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[ドラマ]「夢千代日記」と裏日本

 先月、NHKBSで吉永小百合主演の「夢千代日記」をまとめて視聴した。吉永小百合演ずる芸者夢千代は、山陰の小さな温泉町ではる家という置き屋を営みながら自らも芸者をしている。実は夢千代は、広島で母が原爆に被爆した際、胎内被爆しておりあと3年ほどの命という設定。

 はる家の芸者達は皆何かを抱えて生きており、この温泉町を訪れた人々は彼女らと交わることで動かされそして癒されていく。

 お話の中で、裏日本の人間の表日本へ抱く憧れに似た思いが語らている。この裏日本という言い方、今は差別的言い回しとしてタブーとされあまり使われないが、ここで描かれる昭和の山陰の世界ではあたり前に使われている。

 例えば、以前はる家から山陽の大きな商家に嫁いだ芸者が山陽側に行って淡路島を見て
「あれは外国ですか?」と言ったエピソード。
片桐夕子演ずる情夫を殺してしまう元芸者が言う
「向こう側は冬も晴れてる。毎日晴れてる。こんなにも違うものかと嬉しかった。」
というセリフ。
夢千代の母が山陽の明るい太陽に誘われて瀬戸内側へ行ったが、もっと強い光に体をやられてしまったと語るところ。
皆、表日本の光を浴びようと憧れる様を描いていて、裏日本側の表日本への思いが伝わる。

 私ごとではあるが、昨年春、山陰地方を何日かかけて旅したが、晴れた日がなかった。たまたま天気が悪かったのかと思い、タクシーの運転手さんに尋ねてみると、年間でも山陰は晴れた日が少ないとのこと。旅から帰り毎日の天気予報を見ていると、確かに山陰は晴れた日が少ない。逆に関東は晴れた日が多い。昔の人が裏日本と表日本と言った気持ちが分かった気がした。


 但し、裏日本で生まれ育ったからと言って人柄が冷たいかと言うとそれは違う。このお話に出て来る裏日本の温泉町の人々は皆夢千代筆頭に心が優しく、表日本から来た人々は皆心癒されていく。この町は作者が作った癒しの温泉地そのものであるようだ。

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