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アッパレなアメリカ・ウイスキー業界の法制化の早さ! 《バーボンのスコッチ化③》

■前回までのまとめ

・バーボンは法的に
「内面を焦がしたオークの新樽で必ず熟成」
「原材料はコーン=51%以上を使用」
というレギュレーションが法的に決まっている。

・しかし、スコッチ業界をはじめ「カスク・フィニッシュ」という様々な木樽での熟成が流行っているし、「麦芽100%のシングルモルト」の人気も高まっている。

・バーボン業界でも「カスク・フィニッシュさせた商品(代表例:エンジェルズ・エンヴィ)」や、「シングルモルトの商品(代表例:ジャックダニエル・シングルモルト)」が、各企業から発売されるに至っている。

今回はこの続きからです!


■素早いアメリカン・ウイスキー業界

アッパレなのは、アメリカン・ウイスキー業界の法整備の動きの早さです。

2024年12月、アメリカン・ウイスキーにおけるシングルモルトの定義が発表され、2025年1月に施行されました。

さすが、かつてはバーボンを「オークの新樽のみ」に法規定して、1度バーボンの熟成で使った木樽を世界中のウイスキーメーカーに輸出しまくっているアメリカン・ウイスキー業界!

世界の情勢に合わせた、このアメリカン・シングルモルトの法整備の動きの早さはアッパレですね!

逆に日本における「ジャパニーズウイスキー」の定義は、日本洋酒酒造組合の会員企業内のルールという範疇であり、法律には規定されていません。

「商品のブランディング」の視点=意識では、日本のウイスキー業界も見習うべき点があると思います!


■アメリカン・シングルモルトの定義

◇アメリカン・シングルモルトの定義
※アメリカ連邦アルコール・タバコ税貿易局(TTB)が制定

① 100%モルト化された大麦を使用すること
② 単一の蒸溜所で蒸溜されていること
③ アメリカ国内で糖化、蒸溜、熟成されていること
④ 容量700L以下のオーク樽で熟成されていること
(新樽、リフィル樽=中古樽、内面の焦がしの有無を問わず、容量が700L以下のオーク樽)
⑤ 蒸溜度数が160プルーフ以下であること(80%以下)
⑥ 最低80プルーフ(アルコール度数40%以上)で瓶詰め

アメリカン・シングルモルト・ウイスキー・コミッション

上記の6つの規定が、アメリカン・シングルモルトの定義のベースとなります。

(他にも、2年以上熟成させたらストレート・アメリカン・シングルモルト・ウイスキーと名乗れるとか、添加物についての規定もありますが、今回は省略します。)


■アメリカン・シングルモルトの定義を2分類

この6つの規定をその目的から、2つに分類してみたいと思います。

《シングルモルトたりうるための定義》

① 100%モルト化された大麦を使用すること
② 単一の蒸溜所で蒸溜されていること

《アメリカン・ウイスキーたりうるための定義》

③ アメリカ国内で糖化、蒸溜、熟成されていること
④ 容量700L以下のオーク樽で熟成されていること
(新樽、リフィル樽=中古樽、内面の焦がしの有無を問わず、容量が700L以下のオーク樽)
⑤ 蒸溜度数が160プルーフ以下であること(80%以下)
⑥ 最低80プルーフ(アルコール度数40%以上)で瓶詰め


■アメリカン・ウイスキーたりうるための定義

基本的にはバーボンの定義とほぼ同じです。
バーボンと異なるのは、「木樽熟成」の規定です。

◇バーボンの木樽熟成の規定
内側を焦がしたオークの「新樽」で熟成
 ・使用できる樽は新樽に限定
 ・樽サイズの指定なし

◇アメリカン・シングルモルトの木樽熟成の規定
容量700L以下のオーク樽で熟成
 ・新樽規定なし。内面の焦がし(チャーといいます)の規定なし。
 ・樽サイズの規定あり

樽サイズの700L以下は「スコッチ/アイリッシュ/カナディアン/ジャパニーズ」の規定と一緒のサイズです。
バーボンには樽サイズの規定がなかったので、今回はそれを他国と同様に規定した形となります。


■アメリカン・シングルモルトの木樽熟成

アメリカン・シングルモルトの木樽熟成で、注目すべきポイントは2つです。

① 新樽でなくてもよい
  リフィルの樽が使用できる

② オーク材の指定がある
  あくまでオークという木材の指定あり!

ちなみに、オーク材という木樽の木材の指定があるのは、5大ウイスキーの中では「スコッチ/アメリカン」の2ケ国です。

一方で「アイリッシュ/カナディアン/ジャパニーズ」は、木樽熟成させるという規定はありますが、木材についての指定はありません。

木材の指定が無い方が、原酒の多様性は広がると思います。


■アメリカン・シングルモルトたりうるための定義

次回に続きます!

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