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医師の価値はコーラ1本分くらい

『私たちの国は日本よりも貧しいから。』


実習に行くたびに必ずと言っていいほど言われた言葉です。
ずっと嫌味なのかなと思っていました。
しかし、後日、私はブルガリアの真の貧しさと医師の地位の低さを目の当たりにする事になるのです。

ある日のこと。
一般内科の実習終了後に荷物をまとめていたら、内科指導医がずんずんと近づいてきて、『ねえ、これどう思う?』と1枚の紙きれを見せてきました。

指導医の手に握られている紙には大きく10 レバと書かれていました。
(ブルガリアはレバという独自通貨を使っていて、当時は1レバ=60円ほど)

私はその10レバと書かれた紙きれが、領収書なのか何かのチケットなのか、
私にはさっぱりわかりませんでした。

そんな私を見て指導医は私に答えを教えてくれました。

『これ私が当直5回やった分の特別手当てなのよ!!』
『しかもこれ食券なのよ!』
『2lv (日本円で約120円)で何が食べられると思う?コーヒー飲めって!?』

ブルガリアで2レバは、安いファストフードスタンドでパンを1つ買って、
そのお釣りで自販機の安いコーヒーを飲めるくらいの金額です。
レストランでの食事はまず無理です。
日本人に馴染みのあるもので例えると、ブルガリアでは2レバで2Lペットボトルのコーラ1本を買う事が出来ます。

私が在学中の若手ブルガリア人医師のキャリアは、製薬会社を立ち上げるのがトレンドでした。
医師よりも賃金が良いようです。
それか賃金のいいドイツに出て行ってしまうかどちらかで、ブルガリアに残って働く医師は少なかったそうです。

『君の医師としての価値はコーラ1本分だよ。』
そんな事を言われてモチベーションが上がるはずありません。


日本の大学病院勤務医の労働環境って最悪と思っていましたが、思い返せばさらに辛い環境があったのですね。
今、ブルガリアの医療従事者の労働環境は改善されているのでしょうか。

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