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モノから「食べ」モノへ

夏野菜がそろそろ出回る季節です。
田舎育ちとしては、野菜が美味しい季節は最高です。


野菜を歴史的に見ると、食用としては歴史が浅いモノが実はけっこうあります。


今日は、モノから食べ物へ変貌を遂げた野菜たちを紹介したいと思います。

観賞のための野菜

ドイツといえば、
ビールとソーセージとじゃがいも!

この黄金の組み合わせは、たまりません。

この「ドイツといえば、じゃがいも」には、感動的な(?!)歴史があります。


もともとアンデス原産のじゃがいもがドイツ(当時のプロイセン)に持ち込まれたのは17世紀末から18世紀初頭です。

一部の山地のみで栽培されましたが奇異なかたちから、食用としては好まれず、普及もしませんでした。

ところが1770年代の大飢饉で食糧難になり、
その救世主として注目を浴び、広まったのがじゃがいもでした。

当時フリードリヒ大王はKartoffelbefehl(じゃがいも令)を発し、じゃがいもの食用を推奨し、この大飢饉を乗り切ったそうです。

おかげさまで、フリードリヒ大王は
「いも大王」呼ばれたそうです(笑)


同じく観賞用から食用になった野菜代表としては、トマトも有名な例のひとつです。


ペルーのアンデス地方原産で、16世紀にスペインによってヨーロッパに持ち込まれます。

ベラドンナという有毒の植物に似ていることから、しばらくは観賞用として扱われていました。

食用になったのは18世紀と意外に最近のことです。イタリアで、それまではパスタソースとして、羊のおろしチーズや、黒コショウが使われていましたが、トマトが食用として使われるようになり、トマトソースが普及しだしたのです。


地域が違えば、警戒心もなかなか解けないのでしょうか。ヨーロッパでは、紀元前2000年頃から栽培され、古くから食用としてなじみがあったアスパラガス。しかし、江戸時代に日本にもたらされたものの「観賞用」としてでした。本格的に食用としてアスパラガスが使われるようになったのは、明治時代になってからだそうです。


入れ物代わり


ハロウィンのジャックオーランタンでもおなじみの野菜といえば、かぼちゃ。くり抜いて、ランタンにしたり、食用メニューはみなさまご存知の通りいろんなバリエーションのある、幅の広い野菜です。



現在の食用かぼちゃは、品種改良されたものです。

改良前のかぼちゃは果肉部が薄く、繊維質で、
しかも水っぽくてにがいとマイナス4拍子そろっていたんだとか…!

一方で、外の皮は硬くて厚いので、水や食料を入れる容器として、活躍していたんだそうです。

忘れられた存在

中南米原産のピーマンが日本に持ち込まれたのは、明治時代です。


昭和初期になっても、どういうモノか説明が必要なくらい、全然なじみがなかったそうです。

ところが、第二次大戦後、物価統制により、モノ不足に陥ったときに、ピーマンは、存在そのものを忘れられていたおかげで統制の対象になりませんでした。そのおかげで、流通できてしまったという逆説的に普及していくことになったのです。

ピーマンと同じように、規制をすり抜けて人気者になった野菜があります。それは、きゅうりです。

もともとの原産地は、ヒマラヤ山脈あたりで、江戸時代に中国から伝来したきゅうり。

独特の苦味と味もない、そして、輪切りにしたときに徳川家の紋章に似ていたことから、武士には特に好まれなかったそうです。

ところが、江戸時代後期になると、きゅうりは一躍人気者になります。当時、野菜や魚などの「初物」が流行しました。早く出荷すればするほど、高値で取引されるので、競争が激しくなり、ついに幕府は「野菜の早出し禁止令」を出します。しかし、人気がなかったきゅうりは禁止令の対象になりませんでした。育ちやすくどんどん出荷できるきゅうりは、早出し禁止令の隙間をくぐって、庶民の間で人気になるのです。

今、当然のごとく美味しくいただいている野菜も、かつて誰かが食べようと決意してはじめて「食用」になったんだとわかります。先人の決意のおかげと改めて目の前のご飯を前にして感謝して食べようと思うのでした。

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