【読書感想文】読むべきは「あなた」か、それとも「アホ」か。『頭にきてもアホとは戦うな!』
『頭にきてもアホとは戦うな!』田村耕太郎
タイトルからして強烈なこの一冊。
サブタイトルには“人間関係を思い通りにし、最高のパフォーマンスを実現する方法”ともあります。
内容としては、割とよくある(?)生き抜くための自分の心の在り方と、著者の実体験を踏まえた具体例といったところ。断定的というか、語気が強い印象です。
そして驚くなかれ、「はじめに」の数ページだけでアホというワードが十四回ほど出てきます。アホのゲシュタルト崩壊。
さて「アホ」とは戦うな、とありますが、この本でいうところのアホとはどんな奴なのか。
人間生きていれば「この野郎……!」と腹が立つ相手の一人や二人、心当たりがあるでしょう。うちの母親も、私と同じ年代の同僚に対し「最近の若者は……」と言わんばかりの愚痴がよく飛び出してきます。
こちらのよかれと思った行動を、邪魔する人。
こちらがしてあげたことに、感謝もしない人。
何故か知らないけど勝手にこっちを敵視して、挨拶もしない人。
わけのわからない理屈で、足を引っ張ってくる人。
他にも、とにかく合わないとか、腹が立つとか、突き詰めていけば多種多様のアホがいることかと思います。
この本にはそんなアホと戦わず、賢く生きるにはどういう自分でいればいいのか。
そんなテクニックがこの本には書かれているのです……が。
この本を読んで、アホの解像度が上がっていった先で、私は思うのです。
果たして自分は、周りの人をアホ呼ばわりできるほど賢い人間なのか、と。
アホを相手にしない、賢い生き方が本当にできているのか。ちょっとそんなことを考えながら、本の感想をまとめたいと思います。
1.サンクコストとタイムコスト
①サンクコストとは
本の中に、サンクコストとタイムコストという考え方が出てきます。
サンクコスト(=sunk cost)は、既に投資したじぎょうから撤退しても回収できないコストのこと。証券用語だそうですが、たとえメリットがこれ以上なくても、過去のコストに固執してしまい、同じ事を繰り返してさらに無駄なコストを生み出してしまう、という悪循環は日常にもあるかと思います。
普段の買い物でも、せっかく購入したからには自分には合わなくとも使わなきゃ、とか、たとえ使わないとしてもとっておこう、とか、そういった気持ちになることはあるでしょう。合わないものを使い続けても気分が上がらなかったり、使わずとっておいても無駄に場所を取り続けるとか、メリットがないのは明白ですよね。
この「せっかく~~したんだから」が、サンクコストの正体です。
例えばあなたの周りの嫌なやつ。通称、アホ。
アホはこちらにとって無駄なことしかしない。本人にとっては合理的なのかも知れないけれど、こちらにとっては苛立ったり、非合理でどうしようもないことだったりします。今日はこんな腹正しいことがあった。これは以前にも似たようなことをしていた。そういえばあのときもこんなことをしていて……。
こんな風にアホのことを思い返して、あれこれ苛立ちを蒸し返す。果たしてこれは賢い生き方なのでしょうか。
②タイムコストとは
サンクコスト=無駄、という認識に納得いったら、重視すべきはタイムコストです。
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