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heldio 史の転換点となった「英語史ライヴ2024」

2024年9月8日(日)、Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて公開収録の12時間生配信企画「英語史ライヴ2024」が、khelf(慶應英語史フォーラム)主催により慶應義塾大学三田キャンパスで開催されました。

前代未聞の英語史イベントは、たいへんな盛会となりました。収録会場には早朝から夕方まで全体として60~70名の参加者が集まり、生配信への立ち会いのみならず会場での様々な催しに参加されました。途中ネットワークトラブルに見舞われる一幕もありましたが、予定していた番組はおおよそ無事に配信することができました。

会場にて参加されたプレミアム限定配信「英語史の輪 (helwa) 」リスナー(ヘルメイト)の方々、研究者の先生方、学生の皆さんに、心より感謝を申し上げます。また、12時間の生配信を全部あるいは一部お聴きいただいた heldio リスナーの皆様にも、御礼を申し上げます。さらに、今回のライヴイベントに協賛いただいた9社の出版社さまには、たくさんの書籍を景品・リスナープレゼントのためにご提供いただきまして、ありがとうございます。改めて五十音順でお名前を挙げます。

「英語史ライヴ2024」以前

heldio は2021年6月2日にスタートし、これまで3年5ヶ月ほど続いてきた Voicy チャンネルですが、今回の「英語史ライヴ2024」は heldio 史上もっとも重要かつ画期的なイベントとなりました。以下、ライヴ以前と以後の heldio 史を振り返ってみます。

パーソナリティの立場から heldio の歴史を振り返ると、常に目の前にリスナーの存在があったように思われます。チャンネル開設後の1年~1年半ほどのあいだ、大多数の heldio リスナーは "listen only" の受け身リスナーとして配信回をお聴きになっていただろうと思います。しかし、パーソナリティにとっては、リスナーは目に見えないながらも、いつでも影響力のある存在でした(cf. 「#1061. 聞き手ベースの言語学 --- 北澤茉奈さんとオーディエンス・デザインを導入します」を参照)。通常の配信回のほか、研究者や khelf メンバーとの対談なども、温かく見守って(聴き守って)いただきました。

チャンネルが軌道に乗ってきた2年目、2022年の後半にかけて、リスナー参加型企画が少しずつ増えてきました。後にシリーズ化する「英語に関する素朴な疑問 千本ノック」に質問を投げていただいたり、常連名物コメンテーターが出現するなど、チャンネルへのリスナーの関与が目立つようになってきました。

2022年末から年明けにかけて、コアリスナーに背中を押していただく形で「英語史をお茶の間に」という大胆なモットーを掲げるようになりました(cf. 「#580. 2023年は「英語史をお茶の間に」に向けて本格的に動き出します」)。

また、各配信回へのコメント欄が盛り上がるよう、リスナーの皆さんにしきりに呼びかけるようにもなりました。この呼びかけに多くのコアリスナーが応えてくださり、その後の数ヶ月で、コメント欄は信じられないほど賑やかになりました。「#821. ニックネームを語ろう --- 9月3日(日) 19:00---20:00 の生放送のためにリスナーの皆さんへの呼びかけ」では、実に歴代最多のコメント数112件を記録したほどです。コメント投稿を通じて配信中・配信後に活発な議論が展開され、しばしばアカデミックなレベルで有用な、新たな話題や視点が飛び出すようにもなりました。リスナー同士の対話を通じて、知識の共有と深化が自然な形で行われるようになったのです。これは驚くべき現象です。

一方、「英語史クイズ」企画や「言語は○○のようだ」企画のようなリスナー参加型企画もますます多く展開されるようになってきました。研究者や学生との対談回も増え、支持をいただくようになりました。このような企画は、英語史という専門性の高いテーマを、より身近で楽しいものとして感じていただく機会となっているのではないかと思っています。

heldio 開設から2年が経った2023年6月2日には、プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa) 」の配信が週2回で始まりました(のちに週3回となりました)。helwa のチャンネル開設時には予想を上回る40名ほどのリスナーが集まってくださり、やがて自由な雰囲気でありながら結束力の高いコミュニティが育まれていくことになります。helwa リスナーはいつしか「ヘルメイト」と称されるようになりました。ヘルメイトとそのコミュニティは、heldio/helwa のチャンネル作りにも直接・間接に関わるようになり、新たなリスナーを引き寄せる役割を果たしてくれるようになりました。ただただ感謝。

ヘルメイトによる独自のhel活(英語史活動)も活発化してきました。コンテンツ配信プラットフォームの note をはじめとする各種の SNS を通じてのhel活は、heldio/helwa で取り上げられた内容を掘り下げたり、関連する新たな話題を提供する場として機能してきました。配信回の復習やまとめ、他の英語史系コンテンツの紹介、ヘルメイト間のオフ会での交流などに関する多種多様な情報がウェブ上に投稿され、それらが有機的に結びつき、helwa コミュニティの貴重なリソースとなってきました。

helwa オフ会開催の定期化も、コミュニティの熟成を示す出来事です。当初は不定期に開催されていたオフ会でしたが、2024年4月に「長崎オフ会」の大型企画が実現したことで弾みがつき、今では月一回の頻度での定期的な開催(於東京)が実現しています。helwa オフ会の生配信もシリーズ化しており、リスナーの皆さんに参加していただきやすい環境が整ってきています。

