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【前編】祝・ブラックサンダー30周年。有楽製菓が感謝を込めて「30個の楽雷」を投下。その楽しさもイナズマ級!

2024年9月6日、「おいしさと遊びゴコロ」で愛され続ける「ブラックサンダー」が30周年を迎えました。有楽製菓は感謝を込めた記念企画「30の楽雷」を1年かけて展開しています。前編では代表取締役社長の河合辰信さんに世界市場への挑戦やサステナビリティ推進のほか、30周年記念企画の概要も伺いました。


世の中をより良くしたいから、売上300億円を掲げる

― 2018年に河合さんに取材した時、「売上高100億円をベンチマークすると製造工場に負担がかかり、社員の方々も土日祝日に出勤して疲弊するため売上目標を引き上げようとは考えていない」と伺いました。ただ、2024年7月には165億円と、当時とは比べものにならないくらい事業が成長しています。有楽製菓の最新情報をお聞かせください。

5〜6年前にお話しした時と根幹は変わっていません。私は元来、売上目標を立てることが好きではないんですよね。売上という分かりやすい定量的目標を設定するとそれを達成することが目的になってしまうため。そうならないために「今、お客様が何を求めているのか」を考えて実行し、結果として数字が付いてくる形を理想としてきました。

しかし、現在は「将来的には300億円を目指そう」と社内で握り合っています。100億円前後の売上でもブラックサンダーというブランドがあれば業界や世の中にそれなりの影響を与えられますが、今よりも発言力を高めて世の中をより良く変えていくには「会社の規模感」が必要だからです。さらに「高い目標を達成するためにどう工夫していくのか」を社員みんなで考えることも有楽製菓の文化にしたいんです。

スマイルカカオ100%達成。サステナブルなチョコで世界に挑戦

― 現在、有楽製菓が注力していらっしゃることは何でしょうか。

2つあります。1つ目は事業の海外展開です。現在はまだチョコレートの消費量には影響していないものの、日本では確実に人口が減っているため、新たな市場を獲得するには海外に出ていくしかありません。私たちのおいしいお菓子を海外の皆さんにも楽しんでいただきたい。特にチョコレート消費量の多い北米でブラックサンダーの認知度を上げ、定着させていくための戦略を練っています。

2つ目は「スマイルカカオプロジェクト」というサステナブルな活動です。2019年に始動し、2022年9月にブラックサンダーに使用するカカオ原料の全てを児童労働問題に配慮されたものに替え、2024年7月には有楽製菓の全チョコレート商品でも100%を達成しました。ただ、これはほんのワンステップに過ぎず、いかに業界や日本にも広げていくのかを考えています。

ブラックサンダーシリーズを含む全商品にて、スマイルカカオ率100%を達成

「いいことをしている商品がいい」という方は多くいらっしゃいますが「これはいいことをしている商品で高いです。これは何もしていない商品で安いです。どちらを買いますか?」と目の前に出されたら、多くの方が安い商品を選んでしまうのではないでしょうか。しかも「お客様が買ってくれるから」という動機がないとメーカーとしては動きにくい。この現実的な課題をいかにクリアしていくのか、いかにお客様に価値を感じてもらえる活動にするのかを試行錯誤しています。

― 人や地球環境、社会に優しくて高い商品とそうではない安い商品が並んでいたら、課題意識を持っている方でないかぎり後者を選ぶかもしれませんよね。

一方、ヨーロッパやアメリカは宗教的な背景から、これらへの意識が日本よりもやや高いように感じます。教会に毎週末行く習慣や「恵まれている人はそうではない人に施しをすることが務めだ」という考えがベースにあり「環境や労働に配慮されたものを買って世の中に貢献しよう」とアクションする人も見られます。また、ヨーロッパは19世紀後半から20世紀前半にかけてアフリカ諸国を植民地化してあらゆる原料を調達していたため、日本よりも歴史的な繋がりが濃くて自分ごと化しやすいかもしれません。

加えて、日本は昨今の経済状況から出費を抑えたい気持ちの方が強いですよね。「商品がおしゃれだから」「あのインフルエンサーが使っているから」とカジュアルに取り組んでいただけるように、もう少し心理的ハードルを下げる工夫をしたいですね。

