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青空文庫のおすすめ3選 ──無料の暇つぶし程度に読んでたら急に心臓掴まれるやつ


はじめに


私は液晶画面で小説を読むのは得意じゃない。

目が滑る気がするし、眼精疲労も気になるし。

ほんとは文庫本を持ち歩いてバッグを重くしたくはないし、スマートにスマホで完結させたいんだけど。未開人かも。

でも、青空文庫はたまに開く。

ほんとにたまにだけど。

やっぱ無料だし。

で、気になるタイトルのものを読んでみると、意外とイイやつに当たる。

ありがとう青空文庫!

以下、青空文庫に掲載されている中で、おすすめの作品を3つほど紹介します!




菊池寛『真珠夫人』

文壇の大御所・菊池寛の小説。

コレが娯楽小説だ!と叩きつけられるような作品。

めっちゃ面白い。ほぼ骨組みしかないってくらい、葛藤と葛藤が上手に嵌め込まれてストーリーになってる。キャラ配置から全てがきっちり仕組まれてる。

瑠璃子という女性が物語の中心的な人物なんだけど、この人がものすごい勢いで転がり落ちていく様にびっくりする。時系列的にははじめて描写される庭園の場面と、男性を手玉に取る場面ではもう別人みたい。

転落の人生ってわけじゃなくて、とにかく止まらなさがすごくて、まさに転がり落ちていくって感じ。あと、「お嬢様が落魄れていくところを見せてやるぜ! ヘッヘ!」て感じでもなく、「うわー変わっちゃったねえ……ほんと色々あったもんねぇ。涙」て感じ?

「あー菊池寛? どれ、読んでみるか。」て読みはじめて、気がついたら、思ってもみなかったところへ運ばれている!

自分は座って読んでるだけで、(思えば遠くにきたもんだ……)と思えるのが小説の醍醐味だよね。

あとたぶん菊池寛は処女厨。『第二の接吻』『貞操問答』でも、処女厨の才をいかんなく発揮している。まあ処女という属性を物語を盛り上げる道具として使ってるだけかもだけど。

ただ、何回も読みたい、登場人物や雰囲気をすっかり好きになるような作品ではなく、あ一面白かった!で終わるタイプかな。いちおうキャラ化はされてるのに、愛着はそこまで湧かないというか。

エンタメを味わいたいならぜひ『真珠夫人』を。


小山清『早春』

『真珠夫人』は筋に凝った一発勝負の娯楽小説だったけど、小山清の作品はしみじみとした感触
でなんどでも読み返したくなる。木山捷平を思い出したなあ。

青空文庫で読んで、はじめてこの人を知ったんだけど、wiki見たら太宰治の門下生。私太宰治系苦手なのに……。まあ好きは好きでイイか。

『早春』は、おきぬという人のよい女中の話。なんでもない日常なんだけど、めっちゃ沁み入るんよなあ。実ある人って評価すごくいいよなー。

犬好きには、『犬の話』もおすすめしたい。文章が上手すぎて、自分が犬を撫でてるみたいに思える。メリー。おばあさんがいい味出してる。

小山清、ぜんぜん知らないけど、なんでもない人たちの人柄や行動を面白がれる人だったのかな。吉原に生まれ育った人らしく、『桜林』という私小説ぽい短篇もめっちゃ良かった。

いやほんとに、文章が上手すぎる。



オー・ヘンリー『魔女のパン』

一番おすすめ。
一番サクッと読めるし。

オー・ヘンリーといえば、『最後の一葉』や『賢者の贈り物』。作者名を知らなくても、「あの葉っばが全部落ちたらわたしは死ぬ……」というせりふだけは知っている人も多いのでは。

オーヘンリーの小説は、さすが短篇の名手だけあってメリハリがあってどれも楽しく読めるんだけど、『魔女のパン』は鋭さもあってすごく良かった……。

(以下、ネタバレとまではいかないけど、読んでる時になんとなく先が予測できてしまうようなことを書くので、未読の方はスクロールしないでください!)












一方的で過剰な思い込みが容赦なく描かれていて、心臓がいやーな感じでドキリとする。

なんつーか情けないし悲しいし切ない展開ではあるじゃん、こんなの。

でも、悪趣味な感じがしない。それが一番すごいと思う。

江戸川乱歩の『算盤が恋を語る話』も似たような作品だったので、これが好きな人はそちらもおすすめ。



おわりに

書いてたら読み直したくなった。

また読もー、無料だし。

『魔女のパン』の感想書いてて思い出したけど、菊池寛は『ある恋の話』という「推し活」というか、ガチ恋系の短編小説も書いている。

簡単に言えば、美しい後家の女が、舞台上の歌舞伎役者に恋をして、連日芝居に通い詰める話。

綺麗な女なものだから、役者の方も認知してくれたけど──?みたいな展開。

色々ねじくれた恋の話で面白かった。私はまだよく消化できてないけど。

繋がりって昔からいるんだって感想もあった笑。でも、そこが核ではないかな。虚像は虚像のままで。





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