読書感想35冊目:南箱根のおまもり石屋さん 水晶とふくふく白猫/須垣りつ著(富士見L文庫)
注:感想を書き連ねる間に重要なネタバレをしている可能性があります。ネタバレNGな方は読み進めることをおすすめしません。苦情については一切受け付けません。また、感想については個人的なものになります。ご理解ご了承の上、読んでいただくことをお願いいたします。
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花の女子高生、そんな風に言われる年代の主人公、森住千代里(もりずみ・ちより)ちゃん。
でも、彼女は現在不登校の真っ最中。本人も気にしてはいない、なんてことはなく、家業の旅館でてきぱき働く姿は健気で、苦しみを感じるものの好感がもてます。
女将であるお母さんも千代里ちゃんの様子を理解しているので、働き手として接しつつ見守っている様子。
そんななかで、千代里ちゃんが出会ったのは、なんと天然石。おばあちゃんの最近の趣味は天然石を使ったアクセサリー作り。
千代里ちゃんも石の美しさに触れ、自らも作品作りをすることに。
それをきっかけとして、天然石のブレスレットを販売している「素玉館(すだまかん)」でアルバイトをすることに。
一見怖い顔の店長さんこと守住司(もりずみ・つかさ)さんは、石とお客さんに真面目に真摯に、そして優しく向き合う良いお兄さん。
さらに、サブタイトルにもあるように、オッドアイで白猫のニシキさんはかわいくてもふもふで、そして不思議な猫さんで……
そんな場所でアルバイトをしながら、天然石に触れ、自分でもアクセサリー作りをがんばり、少しずつ進み出そうとしていく。
そんな千代里ちゃんの物語です。
不登校って、本人が学校にいけない理由かあるわけで。その理由は本人にとってもどうしたらいいのか、どうしようもないというか。
そんな自分自身ではどうにもならなくて、もどかしくて苦しくて。真っ暗闇にいるような心地になっているような感じ。
同じ年代の子たちが大多数していることができない。そんな強迫観念にかられてしまいがちな感じも見受けられました。
私自身がそう感じてしまいがちだから、という部分があるので、千代里ちゃんの自分自身に向き合う場面は読んでいて胸がつまされます。
でも、大半はニシキちゃんとの絡みや、アルバイト中にいらっしゃるお客様を通して、千代里ちゃんがいろいろと考え、向き合う姿には応援したい気持ちになりました。
いろんな天然石のお話が出てくるので、石の説明で見た目を想像したり、効能から自分だったらどんな石で作ってもらおうかな、と楽しむのもとても時間になります。
石の姿の描写で、『うるっ、ぷるぷるっ』と千代里ちゃんとおばあちゃんが表現するのも本当に楽しいです。ふたりの石に魅了されてて、石の効能を自然に感じている様子も素敵です。
石を取り扱うお店のご協力のもと、大事に作られたことがわかる作品です。
天然石もお話も好きな方が読むと頷くところがたくさんかも。天然石に詳しくない方も、もしかしたら出掛けた先で、石に目が向くかもしれません。
そうして、素敵な石とご縁があるのも楽しいかもしれませんね。
個人的にも天然石ブレスレットを持っているのもあったので、楽しく読むことができました。
温泉地の優しい空気を味わいながら、旅先でほっこりとした出会いに浸れるような、そんなお話です。
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