現代ソビエト教育学大系
ヴィゴツキー関連の本を探していた時に、偶然見つけた本がこちら。
これは、シリーズ本になっていて、第2巻だった。
それに気づいた私は、もしかして他の本も図書館にあるかもしれないと思った。
検索した結果、私の予想はあたり、「現代ソビエト教育学大系」という全12巻からなるシリーズ本だった。
「現代ソビエト」と言っても、今ではソビエトが崩壊しているし、このシリーズは、1970年代くらいの実践をまとめて、ソビエトで出版された文献なので、50年も前のことで現代と言われても、違う。日本では、1980年代頃に日本語訳が出版された。それでも、教育は不易と流行があるはずだから、今の時代でもできることがあるかもしれないと割り切って読むことにした。
第1巻は、国会図書館で検索しても出てこなくて、どんな内容か分からなかった。私が想像するには、ソビエト時代に書かれた本で、現在はソビエトが崩壊しているから公表できない内容なのかもしれないと思った。例えば、レーニンとか、スターリンとか、マルクスとか、共産主義とかそのような内容なのではないか?と思ったが、それはどう検索しても分からなかった。
もしご存知の方がいらっしゃったら教えていただきたい。
第3巻は、「ソ連の体育システム」。
義理の妹の運動神経を見ても、義理の母の昔の運動神経の話を聞いてもレベルが高いなあと思っていたが、学年の到達目標のレベルが高くて、納得した。
また、私の剣道部の顧問の先生は、トレーニングの仕方を熟知していたのか、この本に書かれている調整の仕方と似ている部分があった。
第4巻は、「幼児の教育」。
姪や甥の幼稚園のお迎えについて行ったことがあり、幼稚園の内部に何回か入ったことがある。また、姪や甥が幼稚園で作った作品などを見ても、こちらもレベルが高いと思っていたが、読んでみて納得した。
第5巻は、「盲聾唖児教育~三重苦に光を~」。
ヴィゴツキーの著作でも読んでいたから、こちらもザゴルスク(現在のセルギエフ・パサード)での研究の様子がよく分かった。
第6巻は、「教育制度の現状と課題」。
1970年代の話だが、今の現場にも通ずるものがあった。
第7巻は、「ソ連の職業・労働教育」。
共産主義のソビエトにおける労働教育に関する内容。職業体験を小学生のうちから体験できるシステムになっていて、ソ連の労働者を育てるという意気込みが感じられる本。
たしか、日本でトライアルウィークとか職業体験というのが始まったのは、2000年代になってからだったと思うが、そういう教育がソビエトでは、1970年から行われていた。
第8巻、「教授と発達」。
教授技術や指導法に関する内容の本。カリキュラムの一例が載っているのだが、小学校1年生で赤道を学習するなど、教育レベルの高さに圧倒された。
第9巻は、「心理学概説」。
第10巻は、「ソビエトの美育」。
美育とは、音楽や美術、演劇などの芸術に関する教育で、「芸術大国」と言われるのもうなづける内容だった。
第11巻は、「子供の精神発達と言語学習」。
ロシア語の文法の話なので、日本語と一致するとは限らないが、こちらも発達状況が分かる興味深い内容だった。
第12巻は、「子供の生活と道徳教育」。
訳した人も「これは、いったい?」と思ったらしいが、具体的な言葉かけなどが載っていて、同じようなケースで悩んでいる場合は、大いに参考になると思った。
2月からの国際情勢により制裁が行われている中、我が家族のメンタルがものすごく強い。我が家族に限らず、道を歩いている現地の人々も精神的に強い。今回に限らず、コロナ禍の時もそう思った。
この精神的な強さはどこから来るのか?と不思議に思っていたが、この「現代ソビエト教育学大系」を読んで、少し分かる部分もあった。
だいたい1970年くらいの実践について書かれている本だから、かれこれ50年くらい前で、義理の両親が受けた教育かなと思うが、教育をものすごく大切にし、育てていたんだなあと思う。
もうソビエトも崩壊しているし、今頃読む人もいないようで、これらの本のほとんどは、誰も借りていないものもあったくらいだが、国際情勢がこんな状態だからこそ、気になる部分を少し見てみるのもありだと思う。