【鑑賞記録】開館40周年記念 源氏物語 THE TALE OF GENJI ―「源氏文化」の広がり 絵画、工芸から現代アートまで―
東京富士美術館で開催中(3月24日まで)の開館40周年記念 源氏物語 THE TALE OF GENJI ―「源氏文化」の広がり 絵画、工芸から現代アートまで― を拝見しました。
『源氏物語』を題材とする絵画を源氏絵と呼びます。一番知られている源氏絵は言うまでもなく五島美術館と徳川美術館に分蔵される国宝「源氏物語絵巻」です。トーハクのやまと絵展に出陳されていたので本展では展示されていません。俵屋宗達の国宝「源氏物語関屋澪標図屏風」もお休みです。本展のタイトルにあるように源氏絵も源氏文化を作り出す一要素としてその他の工芸品や近現代の作品も展示されています。
文化とは時代を問わず共通に認識されるであろう事象、共通知とすれば、義務教育を受けた段階でその下地は作られています。漢文や古文不要論なども聞こえますが、いま現在の我々が共通知を捨ててしまえば文化として成り立たなくなってしまうでしょう。一部の知識人だけでは文化にはなり得ないからです。
展示構成は下の公式サイトをご覧ください。
第1部『源氏物語』とその時代には田中親美が制作した「平家納経模写」が展示されていました。大倉集古館が所蔵していることは覚えていましたが、東京富士美術館にもあることを改めて認識しました。
第2部は絵画作品で『源氏物語』のあらすじをたどり、第3部は『源氏物語』の名品として屏風や掛け軸工芸品が並びます。
大和文華館所蔵の「白描源氏物語絵詞(浮舟帖)」はなめらかな墨線に惚れ惚れします。
土佐派と住吉派の作品があれもこれも展示されていて画風を比較するのに大変役立ちました。
土佐光則の源氏絵としては任天堂所蔵品の出陳はありましたが徳川美術館と石山寺の所蔵品はありませんでした。光則の顔は丸みを強く感じます。京博の土佐光吉・長次郎の画帖が展示されていて「澪標」の図は光則に近いように感じました。
住吉派の源氏絵での顔は光則よりもさらに丸みというかふくよかさが強調されています。先生と弟子という関係性がより明確に見えると思います。
福岡市美術館所蔵の土佐光起が制作した「源氏物語図屏風」も出陳されています。光起が描く人物の目は細目で感情が読み取りにくい顔であるのが特徴と思います。
第4部は近代における『源氏物語』として松岡映丘、安田靫彦、尾形月耕などの作品が展示。なかでも30歳で夭折した林皎幹(はやしこうかん)の屏風を好きになりました。夭折しなかったら松岡映丘のように素晴しい源氏絵がたくさん生まれたのではないかと感じました。
第5部は現代工芸や現代文学、漫画などが展示されています。メトロポリタン美術館で開催された源氏物語展でも最後はあさき夢みしの原画が並んでいましたが、本展では『源氏物語』からインスパイアされたガラス作品などもあって源氏文化の広がりを感じさせるものでした。
展示室内にはVRやAIなどの装置もあって楽しんで『源氏物語』の世界を知ることができます。ただ生成AIが質問に回答してくれるのですが、正確な情報なのかは注意が必要だと思います。
午後はシンポジウムに参加しました。