小説 迎撃システム・かなた君
161月、下旬、午後4時頃。
恣之助(ほしいままのすけ)は、公園のベンチに偉そうに座り、「月刊少年摩訶不思議 161月号 ふろく:生産物賠償責任保険」のページをぱらぱらとめくった。
恣之助(ほしいままのすけ)、小学5年生。周りからは、ホシくんと呼ばれている。
さて、恣之助が今読んでいるのは、「月刊少年摩訶不思議 161月号 ふろく:生産物賠償責任保険」の、とある短い漫画のページだ。その漫画は、「月刊少年摩訶不思議 102月号 ふろく:おてがる搾取セット」から連載が続いている、少女が作ったロボットを彼氏として生活するお話である。
その漫画を読んでいるうちに、「(ああ、おれも、ロボットの恋人がほしいなあ)」と思うようになり、ついこの間、おれは“迎撃システム・かなた君”を完成させたのだ!
迎撃システム・かなた君は、地球ひとつ吹き飛ばせるほどの迎撃システムを搭載しており、さらに自然な会話もできちゃう、えっちなすぐれもの!
そんな迎撃システム・かなた君に、恣之助は、ガチ恋しちゃったんだよね!こんなに熱い想いが湧き上がってくるのも、“地球が丸い”せいではなく、“丸い地球の”せいなのかもしれないな、なんて思う。
恣之助は、かなた君を見ると、かなた君の存在に性的興奮をしてしまう。
ああああああ!!
恣之助は、かなた君のことを考えながらいつもより速足で読み終えた「月刊少年摩訶不思議 161月号 ふろく:生産物賠償責任保険」を810メートル先に投げ飛ばし、その反対側の方向である、かなた君の通っている学校の裏山へと、かなた君への愛をパワーソースにして、秒速810メートルで走る。
そして、“迎撃システム・かなた君”の前で、慣性さえも無視してピタッと恣之助自分自身の身体の移動を停止させ、かなた君の顔を凝視した。
「恣之助くん、こんにちは!今日は、二╍6・6・8┐△△686(にひゃくひゃくろくろくはちじゅうじゅうろっぴゃくはちじゅうろくおくおくおくおくまん)年、161月……」
「こら、えっち!こーらこら、えっちな“存在”しないの!そんな“存在”されちゃったら、おれ、もう、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
感動して、泣いた。泣きながら、スキップをした。恣之助はいま、学校の裏山で、えっちな存在を感じたことによる感動を泣き叫びながら、スキップをしている。
その上空では、カラスが、カーチェイスをしている。
カー!
「はあ、はあ、もう、これ以上、そんな、えっちな、“存在”しちゃ、駄目だよ♡かなた君♡」
「恣之助くん、どうしたの?そんな大きな声を出して。」
「デュフ~♪あ」
“「あ」”である。
恣之助は、大事なことを忘れていたのだ。
恣之助は、反射的にポケットに手を突っ込むと、丸まった紙を取り出した。
「今日の放課後、学校の裏山の公園へ来て。そこで、大事な話をしましょう。」
恣之助には、彼女がいたのである。彼女にかなた君の存在と、恣之助とかなた君の関係についてがバレてしまったため、今日は、おそらく、それに関する“大事な話”をすることになっている。
恣之助は、かなた君から20メートルほど離れた、学校の裏山の公園へと向かった。向かったら、すでに、彼女がいた。
程なくして、彼女と無言のキャッチボールを始めた。おれ達は昔から、この公園で、よく、キャッチボールをしている。
「ホシくん……」
「…」
「ホシくん、ごめんね?私、最近忙しくて、あんまりホシくんと会えてなかったよね。だから、あれを作って、寂しい気持ちを紛らわせたかったんだよね。」
「…おれが悪い」
「え?」
「おれがあの人を作ったから、君に寂しい思いをさせてしまったんだ…」
「ちがう…私のせいよ!」
「おれのせいだ!」
「加害者ヅラ」
「…?」
「加害者ヅラ!加害者ヅラよ!加害者ヅラは、やめて!」
「…」
「…でも、ホシくん。あんなものよりも、私のほうが大切よね。」
「…」
「ね、ホシくん。私とあんなもの、どっちが大切なの?」
「かなた君」
「…え?」
「…」
「ね、ホシくん。あんなものよりも、私のほうが大
「かなた君」
「…え?」
「だってえ、えっちなんだもん!!!!!」
「」
2人の間に、沈黙が訪れる。
その上空では、カラスが、カーチェイスをしている。
カー!
「…もう、もう、ホシくんなんか、知らない!!!」
彼女が、強くボールを投げる。
その時!
カーチェイスをしているカラスに、ボールが直撃!
秒速810メートルで飛んでいく、カラス!
カラスが、迎撃システム・かなた君に、直撃!
迎撃システム・かなた君が、誤作動!
迎撃システム・かなた君が、迎撃を、開始!
消し飛ぶ、ドロドロになる、体、だいしぜん、だいうちゅう、ユニバース!
ホオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!
(2,023文字)