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チャットボットを導入したくなる話~企業のIT担当者は経営者に提案したくなるはず

企業の経営者が「チャットボットを導入したい」と思うのはどのようなときでしょうか。
チャットボットを導入すると生産性が向上し、コストダウンできて、カスタマーサポート業務が効率化され、顧客満足度が上がる、といわれたら導入を検討するのではないでしょうか。
社内の業務支援システムを管理しているIT担当者が、経営者に「当社もチャットボットを導入しましょう」と提案したくなり、経営者が「そうしよう」と言いたくなる話をします。


なぜそれほど良い話ばかりなのか

チャットボットはチャット(会話)ができるロボットのことで、業務支援システムの一種です。
生産性向上、コストダウン、カスタマーサポートの効率化、営業力強化、顧客満足度向上、データ分析が、システムを導入しただけで実現できる――。このようなうまい話を、普通は経営者は信じないと思います。
しかしチャットボットなら可能です。その理由を解説します。

「それ用」のチャットボットがあるから

もちろん1個のチャットボットで企業のあらゆる仕事を代行できるわけではありません。チャットボットには種類があり「それ用」のチャットボットが特定の仕事を代行します。
例えば「総務部の担当者が社員の問い合わせに回答する」仕事を代行するチャットボットを導入すれば、社員がスマホ画面に質問を入力するだけで、経費の精算方法や年末調整の締切日などを知ることができます。これで総務部の担当者の仕事が減るので、その分だけ生産性が向上します。

「何用」のチャットボットが必要か

企業がチャットボットを導入するときは、IT担当者はまず「当社は何用のチャットボットを必要としているのか」を検討したほうがよいでしょう。
例えば、この部署の生産性を向上させるためにチャットボットを購入する、この工程のコストを下げるためにチャットボットを使う、といったように考えていくわけです。

それではチャットボットが企業にもたらす良いことの話をしていきます。

生産性が向上する話

チャットボットに関する最初の良い話は、生産性が向上することです。チャットボットがどのように仕事の生産性を向上させ、どれくらい向上するのか解説します。

どのように向上させるのか

企業が、社内の問い合わせ対応チャットボットを導入すると生産性が向上します。
大企業は事業や部門を多数抱えていて、福利厚生のメニューが多種多様で、ルールや制度が複雑なので、1人の社員が全社のことを把握するのは事実上不可能です。
それで大企業は、社内に問い合わせ部門を置き、日々社員の質問に答えています。

仮に社員から毎月1,000件の質問が、問い合わせ部門に届いているとします。ひと月の稼働日が22日なら、問い合わせ部門の担当者は毎日45件(≒1,000件÷22日)の質問に答えなければなりません。
質問にすぐに答えられないと情報を集めないとならないので、1件の回答に平均20分要するとします。すると45件の質問に回答するのに900分(=15時間)必要になり、1人の1日の労働時間が8時間なら2人必要になります。

●ひと月1,000件の問い合わせ÷ひと月22日稼働≒1日45件の問い合わせ
●1日45回回答×1件20分=1日の回答時間900分=15時間
●1日15時間回答≒2人×1日の労働時間8時間

社員の質問に回答するチャットボットを導入すれば、問い合わせ部門の担当者の仕事を大幅に減らすことができ生産性が向上します。

簡単に生産性が2倍になる

問い合わせ部門にチャットボットを導入すれば、生産性は簡単に2倍になります。
問い合わせ部門の担当者が回答したことを、チャットボットに覚え込ませます。そうすれば担当者が社員のある質問に1回回答したら、次に別の社員が同じ質問をしてきたらチャットボットに回答させることができます。
すると一定期間をすぎると、チャットボットはよくある質問にすべて回答できるようになるので、担当者はそれに回答しなくて済みます。年末調整に関する質問や、経費精算の質問などは、毎年、毎月、多数の社員が質問しますが、この種の定型質問は担当者の手から離れます。
よくある質問や定型質問に担当者が回答しなくてよくなれば、担当者を1人減らせるかもしれません。
生産性は「生産量÷担当者の人数」で算出するので、担当者の人数が2人から1人になれば生産性は2倍になります。

