雨だから、行く。
私は6月になると、箱根を思い出します。
数年前に、10年来の友人・後輩と私たち家族で箱根へ行ったんです。
試験勉強・海外周遊・就職活動…。辛い時間を2年間ずっと一緒に過ごしてきました。
そんな仲間行く旅行は本当に楽しくて。懐かしくて。
ちょうど梅雨時期だったのですが、初日は本当に気持ちの良いくらい晴れていました。
旅館まで行く川沿いの道
ふわっふわな氷に果肉たっぷりのソースがかかったジューシーなかき氷
旅館のお庭に飛び交う蛍たち
修学旅行のように夜通しやったカードゲーム
川の字になって合宿のように寝た夜…。
今思い出しても、すごくニヤニヤしてしまうほど、楽しかったのです。
そんな楽しい旅行2日目は、雨。
ちょっとだけガッカリしながら旅館を出て、傘をさしながら駅に向かって歩きました。
箱根登山鉄道に乗るためです。
ゆっくり、ゆっくりと傾斜を登っていくケーブルカーに身を委ね、何も考えずボーっとしていたときです。
友人が私の肩をトントンと叩き、にっこりしながら窓の外にむかって人差し指を向けました。
箱根登山鉄道の脇に咲く色鮮やかな紫陽花。
スイッチバックしながら進む箱根登山鉄道は、駅の停車時間も長い。
思わず次の駅で電車を降りてホームに立ち、紫陽花に近寄りました。
花と葉から雨のしずくをぽたぽたと垂らしながら、曇空を明るく照らす紫陽花。
水に打たれる紫陽花の上を、そっと傘で覆ったのは一瞬だけ。私は、すぐに傘を退かしました。
雨に打たれるからこそ、美しいと悟ったから。
柔らかくて。
ふわっとして。
優しくて。
ずっと見続けられる。
そんな自然の美しさを感じました。
”旅行=晴れがいい”なんて誰が決めたのだろう。
晴れには晴れの良さが、雨には雨の良さがある。
晴れでも雨でもその時にしか見られない、たくさんの表情を持つ景色が世界にはたくさんあります。
雨だからこそ、会いに行きたい景色がある。
私が箱根を思い出す時の景色は、いつも雨です。
撮影地:箱根
撮影時期:2018年6月
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?