読書感想15冊目:蟲愛づる姫君の婚姻/宮野美嘉著(小学館文庫 キャラブン!)
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頭イっちゃってるタイプ(めっちゃ褒めてます)の女性キャラを書かせたら天下一品!と個人的に大好きな作家さんのシリーズもの。
宮野先生の描かれる女性キャラは、誰も彼も能力が突出してるのだけど、それ以上に性格も……という、本当に素敵なキャラばかりなのです。
私の記憶が正しければ、デビューあたりからファンです。そこからずっとぶっとんでる。
と、作家さんへの愛語りをしていたら始まる者も始まらないので本の感想にいきます。
今回の読了本は「蟲愛づる姫君の婚姻」シリーズ第一巻、シリーズ名を冠する「蟲愛づる姫君の婚姻」です。
堤中納言物語の「虫愛づる姫君」からのインスピレーションなのでしょうか。とりあえず、字は違う感じでおなじ「むし」を愛する姫君が出てきます。
大陸で最も強大な斎(さい)帝国の姫君、第十七皇女として生まれながら、姫君らしくなんて過ごさない、身なりには気を使わないし自分は「蟲師(こし)」であると名乗る姫、それが李玲琳(り・れいりん)。
蟲師って?ですよねぇ。
そもそも、蟲師は蟲毒(こどく)を扱う人なのですが、それについて先に記載。
だそうです。
この本においては冒頭、こんな言葉があります。
物語好きな方は「蟲毒」はご存じな方が多いかなという印象です。
それにしても、蟲と毒を題材に、しかも主人公が用いているお話を書くって改めて考えてもおもしろいな……
話は戻りまして。
大帝国の皇女、玲琳姫の好きなものは毒、蟲、蟲毒。そして最愛の姉であり斎帝国の女帝である李彩蘭(り・さいらん)。それ以外のことやひとは基本的にどうでも良いし気にならない、マイペースを突っ走るのが玲琳です。
姉姫たちや宮殿のみなに嫌われても気にしなさすぎて、侍女の葉歌(ようか)はいつも隣ではらはらしてばかり。
そんな玲琳姫、なんと最愛の姉から「政治の道具」として嫁入りが申し渡されます。
嫁ぎ先はお隣の国、魁(かい)。蛮族の国に政治の駒として送り込まれると知った玲琳姫は、怒るでも喜ぶでもなく、女帝である姉に聞きます。
「私を政(まつりごと)の道具になさるの?」
それに対し、笑みで以て答える女帝。
そこで初めて、うっとりと微笑んで受け入れる。そんなお姫様なのです。
嫁ぎ先でもそれは変わらず、「私は蟲師で金がかかる。私のために金を使ってくれる人が夫になる」と、嫁ぐ相手である魁国の王、楊鍠牙(よう・こうが)に向かって堂々と宣言。
さらに王との初夜では王の挑発に乗ってぶち切れて部屋を追い出し、翌日から毒草園を作るために精を出したり、とにかく破天荒ぶりが楽しい。
……玲琳からすれば、「破天荒はそちらのほう」と言われそうですが。
そんな玲琳姫のしっちゃかめっちゃか珍道中、になるかと思いきや、案外と魁国の皆々様もクセがあり。
王様である鍠牙もなかなかのクセ者で、難しいところがあったり(玲琳姫に「大嘘つきね」といわれまくる)、王様の母親である夕蓮(ゆうれん)もみなに嫌われまくる玲琳姫とお友達になってくれる変わり者だったり。
そんな魁国での新婚生活、どうなっていくのか!?
とは言いつつ、基本的には「毒」ばかりでてきます。
王宮でありがちな暗殺を目論まれて飲食物に紛れ込まされたり、国においては謎の奇病が流行ったり。
この世界での病は、普通の病気(?)と蟲病があり、蟲病に中ると「呪われている」と言われます。
そうなってくると蟲師である玲琳姫の出番です。基本的に人に興味はないけれど、医師の役割もできちゃう(だって毒を研究してるから!)蟲師の玲琳姫に蟲と毒を見せたら止まりません。
結果として、蟲師にかかると蟲病の対応ができる、というのが本題ではあるものの、そこには本当の黒幕が控えているもので。
クライマックスの部分のミスリード感は少しだけ強引かつつじつまが合わないような気もしますが、宮野先生の描かれる登場人物は誰も彼もめちゃくちゃ狂ってる(めっちゃ褒めてる)ので、なんだか、「それもそうか」と納得してしまう部分も大いにあるのです。
ほんと、どの人のどの部分においても「まとも」がいやしない。
よくある、お話の中の「良心」と呼ばれる人物、いるようでいないな……
でもやっぱり、このシリーズにおいてもちょっぴりほっこりする部分はあるので(大半は引くし、半笑いだし、突っ込みますが)、クセのあるときめき話を読みたい方にはとてもとてもおすすめです。
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