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『別れを告げない』(ハン・ガン、斉藤真理子:訳、白水社エクス・リブリス)の一節

何度となく脳裡に浮かぶその光景がずっと気になりつづけていて、その年の秋になったときにふと思った。よい場所を探して、丸木を植えることはできないだろうか。何千本も植えるのが現実的に難しいなら、九十九本―無限に対して開かれた数字―の木を植え、思いを一つにする人たち十人程度で力を合わせて、それらの木々に墨を塗るのだ。深夜という布で仕立てた服を差せるみたいに丁寧に、永遠に眠りが破られることのないように。そうしてすべてを終えた後、海でなく、白い布のような雪が空から降ってきて彼らを包んでくれるのを待ったらどうだろうと。(p22)

⚫️鎮魂_。
「九十九」というのが“無限に対して開かれた数字”という意味がとても興味深い。韓国ではこの数字にこのようなイメージを乗せるのかはさておき、これから“99”を見るときに意識してしまいそう。
後半部は、美しいイメージが続く。哀しみを帯びた美しさと、それを胸に刻みつける者の強さと…。

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