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不安旅



はじめに


自分が月イチくらいの頻度で一人旅をするからか、一人旅はメジャーな行いだと勝手に思っていたけど、自分の周りではわりと少数派のようだ。

職場で話すと、結構驚かれる。さみしくない?ときかれる。さみしいし心細い。でも、心細くていやだ。不快。までは行かない。ただものすごく心細いだけ。

生活圏内から離れて、知らない土地に一人で行くんだから、不安になるのは当たり前なのかも。自分は頻繁に一人でホイホイどっかに行く割に、べつに平気なわけではなく、不意に足がすくむような心細さに襲われることもある。何か明確な起因があるというよりは、本当に意味なく不意に心細くなる。

でも、一人旅の回数を重ねるごとに、この心細さをなんとか飼い慣らす術を覚えはじめた気がする。心細さがうまく作用することもある。見知らぬ土地の寄るべなさを強く感じ続けることで、感覚が鋭敏になり、大きな愉悦が生まれることがあるのです。

以下、心細さを紛らわしながら、あるいは心細さを愉悦の種にする自分の一人旅について整理しておきたいと思います。



一人旅の必携アイテム 文庫本


一人で旅行するときには必ず一冊は文庫本を持っていく。読むべきなんだろうな、読んどいた方がいいんだろうなという本は持っていかないように注意。よく言われるように、この場合は結局読むのが憶劫になるから。こういうときは、俯瞰で本を選んだらだめだ。読みたい! と自分がはっきり思うものを選ことがとにかく大事。この文庫本一冊が、一人旅の行程のいろんな場面で効力を発揮する。

移動手段に夜行便を使うと、目的地に着いて、さあ今から。というときなのに、知らない街の朝の様子になぜか心細くなって、ここはどこ。と思うことがたまにある。全然こらえられるレべルの心細さではあるのだが、とりあえず手近なチェーン店に入り本を開くことで、途方もない不安感がある程度抑えられる気がする。それに、朝から知らん街のカフェで本読めるとか、つくづく休日だなあ〜。と実感できる。解放感がある。

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タリーズも

心細さがうまいこと収まってきたら、スマホのメモを確認したり、電車の乗り換えを検索したりもする。本は関係ないけど、行程のいろんなとこで、この「体制を整える時間」をとると、うまくいくことが多い。べつにカフェに入んなくても、駅のベンチに座って、ふう。と一息つくだけでも大分違う。

あとは、移動時間や待ち時間に読む。行儀悪いけど、普通に食事中にも読む。書いてて気づいたけど、自分はやっぱりー人旅中めちゃくちゃ心細いんだと思う。だから、本にしがみついて、不安を紛らわせてるんだろう。

とはいえ、本を読むのはこういう消極的な理由からだけでもない。旅先ではほかにすることもないから、いつもより集中して読める。序盤の立ち上がりが遅いなあ。て本も、どっちにしろ読むもの他にないしって読んでるうちに乗ってきて読み切ってるときがある。読んでる間は楽しいし、待ち時間も短く感じるし。文庫本は、旅先のお守り兼実用品。

このように文庫本一冊を携行することで、普段より内容にのめり込めるし随意に安らぐこともできるし一石二鳥なんだが、逆に本を切らすと不安になる。この前の旅行では、持参していった本をホテルで読み終わりそうになったことで恐慌を来し、紀伊國屋書店に駆け込んだ。そもそもの精神状態どう? て感じもするけど。

大慌てで買った『百年の孤独』

スマホでいいじゃん。て感じなんだけど、スマホいじるのって実は本を読むより大変だし疲れる! だらだらスクロールしてるだけに見えて、実は脳みそが忙しい。流れてくる情報を見てるだけに見えて、派生していろいろ考えちゃってるから。

本読むのは楽! アガサ・クリスティーとか、娯楽小説はとくに。読んでればいいだけ、文字を追うだけで何も考えてないから。まあ自分の場合は、スマホ依存症で昔段スマホいじるばっかりだから、旅先でも同じことをしてたら、帰ってきたときに、ああ同じことしてたなあ。と、うまくリフレッシュにならないんじゃないかという懸念もある。

同じような話で、荷物になるから電子書籍の方がいいんじゃないの。と思いもするけど、液晶画面で読むと没入感が削がれる気がする。通知が気になるとか、普段だらだら無限スクロールしている媒体だからとか、私のスマホ依存がここでも障害になっている。やはり文庫本一冊がいい。


一人旅 黄金の航路

目的地を好きに選んだり、行程を自在に組み替えたりできるのも、一人旅の楽しみである。なお、自分の場合は地方から都市部に向かうパターンが多い。最近は、日中に博物館や美術館に行き、タ方から夜にかけてお笑いライプを見に行くという航路を発見した。

