読書感想25冊目:蟲愛づる姫君 王子は暁に旅立つ/宮野美嘉著(小学館文庫 キャラブン!)
注:感想を書き連ねる間に重要なネタバレをしている可能性があります。ネタバレNGな方は読み進めることをおすすめしません。苦情については一切受け付けません。また、感想については個人的なものになります。ご理解ご了承の上、読んでいただくことをお願いいたします。
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「蟲愛づる姫君の婚姻」シリーズ第十巻。
第一巻はこちら(次巻よりは順にリンクがあります)
婚姻、寵愛、蜜月、純血、永遠、宝匣の第六巻までが第一章。
第二章から「蟲愛づる姫君の〇〇」ではなく、「蟲愛づる姫君 副題」となっており、副題が長いので少し割愛して、「魔女」「恋」「夜」に続いての今作。
でも、基本的に登場人物が変わるわけでも主軸が変わるわけでもない感じなのでご安心を。
今回のサブタイトルは「王子は暁に旅立つ」となっております。
王子って誰……?もしかして炎玲王子?
となるところですが、今回のサブタイトルが示す王子、はずばり、魁国の主君であるところの楊鍠牙王です。そんな彼がなぜ「王子」と表現されるのか。
ずばり。呪われてしまったから。
はい、いつも通りの蟲毒関係問題きました!
いつものこともいつものこと、ということで突如若返った王さまこと見た目は王子な鍠牙もお妃様がどうにかしてくださるだろうとまわりは思っていたのですが。
なんと鍠牙、若返ると同時に記憶もすっかりなくなってしまったとのこと!
しかも、まわりみんなに敵意を剥き出し、王妃である玲琳姫にも牙をむく始末。
側近の利汪は困った様子で鍠牙の姿の年を一言でいいます。
「グレて手がつけられなかった頃の陛下です」
と。
多感な青年期の複雑なお年頃だからという感じかなぁとも思ったのですが、その一番グレてた頃といえば、最初の許嫁であった明々姫を実の母である夕蓮に殺された(と鍠牙は思っている)あたり。人も信じられないし結婚なんてするもんかになっていた頃の彼ならば玲琳姫の存在なんてもう、拒否の一択でしょう。
案の定といいますかなんといいますか、城から抜け出した鍠牙サン、当時そのままの行動をとって遊郭に。
といっても、やはり月日は経っているものだからそれはそれでまた時間の体感的疎外感。
やさぐれまくりで自分の記憶とまったく違う状態になってしまった鍠牙の目の前に、ある人物が現れて言います。
呪いをかけたのは自分であること。ある目的のために協力しあおう、と。
目的とは、蟲師をすべて皆殺しにすること。
そのために、鍠牙に協力を求める人物とは。
前巻読了済みであれば特に謎解きにもならない黒幕なのですが、それより大問題は鍠牙がその話に条件付きで是と答えたこと。
彼が求める対価は当時の彼と、今の彼に重要な意味をもたらすものなので、後々にまわりにその対価が知れると青ざめる人物が多数。
今の鍠牙なら、絶対選ばないこと。でも、若さゆえのまだまだ青い考え方ではそうなってしまうのは当然、なのかもしれません。
遊郭と王城でのそれぞれのやりとり、過去の鍠牙に出会っていない玲琳姫がなぞる、鍠牙の本心。
お互いめちゃくちゃわかりあってるよね!!!いろんなものを飲み込んで、それをこう、なんかそれっぽく糧にしていくのが大人になるってことなのかしらね、なんてちょっと胸を痛ませながら読み進めました。
といっても、やはりこのシリーズは単純なひとの成長物語ではなく、ひとのどうしようもない強い感情、歪んだ性格、性状、特性、そういったものを「毒」として愛でる玲琳姫を中心としたお話。
なので、そのあたりの、登場人物のどうしようもなく通常ではない、歪んだものを噛み締めるのが醍醐味なのだなぁと改めて思うところです。
オチにつながるクライマックスは、そこまでするのか!?そうなっちゃうの!?と人の毒のすさまじさを知る感じです。
ほんとに、手のつけられない奇人であるはずの玲琳姫がまともにみえる。なんでおかしいこと(本人は自分がまともだと思っているけど、まわりと自分が違うということ)がわかっていて、それでもきちんと物事をおさめていけるのかがわからない!といいたくなるくらいに玲琳姫の冷静さもいつも惚れ惚れとするところです。
どれだけおかしなことを口走っても、まわりがおかしなことになりすぎててほんとにまともそうに見えるので笑
お話の根幹はといえば、サブタイトルのとおり王子=鍠牙魁国王の今までに抱えていた問題の、一区切りといったところ。そして、最終巻(なはず)につながるお話の伏線につながる部分も。
玲琳姫の目の前に現れる強い蟲毒がある意味、それを今巻と続巻で解き明かしていくことになるのでそれもわくわくが加速するつくりだなと思っています。
今回は久しぶりに感じる外伝が。
タイトルは『明けの明星』。グレた陛下の、その当時のお話。
許嫁の明々姫が登場。地の文でしか描かれていなかった二人のやりとりが、生き生きとした描写で見られてちょっと切なく、でもほっこりときめきながら読めるお話でした。
公式紹介ページはこちら
コミック版はこちら(第一巻のお話ですが)
お読みいただきありがとうございました!
第十一巻はこちら