【南大沢土木構造物めぐり】No.94 ニュータウン内にある「見えないダム」を探して
多摩ニュータウン内に、実はダムがあります。え、本当?
実は本当にあるようなのですが、目に見えないので、本当に水が溜まっているかもよくわかりません。なぜなら、「地下ダム」という地中にあるダム施設なので、目にすることができないからです。今回はこの施設をご紹介したいと思います。
■「地下ダム」とは・・・
ダムとは、主に山の中にある川をせき止めて、水を貯めておく施設です。黒部ダムなど、巨大なダムはスケールも大きく、観光名所になっているところも少なくありません。
ただ、「地下ダム」という構造物は、ひょっとしたらあまり聞いたことが無いという人が多いかもしれませんが、これは、地下に大きな壁(遮水壁)を作り、地下水を溜めておく施設、なのです。地下ダムは、国内では沖縄など大きな河川の発達していない島において、地下水をせき止めて利用するような取り組みがされています。多摩ニュータウンの地下ダムも、これと同じ機構のものですが、沖縄などのものよりはもっと小規模な施設になります。
■どこにあるかというと・・
地下ダムは、どこにあるかと言うと、長池公園から流れる、「せせらぎ緑道」の途中にあります。緑道の真ん中あたりから少し逸れたところの、別所公園の中にあります。
せせらぎ緑道全体の散策は、過去の記事にもアップしているので、それをご覧ください。住宅地の中の緑道としては、とても歩くのが楽しい場所です。
■地下ダムの計画と目的
地下ダムの目的は、ずばり、「せせらぎ緑道のを流れる水量を確保するため、公園に降った雨水を地下に溜めておく」ためです。
その計画が記されている文献が、一般社団法人 日本治山治水協会が発刊する、「水利科学」という雑誌に掲載されています。
この雑誌の、第42巻6号(1999年12月号)の、
多摩ニュータウンB-4地区「ライブ長池」せせらぎ再生計画と水循環再生システムの構築過程に関する一考察(Ⅱ)(松下 潤, 郷緒 和夫, 重田 猛:住宅都市整備公団)という記事に、掲載されています。
内容はとても専門的なので、ざっくり解説します(笑)。
多摩ニュータウンの中の、「ライブ長池地区」(長池公園~せせらぎ緑道~京王堀之内駅にかけての地区)の開発の一環として整備された。
昭和50年代には、ここを宅地開発する際、せせらぎの水量が枯れないように対策する計画が定められていた。
長池公園の築池や、松木公園などの地下にある貯留施設、各団地の地下水処理施設と並び、別所公園に地下水貯留用の地下ダムを作った。
別所公園の地中にあるダムは、上流側の団地などの雨水も地下に貯留することができる施設で、せせらぎには、ソーラーパネルの電源によるポンプ施設を用いて水を流す。
このような施設のようです。地中ダムの構造は、図の通りです。
これはこの目で確かめないと、と考え、せせらぎ緑道を訪れました。
■長池公園~せせらぎ緑道を訪れる
■別所公園の地下ダムを探索する
せせらぎ橋を渡ったら、すぐ右側の丘の上に別所公園があります。ここに地下ダムがあるようですが、見てみましょう。
地下ダムがあるとされる、別所公園の芝生広場。「地下ダムがあります」と解説して注意してみないと、何もわからないです。地下ダムがあると思って注意してみていても、はっきりとどんな施設なのかはよくわからないと思います。
別所公園の片隅に、ソーラーパネルが立っている場所を見つけました。この太陽電池でポンプを動かし、地下水を流しているようですが、ソーラーパネルの一部も樹木の成長により日陰になっている場所にあったりもします。今はどこまで稼働しているのでしょうか。先ほどの文献には、下記のように書かれており、メンテナンスフリーで、自然に稼働するポンプのように記載されていますが、今も健全に動いているのでしょうか。
■終わりに
せせらぎ緑道に設置された地中ダムや雨水貯留施設。このおかげで、せせらぎには晴天時にも水が流れ、潤いある緑地が維持されているように思えますが、この裏には宅地開発当初からの綿密な計画があったことを知り、とても興味深いことだと思いました。また、その施設が設計通りの性能を維持できているか、検証して今後の管理に活かすことなどをしていく必要性を感じました。
地下ダムなので、ひょっとしたら遮水壁の漏水や、集水する部分の帯水層の目詰まりなどで、思ったような水がせせらぎに供給できていないことなども考えられると思います。このあたりも検証することが必要なのかもしれません。