行きたいお笑いライブの公演日と展覧会の会期がうまく重ならないときは、世の中そんなに甘くないか。とひとり照れ笑いをすることも。


展覧会の愉悦


博物館や美術館には、通年でいつでも見られる常設の展示のほかに、期間を区切って開催する展覧会ある。企画展や特別展など、名称はいろいろあるけど、そのときにしか見られないスペシャルな展示である。他所のモノをたくさん借りてくるようなブロックバスタ一的な大型展示にとかく注目が集まりがちだが、地方の博物館でも、これは。という面白そうなテーマのものが開かれていることがある。

スケジュールを立てるとき、この時期になにかやってないな。とまず探る。自分は『博物館研究』の展覧会スケジュールでチェックしてるけど、アイエムの方がアクセスはしやすいと思う。ただ、一覧性はない気がする。やっぱりこういう情報は誌面の方が見すい。

人と一緒に展覧会に行くのも、感想を共有できたり、思ってもみなかった視点をくれたり、広がりという面では利点がある。キャッキャできる方向に楽しい。でも、深度という意味では、なんだかんだて一人で観覧する方が深まると思う。のめり込んで見ることができるから。知らないことを知るのが単純に好きな、SHIROBAKOのりーちゃんタイプの人にはぜひ博物館めぐりをおすすめしたい。

「思ったんすけど、自分、知らないこと知るのがすごい 好きみたいす」

SHIROBAKO #13

多量の情報やイメージを取り込み、展示室内外のソファに虚無の顔で座り込んだり、茫然としたまま次の目的地に移動したりするうちに、自分のなかで徐々に整理されていく感覚がある。吸収しきれなかったものが澱みたいに漂う。このとき、ああ一。楽しい。と思う。脳みそに栄養がいきわたっていく感じがする。一人で悶々と考えることでしか得られない愉悦もある。

しかし、博物館といえばいつも思うんだが、自分みたいに凝り固まった理屈タイプじゃない人の方が、新鮮な目で見られて楽しめそうなんだよな。姉ちゃんなんかにたまに博物館に付き合ってもらうと、こちらが驚愕するような視点のコメントを投げかけてきて、目からウロコを越えてたまに感動する。ふだん博物館に行かない人の方が、博物館を楽しむ才があるという。これは寂しいというより悲しい。悲しい人間だ。



お笑いライブの愉悦


最近開眼した一人旅の楽しみ方の一つが、行程にお笑いライブを入れること。タ方から夜にかけてあるお笑いライプは、特に行程に組み込みやすい。チケットを取るまでが最もスムーズなのが、吉本の常設劇場。ここの劇場へ、心細く入る。そして、心細く開演を待つ。あとは座っているだけでいい。

生で見るお笑いは、客席の笑いや拍手、どよめきも体感できて、総合的に楽しい。日中の孤独で感覚が研ぎ澄まされているのか、妙に集中できるし、いろんなことをくっきり鮮明に感じられる。推しとかなんとか、現代的に捉えていた皮が剥がされ、うーん。プロの興行だ。そりゃ楽しい。と原始的な骨格に至る。至らなくていいんだが。

日常生活でのストレスも、旅行中に鬱積した不安も一気に晴らされる。日常的に劇場に通えるわけではないから、慣れなさや新鮮さもあって、うれしいのかもしれない。

終演後、劇場を出ると再び不安になる。心細く歩く。でも、見る前とはたしかな変化がある。日々の憂さは晴らされているし、フワフワして、独特の多幸感がある。昼間の寄席もまた違った楽しさがあるけど、この孤独→多幸感一孤独の中での多幸感という流れを存分に味わうためには、やはり夜間が望ましい。寒い日のお風呂みたいな。

8月に行ったシチュエーションコントパトル後の心細さは、非常にナイスな心細さだった。雨も降ってたし。




おわりに

以上、自分の一人旅の模様をたらたら書いた。ザクザクとした冒険感とか、己の精神や体力の確認とか、他にも楽しみ方はあるのだが、心細さに絞るとこんな感じだ。始終意識しているわけでも囚われているつもりもないけと、うっすらとした不安を感じながらウロウロしているのは間違いない。

しかし、日常生活では、この種の不安はそう味わえることではない。馴染みのない世界に身を晒して、自我が不安定になる時間はけっこうイイ。

心細くなりたい方にはやはり今からの季節の一人旅がおすすめですね。秋から冬にかけては、心細くなるには絶好のシーズンですから。

私は直近では、11月に大阪、12月に東京に一人で行く予定がある。どれ程心細くなれるか見物である。



誰が読むん。という文章を長々書いてしまった。
安心旅の場合も書こうと思う。

ここまで読んでくださった方いたら、ありがとうございました!

最後に、一人旅の方に個人的におすすめしたい、意外とみんな見落としてないかね? というラインのホテルを貼ります!


一人旅におすすめのビジネスホテル

ホテルアクティブ!

福岡、山口、広島にあるチェーンホテル。部屋のレイアウトが良すぎる。

ホテルアクティブ!広島の朝食
明太子がうれしい


ホテルエリアワン

まあ高松と高知しか泊まったことないけど。

エリアワン高知の朝食
野菜たっぷりだ



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