<土木屋目線で東京の建築をめぐる>①ル・コルビュジエと芸術の町・上野へ
ゴールデンウィークの長いお休みの中で、少しやりたいことがあり、都心へ。そのやりたいことは、「建築家関係の美術館の企画展に行くこと」でした。美術館めぐりは、これまでの自分自身の辞書の中にはあまり無く、正直なところ、小中学生の遠足で美術館に足を運んだ以外は、ほとんど絵画鑑賞に興味は皆無で、美術館に行こうという気持ちは全くと言ってもいいほどありませんでした。今回はたまたま、行きたい企画展が重なったため、その世界にそろりと一歩を踏み入れたいと思います。とはいえ、街歩きが好きな人なので、なんだかんだと街歩きも楽しんだので、その模様をお伝えします(笑)。
■芸術の町・上野へ
まずは久しぶりに上野に来たのであれば、ここに来なくちゃ、ということで、中央改札の前にやって来ました。今は始発列車も激減しましたが、ターミナル駅らしい風格漂う場所、大好きです。
ここは、昭和7年に建てられた、鉄道建築の有名作品です。施工は、鹿島建設。
この橋は台東区道としての橋のようです。
JR上野駅の公園口改札。上野公園の玄関口にあります。昔は駅前にいつも渋滞する道路の横断歩道があった気がしましたが、道路が無くなり、スッキリした感じに生まれ変わりました。2020年にリニューアルしました。
■JR上野駅公園口改札移設時のHP
https://www.jreast.co.jp/press/2019/tokyo/20200220_to01.pdf
上野駅のすぐ隣にある、東京文化会館。華やかなエントランスが、観劇に向かう人々の高揚感を誘います。この建物も、前川國男さんという、日本を代表する建築家の作品です。前川國男さんは、お隣の今日の目的地、国立西洋美術館を設計したル・コルビュジエの弟子だった方です。施工もお隣の美術館と同じ、清水建設が行い、1961年に出来上がった建物です。
■いよいよ、国立西洋美術館へ
そして、国立西洋美術館に到着。この美術館、東京23区内に唯一の、世界文化遺産の構成資産です。
この建物は、1959年に完成した美術館です。戦前に川崎重工業の初代社長に就任した松方幸次郎が、欧州で収集した美術品。第二次世界大戦にフランスにあった美術品は、フランス政府に没収されましたが、戦後に日仏友好のために返還され、「松方コレクション」として日本政府がこれらを公開するために建てられたのが、この国立西洋美術館です。入館料が500円であるのは、破格の安さです。
世界遺産に登録された、世界的建築家、ル・コルビュジエが設計した日本国内唯一の作品。その弟子である前川國男、坂倉準三、吉坂隆正という日本人の有名建築家3名が手伝ったことでも知られる建物です。施工は清水建設です。美術館めぐりのはずが、建物めぐりになっています(笑)。
美術も素晴らしいですが、やはりこの建物の存在が、美しい芸術作品を引き立ててくれます。世界遺産に登録されたことも納得できる建築です。
モネの1902年頃のの絵画。開館初期の、松方コレクションの一部として収蔵されている作品です。テムズ川に架かる橋の霧の風景が、モネはお気に入りだったようで、何枚か作品を残しているようです。
モネやルノワールなどの作品と、世界遺産の建物が、わずかワンコインで見られるこの場所。もっと早く知っておけばよかったと思える素晴らしい場所です。
■そして、今日の目的の企画展へ
ここまでで、本当におなか一杯くらい芸術作品を眺めましたが(笑)、ここからが目的の企画展。
この企画展は、国立西洋美術館が世界遺産登録をきっかけに、開館当時の姿に戻す改修工事のためにしばらく閉鎖されていたのを、再び再開したことを記念する展覧会です。
コルビュジエは、モデュロールと呼ばれる、黄金比を意識したデザインで有名です。この作品も、人間のプロポーションの黄金比を意識して書いているのでしょうか。
このタペストリー、新宿にあった頃のギャルリー・タイセイで見たことがあります。かなり久しぶりの再会です(笑)。その昔は、コルビュジエって、発音しにくい名前の人というイメージしかなかったのですが、ようやくすごい人なのだと再実感しました。
素晴らしい建物の中に素晴らしい芸術作品があると、ほとんど絵心の無く、絵画鑑賞は初心者である私のような人にも、その素晴らしさが何となく伝わってくる感じがするものです。
国立西洋美術館、とても美しい空間でした。ル・コルビュジエの建築を満喫し、美術にも触れられる、とても贅沢な空間でした。ワンコインは本当にお値打ちです。
■地下鉄上野駅へ
最後に訪れた、銀座線上野駅は、日本で最初に開業した地下鉄の一部として昭和2年に開業した駅です。鉄構框構造で作られた地下駅は、2008年に土木学会の選奨土木遺産に認定されています。
■終わりに
街歩き好きの土木屋が、思い立って出かけた上野の美術館に建築家を訪ねてのお出かけ。名建築に土木遺産を鑑賞しながら、ル・コルビュジエとその弟子たちが残した芸術的な建築作品と、その中に広がるアートな空間を堪能することができました。おそらく絵画を鑑賞している人とはちょっと違う視点で美術館を眺めていたかもしれませんが、そういう楽しみ方もできるのが、この場所の楽しさなのではないかと思いました。
この日の美術館めぐりはおしまい・・・ではなく、実はさらに「本題」というべきもう一つの美術館にハシゴしています(笑)。その模様は、次回に続きます。