再開するという、よろこび
明日から6月。
緊急事態宣言が延長になって、もずーんとしていたが、6月1日から美術館や映画館は再会するとのことでとても嬉しい。閉館しているあいだ、いくつもの展覧会が会期を終え、見る機会を失ったからだ。あやしい絵展、行きたかったな。
コロナになってよかったこともある。
美術館が予約制になってゆとりを持って作品を見られるようになったことだ。
コロナの前は、人気の展示を見に行くとチケットを買うために並び、入場するまでに並び、入れてもものすごい人だかりで作品をなかなかゆっくり見られなかった。
わたしの人生で一番並んだ展覧会は
何年か前に上野の都美術館で行われた、伊藤若冲展だった。
人気すぎて毎日長蛇の列だとは聞いていたけれど、「いやいやそこまでじゃないでしょ」と、無謀にもよく晴れた気持ちのいい日差しが鬼のように突き刺してくる暑い日にチャレンジしてしまった。
オープンと同時に入ろうと30分前に美術館の前に到着するもすでに2時間半待ちの列ができていた。
一瞬こりゃだめだと諦めかけたが、こんな機会またあったとしても観に行ける保障はどこにもないと、覚悟を決めて列に並ぶことにした。
チケットはwebで買えるようだったので並んでる間に買えばいいと、チケット売り場の列の1時間は短縮できた。それでも2時間半…新幹線なら大阪に行けるよ。
1時間ほどは平気だった。そこからが辛かった。まず2時間半も外で並ぶ格好で来ていない。サンダルで足は痛い、日差しが強いの日傘を持ってない。のどもカラカラ。せめて飲み物を買って並べばよかった。トイレに行きたくならなかったのがせめてもの救いだったけど、並ぶのにだんだんと飽きてきた。
周りを見渡すと意外とお年寄りが多いがみんな元気に並んでいる。
前のかわいいおばあちゃんたちの会話に耳を側立ててみると一人は初めてで、もう一人のおばあちゃんはこれで6回目だと言っていた。え?6回!!?
「6回もこれに並んだの!?もはやマスターじゃん!おばあちゃん。」と後ろから尊敬していたが、いや、6回も見に来てるのにまだ見に来ようとするそのバイタリティがこの列を生み出しているんじゃないかと思った。都立や国立の美術館はシルバー特典などがありお年寄りが安くなったり無料で入れたりする日がある。それをフルに使って余生を楽しむ。行列もなんのその。おそるべし。
そんなかわいいおばあちゃんたちの会話を聞きながら、半分白目をむいてやりすごしなんとか入場できたのは3時間後だった…しかも内部は人間でパンパン。
作品を見に来たのか、人間を見に来たのか、分からなくなるくらいの人、人、人。
一番見てみたかった『動植綵絵』の巨大な30幅の作品で動物や魚、植物が緻密に描かれている。作品は素晴らしかったが、こちらはバーゲン会場ですか?と言いたくなるほどの押せや押せやで殺気すら感じた。四方八方からギューギュー押されながらもなんとか間近で全てを見終わった時には、真っ白に燃え尽きていた。
その後はふわりと作品を眺め、早々に美術館を後にした。
それ以外にも、怖い絵展に、ティムバートン展、縄文展にエジプト展と数々の大物人気展覧会に並んできた。
苦労すればするほど観てきた満足感みたいなものもあるが、やっぱり純粋に絵を楽しみたい。そう思うと今の予約制の人数制限はとっても良い。
大声で会話する人もいないし、ギューギュー押してくる人もいない。人と人との距離もとれて、絵を見てじっくりと感じることができる。
とても嬉しい鑑賞環境ができていると思った。
まだしばらく続くであろう、この並ばない予約システムを6月から充分に活用してアート鑑賞を楽しみたい。
何から観に行こうか。とってもワクワクする。
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