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工芸業界で成功している会社が取り組んだ3つのこと。

各地の開発ゼミで必ず自社分析や競合資料を確認しているのですが、関東エリアの開発ゼミプロジェクト「Next Crafts Generation 〜Kanto Eleven Project〜 」に参加されている切子の事業者には非常に驚かされました。

江東区の亀戸にある華硝(ハナショウ)と言う江戸切子の会社です。
ゼミの中で競合リサーチの企業リスト資料を見て驚きました。「和光」「伊勢丹」など殆どが異業種の小売業を営んでいるところだったからです。

何故かを確認したら一言「江戸切子に自分たちの競合はいない」と。
「ん?」何故だろう?と不思議に思い、工房に伺いました。

まず亀戸の工房で目の前に飛び込んできたのは誰もが知るイタリアの高級外車が!会長に伺えばもう1台高級外車を所有しているとのこと。大変申し訳ないのですが手仕事を主体にしている工芸の業界でそんなに成功されている事例は聞いたことがなかったのでとても驚きました。

元々、20年前は大手ガラス会社の下請をされていたのですが、その会社が倒産した(大阪と東京の大手商社が倒産して当時ガラス業界のリーマンショックと)をきっかけにこの会社は卸売をすべてやめてしまいました。

販路先がないなら自分たちで売っていこうとBtoC販売する方向へと事業転換されました。その後2007年に経済産業省の地域支援活用計画の認定を受けられ、行政の方々とも上手く取り組みを進め2008年に内閣外務省のお土産品として選定されりことに。

その後口コミがどんどん広まり、認知度も高くなりました。行政のプロジェクトにも積極的に参加され、新商品のランプや照明など製作し、自社で新しい販路開拓をされ、ブランドを確立していきました。

この事業者が成功したポイントは3つあります。

1つ目のポイントは「直販にこだわる」ということ。

販売当初からBtoCの販路でやっていこうと決めてからは、業者を一切通さずに、自ら、広告チラシや雑誌、いわゆるメディアに売り込みを掛けていき、1997年の段階ですでに自社サイトを作られています。(ISDNの回線時代の通販サイトで画像処理がとても重たかったとか(笑)

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当時亀戸の工房の2階の応接間を展示販売場所としてスタートされ、そこで地道に販売を続けられたそうです。その工房での販売データを見ながら自社の商品開発へと生かされ、その後、日本橋にも路面店として進出。自販だけで猛烈な売上げを叩き出しました。

2つ目のポイントは「新しい技術に拘る」ということ。

江戸切子の業界はだいたいが七宝柄などオーソドックスな伝統的な柄の商品が多いですが、この事業者は伝統的な文様だけじゃなく自分達のオリジナルの柄を生み出していきました。

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このようにオリジナルの柄を作ることまでは、どこの事業者も取り組んでいることではあります。しかし驚いたのは、このオリジナルの柄を全て、意匠や実用新案として「知財として登録」したことです

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登録したことでまずは自分たちの技術を経営資産化したのです。そしてさらに驚いたのは異業種の仕事にも転用できるように進めてました。

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切子柄のてぬぐい。

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切子柄のiPhoneケース。

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切子柄の折り紙。

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切子柄の飴まで!

このオリジナル柄の商品に関しては自店舗でしか販売しません。そして、オリジナルの柄を木工や布など異業種の職人と連携して次々と商品を産み出しました。

そもそもこの技術を並行展開していった理由はお店にあります。

皆さん観光や旅行先でお土産を買われます。買っていく相手先も様々だと思いますが、江戸切り子の様な高額な商品を買っていく相手は限られます。日本橋に来られている一人のお客様が江戸切子を複数買っていかれる可能性は低い。機会ロスにならないように、沢山の方に買っていきたいお土産としては江戸切子は不向きです。その点を彼らは考えて実行していったのです。

おそらく伝統工芸で、特に切り子の業界でここまで商品展開をされている事業者は僕が知る限りではほとんどいらっしゃないのではないかなと思います。

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3つ目のポイントは「若手育成にこだわる」

自社で江戸切子の技術を教える学校経営をされているんです。従来工芸の職人を育てる仕組みは10年掛かってようやく一人前になる、「先輩の仕事を目で見て盗め」仕組みです。ただ、それでは時間があまりにかかってしまい、いつまでたっても職人が増えない。途中でやめられることもある。雇用しながら教育をするという人材教育の課題はどこの会社にもあります。

そこで通常では10年かけるところを、5年でひと通りの事が出来る教育システムを作ろうという事で、これまで閉鎖的だったベテラン職人の技術を全てオープンにして多くの人に教える方針にを打ち出しました。

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初心者コース、プロコース、職人としても活躍出来るコースなどと、実に6コース展開されています。このコースを経験した生徒で優秀な人を自社に採用されたりしているそうです。

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そしてこの教育事業を進めることで誰が育成されていうかといいますと、実は自社の既存の社員なのですね。OJTにかかる経費を人から頂いて運営することに成功されています。そして今度は若手職人たちは人に教えることによって技術の反復ができる、無理なく工芸の育成のサスティナビリティが出来ていうように感じられます。

普段の技術だけを盛り込んだ形での商品の開発ができれば最高ですが、そうでなくても自社の持つ技術や素材や仕組みなど社内にあるリソースを上手く活用することで「商品になりうる」可能性は十分にあると僕は思っています。会社の中にある全てがその可能性を秘めていると思います。諦めずにさがしてみると何かあるはずです。


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