もう1点、heldio 開設3年の節目に、チャットツール Discord 上で「helville」という英語史コミュニティが設立されました。ヘルメイトと heldio 出演経験者が集う、閉じたオンラインコミュニティです。

heldio/helwa が英語史について公式に語り合える「表口」だとすれば、helville は24時間365日いつでも交流できる「裏口」です。helville では様々なチャンネルが立ち上がり、リスナー間の交流の機会がますます頻繁となりました。helville 上での『英語語源辞典』読書会の開催は、そのような交流の機会の1つです。

「英語史ライヴ2024」の開催

「英語史ライヴ2024」企画は、実は上記のように活発で創造力豊かなヘルメイトからの提案に端を発します。日頃のオンラインでの活動をリアルなイベントとして実現したいという想いが募り、heldio 出演経験者や khelf のメンバーと相談した上で、2024年の春に企画準備の狼煙が上げられました。その後の数か月の準備期間のあいだに、ライヴイベントの構想も徐々に具体化していきました。

ライヴを構成する各番組について様々な案が出されましたが、そのなかでもヘルメイトを制作に巻き込んだ「古英語LINEスタンプ」企画は、heldio/helwa リスナーによるhel活の高まりを象徴する試みとなりました。古英語スタンプのデザインから文言の選定まで、制作班の丁寧な活動が実り、予定通りライヴ当日にお披露目することができました(cf. 「#1227. 古英語LINEスタンプのお披露目 --- 「英語史ライヴ2024」より」)。

「英語史ライヴ2024」の直前になって、もう1つ注目すべき展開がありました。ヘルメイトたちによる自主的な「裏番組」企画の提案です。有志のヘルメイトがライヴ会場の控え室に集い、そこでヘルメイト同士の対談回を収録してしまおうという裏企画です。ライブ当日、パーソナリティの私は表番組の運営に付きっきりで、裏番組に参加する機会はありませんでしたが、ヘルメイトの皆さんはどうやら表番組そっちのけで (gærs) 裏番組収録を楽しまれていたようです。

もちろん当日会場に足を運ばれたヘルメイトの多くの方々には、表番組にも積極的に関わっていただきました。早朝6時半からの「#1201. 早朝の素朴な疑問「千本ノック」 with 小河舜さん --- 「英語史ライヴ2024」より」にギャラリーとして参加していただいたり、堀田研究室での「#1205. Baugh and Cable 第57節を対談精読実況生中継 --- 「英語史ライヴ2024」より」にもお立ち会いいただいたり。また人気シリーズ「#1219. 「はじめての古英語」第10弾 with 小河舜さん&まさにゃん --- 「英語史ライヴ2024」より」の開始コールには、素晴らしいノリで加わっていただきました。夕方の「英語史クイズ大会」も白熱した展開となり、おおいに盛り上がりました。

「英語史ライヴ2024」の終了後、同日夜の懇親会では、複数のヘルメイトより心温まるスピーチが披露されました。heldio/helwa との関わりや独自のhel活を振り返りつつ今後の展望を語る皆さんの言葉に、励ましをいただくとともに、感謝の念が込み上げました。その後の懇親会2次会でも話は尽きることなく、最高に楽しい交流が深夜まで続きました。

「英語史ライヴ2024」以後

こうしてライヴイベントは無事に終了しましたが、翌日から heldio/helwa/helville の日常が再開しました。

数日後、「英語史ライヴ2024」裏番組の収録音源を聴きました。その質の高さと内容のおもしろさは予想をはるかに超えており、実に驚かされました。ヘルメイトの皆さんの司会さばき、聴き手を飽きさせない話術、そして何よりも英語史や学び一般への深い関心が伝わる内容でした。その後、裏番組の各回は heldio 通常回にてアーカイヴ配信されています(例えば「#1237. 英語史でいちばん感動したことは何ですか? --- 「英語史ライヴ2024」裏番組より」)。

「英語史ライヴ2024」後、helville での活動がすこぶる活発化しています。イベントでの出会いがきっかけとなり、Discord helville では「ヌマる!英文法」や「お茶の間」といった熱いチャンネルが次々と立ち上がっています。また、note でのhel活を新たに始められるヘルメイトも増えており、より多様な視点から英語史関連記事が多く投稿されるようになってきました。ヘルメイトの方々も着実に増えてきています。

そして、hel活について最も特筆すべき展開が、有志のヘルメイトによる月刊誌 $${\textit{Helvillian}}$$ の制作企画です。英語史に関する研究ノート、学習記録、オフ会ルポなど、様々なhel活コンテンツが詰まった充実の月刊誌となる見込みで、2024年10月末にかけて創刊号が公開される予定と聞いています。いよいよコミュニティが成熟してきました。

さて、3年5ヶ月にわたる heldio 史 を振り返ってきました。改めて、そこには常にリスナーの皆さんの存在があったことを強調しておきたいと思います。リスナーの皆さんのご協力のもとで、heldio は単なるラジオチャンネルを超えた、自主的な学びと交流の場として成長を続けて来ることができました。感謝の念に堪えません。

heldio/helwa/helville では今後も定期的な収録会や様々なイベントを企画していく予定です。「英語史ライヴ2024」で示された可能性を、さらに大きく育て実現していければと考えています。引き続き、皆様のお力をお借りできればと思います。ご支援とご協力のほどよろしくお願いいたします。

最後に「英語史ライヴ2024」の2日後の heldio 配信回「#1199. 「英語史ライヴ2024」を応援していただいた皆様へ」もお聴きいただければ幸いです。


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