読書感想19冊目:蟲愛づる姫君の永遠/宮野美嘉著(小学館文庫 キャラブン!)
注:感想を書き連ねる間に重要なネタバレをしている可能性があります。ネタバレNGな方は読み進めることをおすすめしません。苦情については一切受け付けません。また、感想については個人的なものになります。ご理解ご了承の上、読んでいただくことをお願いいたします。
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「蟲愛づる姫君の婚姻」シリーズ第五巻。
第一巻はこちら(次巻よりは順にリンクがあります)
【シリーズにおける注意】
各巻ではできる限りネタバレを避けつつ(本題でありネタバレなので)感想をあげていますが、巻ごとの感想では前巻までの話はわかっていることとして書き連ねていきます。
婚姻、寵愛、蜜月、純血と続き、第五弾は「永遠」。
永遠、と聞くとシリーズもののよいフィナーレを感じさせる言葉ですね。
もちろん1冊の本の話なので、紆余曲折事件などがありつつ、こう、「こうしてみんなは幸せに暮らしましたとさ。」と綴られるような。
魁国の王、王妃の夫婦はそんな平穏な「永遠」に向かうかと言えば、そういうものではないのです。
だって毒を愛する王妃様と、常に病んでる(いろんな意味で)王様のお話なので。
前回で、とうとう二人は身も心も結ばれる選択をしたわけで。
いよいよその時が……とどきどきしながらお話は進みます。
甘い雰囲気、というにふさわしいはずなのに、なぜか途中から話は「毒」が本題に。
閨での行いすらも蟲師の「毒」につなげてしまう玲琳姫、さすがといったところのやりとりです。
いままで読んできた読書傾向で言うと、官能系でなければ甘やかな雰囲気で終わり、朝を迎える描写が多かったかなという記憶なので、新鮮です。
どうやら蟲師にかかると快楽さえも「毒の海に浸る行為」になるらしく(それはこの夫婦にならではなのかもしれないですが)、その毒に酔いしれてもっとと求める玲琳姫。
雰囲気ぶち壊しですね!
いつも通りと言えばいつも通りな二人のやりとり。そしてどう話が進むかと思いきや。
突然王、鍠牙は苦しみ始め、吐血とともに体に変化が。
長く長く体を蝕んできた蟲病の快癒。
それは喜ばしいことであると同時に、二人の間にとんでもない事件を起こさせる始まりだったのでした。
今回の新たな登場人物は、飛(ひ)国の第二王子、燭栄覇(しょく・えいは)、侍女の春華(しゅんか)、乳母の華祥(かしょう)。
この王子様と魁国の王妹、紗南(さなん)姫との縁談の話が舞い込んだとのことで、賓客は王妃がもてなすこととなっている魁国ではもちろん玲琳姫がその役につくことに。
そんな玲琳姫、その役目を受けると同時にご褒美の約束をとりつけます。
ご褒美とは、あの夜の続き。
そう、雰囲気台無しな上に王の蟲病快癒によりうやむやになっていたあの夜の続きとして、王妃は王の「すべて」を求めます。
王妃が望むなら全てを、がスタンダードな王様は、もちろん約束してくれるのでした。
その後の展開と言えば。
嵐のように飛び込んでくる栄覇王子、その様に怒り狂い怒鳴りつけまくる侍女春華、ぼそぼそと話す陰気で浮世離れした言動の乳母華祥。
飛国の皆さんも変、いや個性的だなぁと感じるところです。
やはりこのシリーズ、登場人物がみんなどこかおかしいんですよねぇ。
どのキャラもほんとうに濃いので、楽しめますね。
さて。
栄覇王子、魁国に求婚に来たはずなのに、なぜか申し込んだ相手は玲琳姫。なにやら蟲師である玲琳姫に己を守る「盾」になってほしいとのことで。
基本的にワケアリごとに興味を持てば(というか求められたら)首を突っ込むきらいのある玲琳姫。今回も一つの賭けを経て、飛国への旅路へ。
その道中、今度は栄覇王子に異変が。
黒目の部分を真っ赤に染め、触れたものに蟲の卵を産み付ける蟲病におかされてしまう。
触れるものすべてを殺す「毒の塊」と化した彼に、先に触れてしまった村人たちと同じく触れてしまった玲琳姫も蟲病に冒されてしまう。
意識を失って後、目覚めた玲琳姫はというと、なんとすっかり人が変わったようになってしまっているのでした。
この蟲病は誰がもたらしたのか、どう解蟲するのか。
そもそも蟲師として無力となってしまっている玲琳姫はどうなるのか。
狂気が全ての元凶……と言うと、ネタバレでしょうか。
それは、誰の、どんな狂気なのか。
玲琳姫の蟲師としての新たな一歩と、そんな姫を愛する国王の鍠牙との複雑な「永遠」はどう作られるのか。
こんな恋物語もありかもしれない。と思えるような思えないような、一冊です。
個人的には玲琳姫の一貫した蟲毒への愛と判断力はすごいな、だし、鍠牙の人となりは楽しくおかしいなこいつ、だし、物語はいつもいつも「えっ、そうなるの!?」な転に転が重なって、最後は「えぇぇぇぇ……そうだったの……ヤベェなぁ……」と思わず息を吐いてしまう感じでしょうか。
めぐりめぐって、最終的に「実は玲琳姫が一番まともなのでは?」と思う終わりもまた、余韻がたまらないところです。
公式紹介ページはこちら
コミック版もあります(第一巻のお話ですが)
お読みいただきありがとうございました!
第六巻はこちら