ブラックサンダー30周年。30個の楽しい企画が降り注ぐ

― ブラックサンダーは2024年9月で30周年を迎えました。改めまして、おめでとうございます。

皆さんを楽しませたいという思いから誕生した30周年記念企画「30の楽雷

ありがとうございます。おかげさまで、さまざまな企業とのコラボや新商品の開発によって数字が順調に伸びていますが、全商品の母体となるブラックサンダーをさらに強化しています。創業以来、有楽製菓は「味にこだわり続ける」という経営方針を遵守し、おいしくないものを出すつもりはありません。普段から私が全商品の味の最終判断をし、納得しなければ世の中に出しません。だから、有楽製菓の商品はどれも圧倒的においしく、食感もいいんです。

一方、おいしい商品を作れば売れるわけではないため、いかに商品の魅力を皆さんに伝えて手に取っていただくのかもマーケティングチームで趣向を凝らしています。難しいのは、特徴的な味を食べた方が「おいしかった」と記憶に残りやすいこと。

例えば、いろんな味がバランスよく混ざり合っておいしいイチゴ味のお菓子があったとします。それでも「この前買ったやつ、何味だっけ?」と忘れられることはしばしば。そこで、やや強めにイチゴの印象を残すように設計すると「あの商品、イチゴ味がおいしかったな」と次の購入に繋がります。あえてバランスを崩すと、お客様から愛される商品になる。試作の段階では消費者になりきって「いい違和感」なのかを判断しています。

― ブラックサンダー30周年を記念して「30の楽雷」というキャンペーンを実施していらっしゃいます。

ブラックサンダーはこの節目に「楽しさ」で感謝を伝える新たな取り組みを発表しました。「おいしさと遊びゴコロ」で皆さんを元気にしてきたブランドらしく、1年間で30個の企画を展開しています。

ココロもカラダも暖まると話題沸騰。ブラックサンダーのオリジナルセーター(キャンペーンは終了しています)

人気競合とのコラボで、業界全体と売り場を盛り上げる

― 「商品の歴史」や「お客様への感謝」を伝えるだけではなく、ユニークな企画を30件も作った背景をお聞かせください。

ファミリーマートさんが2021年に「ファミマ40周年『40のいいこと!?』」にチャレンジしていらっしゃったのを拝見して「これ、いいな」と。ミスタードーナツさんやチロルチョコさんとのコラボ、また、お笑いコンビのハライチさんとのラジオコンテンツなどを社内で企画しました。

バレンタインや9月6日(ブラックサンダーの日)には毎年大きなイベントを開催しているものの、今回の30周年ではどんなコンテンツが皆さんに喜んでいただけるのかが分からなかった。「とにかく30個作りましょう!」と、さまざまな角度から知恵を絞りました。

ミスタードーナツさんとのコラボ。圧倒的ザクザク感が特長の「ブラックサンダー」を人気のドーナツで表現(販売は終了しています)

― 数々の競合とコラボしていらっしゃるのも素敵です。どのようにお話を持ちかけたのでしょうか。

例えば、チロルチョコさんとはもともと仲良くさせていただいていて、以前にも商品をコラボしたことがあるんです。今回の30周年でも快くOKしてくださいました。意外と競合同士はバチバチしていないんですよ。皆さんがお菓子を買う時「この会社の商品しか買わない」とは決めず「今日はこれ。明日はあれかな」「これもあれも買いたい」と自由ですよね。お客様に多種多様なお菓子を楽しんでいただき、スーパー・コンビニの棚や市場全体が盛り上がることが大切なんです。

チロルチョコさんとのコラボ。2024年11月12日(火)より全国のコンビニエンスストア、スーパーマーケット、ドラッグストアなどで販売中。筆者は10個食べながら本記事を作成

―― 後編では「義理チョコキャンペーン」の誕生秘話や、河合さんの幼少期についてお送りいたします。お楽しみに!(後編はこちらです)

(企画・取材・執筆:佐野 桃木 写真提供:有楽製菓)


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