コストダウンできる話

社内問い合わせ対応チャットボットは、コストダウン効果も生みます。

どのようにコストダウンするのか

社内問い合わせ対応チャットボットがコストダウン効果を生む仕組みはシンプルで、質問を受ける人と、回答に必要な情報を探す人と、回答する人が不要になるので人件費が浮きます。
社内問い合わせ対応チャットボットと業務支援システムを連動させるとコストダウン効果はさらに高まります。
例えば、開発担当者がチャットボットに資材の調達方法を尋ねたら、業務支援システムが連動して資材を発注できるようにします。この仕組みを構築できれば、開発担当者が自分で資材を調達できるので、資材調達担当者が不要になりやはり人件費を減らすことができます。

数億円を浮かすことができる

企業の3つの経営資源、ヒト・モノ・カネのうち最も調達コストがかかるのは人です。モノは一度代金を支払えば数十年にわたって無料で使い続けることができますし、カネの調達コストも年利で数%程度でしょう。
ところが人の調達コスト(=雇用コスト)は、毎月の給与やボーナスに加えて、医療保険や年金などの社会保険料コスト、採用コスト、教育コスト、退職コストなどがかかるので、簡単に億円規模に達します。
つまり1人分の仕事を丸々チャットボットに任せることができれば、数十年かけて億円規模のコストダウンができるのです。

カスタマーサポートを効率化できる話

企業が顧客や消費者から商品の注文を受けたり、質問に回答したりすることをカスタマーサポートといいますが、チャットボットはこの仕事が得意です。

どのように効率化するのか

カタログ販売の企業がカスタマーセンターに人のオペレーターしか置いていないと、オペレーターの稼働時間しか注文を受け付けることができません。
しかし注文受付チャットボットを導入すると、24時間365日注文を受け付けることができるので、販売量は格段に増えるでしょう。
顧客が夜中の2時に、眠れないために暇つぶしにカタログをペラペラめくっていたら、突如欲しい商品が目に入ったとします。カスタマーセンターがやっていなかったらその顧客は注文できず、そして翌朝になったら「やっぱり要らないな」と思ってしまうかもしれません。
しかし注文受付チャットボットがあれば、夜中の2時の注文も獲得できます。チャットボットがあればビジネスチャンスを確実につかむことができます。

どれくらい効率化できるのか

カタログ販売の企業やテレビショッピングの会社では、カタログを顧客に発送した直後やテレビCMを流した直後に注文が殺到し、その後徐々に注文数が落ちるという経過をたどります。
人のオペレーターだけのカスタマーセンターでは、短期間・短時間だけオペレーターを増やすことが難しいので、どうしても注文の取りこぼしが発生します。
注文受付チャットボットがあれば注文の取りこぼしを減らすことができるので、その分効率化できることになります。

営業力を強化できる話

営業サポート・チャットボットを導入すると、営業担当者の営業力が向上します。特に新人営業担当者は短期間でパフォーマンスを発揮できるようになるでしょう。

どのように営業力を強化するのか

取り扱う商品・サービスの種類が多い企業や、新しい商品・サービスを頻繁に出す企業では、営業担当者が商品・サービス知識を獲得するのに苦労します。
それでもベテラン営業担当者は新商品・サービスについてのみ知ればよいのですが、新人営業担当者はおびただしい数の既存商品・サービスの知識を獲得しながら新商品・サービスについて学んでいかなければなりません。
営業サポート・チャットボットがあれば営業担当者は、顧客からどのような質問を受けてもパソコンを操作するだけで回答できます。チャットボットがこっそり営業担当者に答えを耳打ちしてくれるわけです。

