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【番外編】介護未経験者が特別養護老人ホームで働いて思ったこと

 新卒で入社した特別養護老人ホーム。
私は大学で介護について学んだわけではない、素人でした。

そんな私が、2か月半という短い間でしたが、実際に現場で働いて思ったことを書いていきます。


想像していた以上に認知症が進んでいたり、意思疎通できない利用者さんが多かった

大学4年生の6月に内定をいただき、1度施設を訪問したのですが、当時はコロナウイルス最盛期だったため、実際に利用者さんとお会いすることができませんでした。

翌年4月に現場で働き始めて、まず衝撃だったことが、自分で動けなかったり、幻覚を見て叫んでいたり、同じ話を何度もする利用者さんたちとの出会いでした。

特別養護老人ホームは介護度が高い利用者さんが入居する場なので、当たり前だったと思うのですが、実際にお会いするとこういう場が世の中に存在しているんだと驚きました。

利用者さんとコミュニケーションを取りたいが、その時間がない

コロナ禍だったため、利用者さんは家族との面会ができないことになっていました。
毎日同じ席に座って、ただテレビを見る生活は飽きないのかなと思い、先輩のサポートもあって、利用者さんに積極的に話しかけるようにしていました。

話しかけると利用者さんは嬉しそうにお話をしてくれました。
(怒る方もいましたが)

しかし、先輩と一緒にやっていた業務をひとりでやるようになってからは、利用者さんとお話する時間を確保できなくなってしまいました。

そのことがいつももどかしく、しかし決められている仕事を優先させなければいけないため、早く仕事に慣れて、時間に余裕を作ろうと考えていました。

排せつ介助をしてから、彼氏との性行為ができなくなった

排せつ介助は、最初は自分ができるのだろうかと不安でしたが、1度やってみると意外とできるなと思いました。

しかし、排泄物は様々な状態があります。
お通じが数日間出ていない利用者さんには、下剤や浣腸などの処置をします。

そうすると、ゆるい排泄物がおむつからもれて、シーツまでいきわたっていることがありました。

性行為をするときに、どうしてもその光景を思い出してしまうんです。

介護職をする前は、性行為は愛されてる印だと思っていたので、好きでした。
しかし、介護職をしてからは、彼氏の体を「人体」として捉えてしまって、性欲が湧かなくなりました。

休職してから1年間くらいは、腕や足、顔以外の部分を触られるのも嫌でした。

今も性行為は出来ません。
担当医に相談したら、「時間が解決する」と言われましたが、2年半経っても無理です。

彼氏にはとても申し訳ないです。
だけど、性行為ができるまで待っていてくれる彼氏に感謝しています。

利用者さんからの暴言暴力

昨今、ニュースでは介護士から利用者さんへの暴力事件がよく取り上げられています。

しかし、現場では利用者さんから介護士への暴言暴力が日常でした。
介助をする際に、手を強くつねられたり、髪に唾を吐かれたり、手で殴ってきたり。

介護を始めて1か月くらいで、体は痣だらけになりました。

上司に相談をしたら、「認知症による行動だから我慢するしかない」と言っていたと思います。(記憶があいまい)

ですが、介護士が利用者さんへ暴言を吐いたり、荒々しい介助をしている先輩がいたことも事実です。
介護士ひとりに対しての業務が多く、イライラしていたからかなと思いました。

利用者さんと介護士、お互いにもっと穏やかに生活ができたらいいんですけどね。
難しい問題だと思います。

利用者さんに助けられたこと

ひとりで業務をするようになったころ、私は苦手な利用者さんがいました。
体が大きな男性で、普段は穏やかなのですが、午後になると幻覚を見ているのか、大声で暴言を吐く方でした。

研修期間に先輩とふたりで排せつ介助をした時に、何回も暴言暴力がありました。
なので、ひとりで排せつ介助をすることがとても怖かったです。

しかし、怖いという気持ちを利用者さんに気が付かれるわけにはいかないので、話しかけつつ、介助に集中をしました。

その利用者さんは、ごはんの話しをすると喜んでお話をしてくれます。
なので、お昼ごはんの話しをしていたら「あなたはちゃんとお昼ごはん食べた?」と聞かれました。
そんなことを聞かれたことがなかったので、少し驚きました。

その時は、すでにメンタルが不安定で、お昼ごはんを食べられなくなっていたので、「最近、食欲がなくてお昼ごはんが食べられないんですよ」と素直に話しました。

そしたら、利用者さんは「それは心配ですね。ちゃんとごはんは食べないとだめだよ」と言ってくださいました。

泣きそうになりました。

その利用者さんは、いろいろな病気にかかっていて、毎日が大変そうでした。
それなのに、介助は下手だし、話し方もぎこちない私に対して優しく心配をしてくれたのです。

新人の私に排せつ介助をされることは、利用者さんも不安に感じたと思います。
そんな状況で、私の心配をしてくれるなんて。
自分だったら、自分のことで精いっぱいで介護士を心配する余裕なんてない気がします。

その後、体調とメンタルの限界がきて、適応障害と診断され、休職し、退職をしたので、その利用者さんとお会いすることはできません。

元気に暮らしていることを祈ります。


つづく


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