この世で生きている人に対して、「どう生きるべきか」をしっかり教えてほしいものだね。
やっぱり、自由でありながら、みんなが誘惑に負けないようになるためには、もっと宗教が力を持たないといけないよ。
それが日本がもっと良くなる一番大事なことだと思うけどね。