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映画レビュー

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見た映画の感想です。ミニシアター系が中心です。
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2023年11月の記事一覧

『ケイコ 目を澄ませて』バリアフリー版を見る

 来年日本公開される濱口竜介監督の新作『悪は存在しない』のジャパンプレミアが11月26日、広島国際映画祭2023の4日目の招待上映として開催されるのを知り、同日、広島・基町のNTTクレドホールを訪ねた。  同作は14時からで、午前中には三宅唱監督の傑作『ケイコ 目を澄ませて』(2022)が上映されるということなので、朝から会場入りして2本見ることにした。  10時半、『ケイコ』の上映直前、本上映がバリアフリー上映である旨のアナウンスがあった。てっきり日本語字幕の付いている

北野武監督『首』レビュー/自身のフィルモグラフィーを批評する徹底した茶化し

 昨今、年老いた巨匠が自らのキャリアを総括する作品を作る例が多い。宮崎駿『君たちはどう生きるか』、スピルバーグ『フェイブルマンズ』などである。  北野武ももう後期高齢者である。前作『アウトレイジ最終章』(2017)は、枯れて枯れて最後には、やっぱり自裁したいのか……という、北野映画ファンにとっても悲しいものだっただけに、新作がキャリアの総括になったらどうしようという不安があった。  不安は解消された。たけしは未だ現役である。  とにかく、過去の自らの作品の引用がとても多

濱口竜介監督、仙台でカサヴェテスを語る

 『ドライブ・マイ・カー』(2021)『偶然と想像』(同)などで知られる映画監督濱口竜介さんが講師を務める映画講座「映画のみかた モーションとエモーション」(幕の人主催)が11月11、12両日に仙台であり、受講してきました。  午前に映画が1本を上映し、休憩を挟んで、午後は濱口さんが登場し、上映作の各シーンを確認しながら、その作品の何が秀でているのかを語るという贅沢な企画です。  11日の作品は、濱口さんが最も影響を受けた映画作家と公言しているジョン・カサヴェテスの『こわ