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もしも、こんな奴がいたら【第6話 ファンは突然に】

ファンとは、どのような存在か。応援してくれる見ず知らずの第三者のことをファンと呼ぶのなら、サクラにファンができたのは17歳の時だ。17歳のサクラに会いに行ってみよう。

17歳、高校2年生。この年代の女子は、皆ダイエットに興味を持ちはじめる。サクラもまた、その一人だった。お弁当箱を小さくしてみたり、脚が細くなる靴下を履いてみたりと、周りの女子たちが頑張る中、サクラは少し違った。本格的だった。まず、高校の図書室に通いダイエットの本を端から読んだ。どうやら、ダイエット成功の秘訣はバランスの良い食事と睡眠、運動らしい。どの本を読んでも書いてあったから間違いない。長期目線でのダイエットを目指すサクラは、料理を頑張った。お弁当を毎日、自分で作って、22時には必ず眠った。運動神経はボロボロだったから、知っている痩せそうで簡単な運動を考えた。ジョギングかな?そう思い、とりあえずジョギングをはじめた。

近所の川原を20分、放課後に毎日走った。足の速い友だちなら、10分くらいで走れる距離かもしれないけれど、毎日サクラは全力で20分走ったんだ。

サクラの地元は田舎だったから、川原ですれ違う人は皆、おじいさん、おばあさんばかりだった。毎日、すれ違う人に「こんにちは。」と心の中で思いながら頭を下げて走った。

ある放課後、いつものように川原を走っていると、おじいさんが川原の鯉を眺めながらストレッチをしていた。サクラはぺこりと、いつものように頭を下げた。すると、おじいさんはサクラの背中を見送りながら「頑張れよ!!」と言ってくれた。


嬉しかった。どこの何さんかも知らないけれど、「頑張れよ!!」の一言が毎日頑張るサクラにとっては嬉しすぎる一言だった。もっとよく顔を見ておけばよかったな。
サクラのファン1号は、あのおじいさんかもしれない。ありがとう、おじいさん。


それから数ヶ月して、サクラは目標の体重になり、ジョギングを辞めようと思った。でも、あの「頑張れよ!!」が今でも聞こえるんだ。見ていてくれる人は必ずいるんだって、サクラに実感させてくれたんだ。だからサクラは、今日も走るよ。




私は知っている。高校2年生から何年経ってもサクラは走り続けることを。毎週必ず1回は、あの川原を走るんだって。サクラはおじいさんの分まで走るんだよね。


あなたにも、あなたを見守る妖精がいます。きっと、今日もあなたを見守っているはずです。


いつか、あなたに届きますように。

そして、あなたの素晴らしさが世界中のみんなに伝わりますように。


私の心の陽射しへ感謝を込めて。




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