優しさって何だろうな……
「あなたは優しい人ですか?」
そう聞かれて即答できる人はいるのだろうか?
もし仮にいたとしても、その言葉を額面通りに受け取ることは難しいだろう。なぜなら、優しさとは、そんなに簡単なものではないからだ。
些細な言葉のすれ違いから殺傷事件などが起きる時代。
おいそれと心を開くことができず、不満を伝えることもできず、コミュニケーションがうまくいかないことがあっても、「ま、いっか」で流すことが増えた。
言葉のすれ違いを互いに確認し、「なるほど、そうだったのですね」と和解して成長しあうことよりも、自らの命や生活の安全が優先されるのだ。
こんな時代にあっては、「優しい人のお面」は自分のためにある。
誰かを不快にしないために穏便に済ませるのではなく、自分の身を護るために穏便を装う。
些細な言葉の行き違いを確認しないことで、相手はきっと「うまくいっている」と勘違いを続けるだろう。それが判っていても、沈黙の笑顔を選ぶのだ。
微笑みで手に入れる安全な生活と引き換えに、私は、他者の成長の機会を奪っているともいえる。
確かに、これは他者への優しさではないが、私自身への優しさではある。だから、複雑な気持ちにはなるが、決して間違った行為ではないのだ。
そして、関係が上手くいっている風を装いながら私から離れていく人の存在を認めたら、自らの襟を正していこう。
それがイマドキの優しさなのだと心得て。