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深夜2時。何かに起こされる。

寝苦しい夏の夜。何かの気配で目が覚めた。
気配、というより声?誰かがどこかで鳴いている。

んなぁぁ、んごぉぉ・・・
んぁぁぁ・・・というダミ声だ。
文字にすればざっとこんな感じだが
きっと伝わらないな、と書きながら思っている。

さて、その奇妙な声はどこから聞こえてくるのだろうか?
わりと近い。ネコでもなく、鳥でもなさそうだ。
でもいつかは聞こえなくなるだろうし気にしないでおこう
とは思ったが、とにかく本当に不快な声がもう5分以上続いている。
深夜の5分は長い。

私はベッドから起き上がり外の様子を見てみようと西側の窓を開けた。
その時、1メートル先に4つの光る何かを見た。というか
4つの光る何かと目が合った。

私が見たもの、それは

「夜の営み真っ最中のアナグマカップル」

だった。

変な鳴き声の出どころはイチャイチャしているアナグマカップル。
そしてその最中の二匹と目が合ってしまったのだ。

私の脳内は「ぼーくらはみんな生きているー」というフレーズがこだまし、アナグマの営みを邪魔してなんかごめん。とさえ思った。

しかし見られるとできないのか二匹とも微動だにしない。
私、睡眠中だからどこか別の場所で営んでくれない?
とアナグマに話しかけてみるも

「いんや、あんたがジャマやねん」

とでも言いたげな顔をしている。二匹で。

仕方ない。撤退するかと一旦はベッドに戻ったものの
どうしても、んなぁぁぁ!とか、んんゴォォ!!の声が
気になって眠れない。私はまたベッドから起きて

あのねぇ、どこか別のぉ、誰にも邪魔されないところでやってくれない?
と優しく話しかけたが無視された。
今度は私を見ようともせず営みに熱中している。

何かちょっとカチンときたので、台所で2リットルのペットボトルに水を入れて窓からヤーーーー!!とぶちまけてやった。
(ここで断っておくが、アナグマには直接かけてはいない)

二匹はヒィ!!!と言いながら夜の闇に消えていった。
よし。寝よう

しかし私の期待も虚しく二分もしないうちにまたあの声がした。

んなぁアア!!

だからさ、よそでやってくれないかな?なぜ元の場所に戻ってくる?

再び2リットルのペットボトルに水を入れて
窓からヤーーーとぶちまける。
アナグマ逃げる。
私寝る。あの声がする。

繰り返すこと三回。そして私の堪忍袋はビリビリにやぶれた。

私はサンダルを履いて営みの現場へ行き、とうとう
直接二匹に水をかけ、よそでやってくれ!と怒鳴った。

アナグマカップルはチッ!という顔をして

ココジャ、ユックリ、イトナメナイ。

と言ったかどうかはわからないが、二匹で顔を見合わせ
今度こそ本当に夜の闇に消えた。

それから私はようやく眠りにつくことができたのだが、

あの二匹の子どもであろう小さなアナグマきょうだいに
「このひきょうものめがぁっっ!!」と罵られながら
庭のホースで水をびしょんびしょんにかけられる夢をみた。

どうであれ、人さまの営みを邪魔してはならぬ。

そう誰かに言われた気がした。


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