どれくらい強化されるのか

企業が営業サポート・チャットボットを導入すれば、新人営業担当者の営業力はベテラン営業担当者に近づくでしょう。
新人営業担当者は仕事で困ったとき、すぐにチャットボットに教わることができます。チャットボットは瞬時に商品・サービスの種類や価格、仕様書、操作マニュアル、プレゼン資料、営業トーク集などを提示してくれるからです。
新人営業担当者が営業サポート・チャットボットをインストールしたパソコンを携行すれば、ベテラン営業担当者に同行してもらっているようなものなので、取引先に1人で向かって商談することができます。

顧客満足度を高める話

顧客からの質問数が多く、また、質問内容が多岐にわたる企業は、チャットボットを導入すると顧客満足度を高められるでしょう。
例えばクレジットカードの利用者は多くのことを知りたがる傾向があるので、クレジットカード会社がチャットボットを導入すると顧客の利便性が向上します。

どうやって顧客を満足させるのか

クレジットカード・サービスでは、利用者の大事なお金を扱います。クレジットカードで支払いをする人は、使用するたびに自分の銀行口座の残高が減ります。小売店はクレジットカード・サービスを経由して売り上げたお金を手に入れます。
これらの利用者たちは頻繁にクレジットカード会社に問い合わせをしたくなります。しかも問い合わせ項目は請求額、売上金、利用可能額、ポイント、引き落とし口座の残高、引き落とし日など多岐にわたります。
クレジットカード会社が利用者対応チャットボットを導入すると、利用者はいつでも何回でも、しかも気兼ねなく照会できるので利便性が増すわけです。

顧客はどれくらい満足するのか

企業がマーケティング目的でキャンペーンやイベントを開催すると、顧客や消費者などからの問い合わせが急増します。企業が顧客対応チャットボットにキャンペーン情報を覚えさせれば、その問い合わせに対応できます。顧客などはキャンペーンやイベントを確実に経験できるようになり、得します。
また、顧客対応チャットボットに寄せられた質問を分析すれば、顧客ニーズがみえてきます。顧客ニーズを満たす商品・サービスを開発できれば顧客を喜ばせることができます。

データ分析ができる話

チャットボットはデジタル技術であるため、データ分析が得意です。企業がチャットボットを導入すると、データ・ドリブンな経営ができるようになるでしょう。

データ・ドリブン経営の有用性

データ・ドリブン経営とは、経営者が意思決定をデータに基づいて行う経営アプローチです。適切なデータを大量に集めて分析できれば、データ・ドリブン経営のほうが経験や勘に頼る経営より成功確率が高くなるでしょう。

どのようにデータ分析するのか

データ・ドリブン経営を成功に導くには大量のデータを確実に分析していく必要があり、それにはチャットボットがうってつけです。

人のオペレーターが対応するカスタマーセンターしかない企業は、消費者からの質問も、オペレーターの回答も、これをコンピュータで解析するためにアナログ・データをデジタル・データに変換しなければなりません。これでは手間がかかりすぎてしまい大量のデータを集めることができません。
しかしチャットボットは消費者からの質問もオペレーターの回答もすぐに文字データ(デジタル・データ)にできるので、コンピュータですぐに解析できます。大量にデータを集められるうえに、正確に分析できます。

チャットボットが集める情報は、質問と回答以外にも、利用数、解決率、満足度、サイトへの移行数、コンバージョン率、質問が集中するカテゴリー、曜日や日付ごとの問い合わせ数の推移などがあります。
これらのデータは営業戦略にも販売戦略にも広告戦略にもマーケティング戦略にも、開発のための資料にも使うことができます。

まとめ~導入ハードルは低い、始めたいときが始めどき

企業がチャットボットを導入したくなる話を集めてみました。導入したくなっていただけたでしょうか。
企業のチャットボットの導入は、百利あって一害なし、です。チャットボットは必ず社員の誰かの仕事を引き受けることができるからです。しかも24時間365日その仕事を続けます。
あえて欠点を挙げなら導入コストがありますが、しかし最近は格安のチャットボットも販売されていて導入ハードルは格段に下がりました。
企業がチャットボットを始めるのはいつでしょうか。それは「始めたい」と思ったときです。


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