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工場の写真を1万枚撮影したので見てほしい。|ファクハク

 今回ばかりは100%自慢で恐縮です。工場見学への愛が高じ、オープンファクトリーの開催メンバーとなりはや2年。静岡市内で巡った工場は20以上。撮った写真は1万を余裕で超える。せっかくなので大放出するとともに、まちと人と工場が近づくと、ワクワクする未来に繋がる気がするので、そんな話しも聞いてほしい。

オープンファクトリーをやる側になった

ご安全に

 私の工場や技術への愛と好奇心は父親譲りなのは間違いない。父は鉄鋼業界で働いていて、子供に「鉄子」と名付けようとした鉄男だった。「安全」「リスク」にもうるさいので、高所での三点支持の徹底と交差点では道路から離れて立つようしつけられ、「ご安全にー✌」を復唱させられた(だいぶイカれたガキだったので、毎日の危険行動を見かねたのかもしれない)。

 工学部には落ちてしまったので、ものづくりの道は歩まなかったのだけど、器用貧乏なりにまわりまわって今は製造業のDXなんかをお手伝いさせてもらっている。

 その結果、中小規模の工場で感じられる"価値の生み出される息遣い"のようなものにハマり、「産業観光」や「オープンファクトリー」なる概念を知るのだった。

2021年に開催された「産業観光ガイド養成講座」に3か月参加して、ガイド(の卵)になった

ファクハク

 2022年3月頃、静岡でもオープンファクトリーをやりたい、産業観光は素晴らしいとつぶやいていたところ、山崎製作所の山崎社長が拾ってくれて、あれよあれよのうちに実行委員会が立ち上がった。 

初めて山崎製作所さんの旧工場に訪問して、
山崎社長の熱い思いに興奮したときの記念写真(2022年3月)

 そこから紆余曲折あって一年半後の昨年11月に「静岡工場博覧会(通称:ファクハク)」を初開催。そして一年後のこの週末(10月18日(金)~20日(日))、規模を拡大して二度目のファクハクを開催できました。楽しかった~!

ファクハク2024

 ついつい前置きが長くなりお恥ずかしい。つまるところ、自分が工場に遊びに行きたい、写真を撮たい一心でファクハクの企画メンバーとなり、ファクハクの宣伝用という建前とともに写真を撮りまくってきたのです。その写真のごく一部を、ここでご開陳させていただく。

静岡市葵区

JR静岡駅より北側、行政機関や商業施設が集まる都会だ。
工場は街中からすこし北に離れたエリアに多い。

アオイネオン

 屋外看板・広告の会社。静岡県内にかぎらず、全国のでかいビルの高いところに大きな看板を取り付けている。会社名にある通り、ネオン看板も得意で、ネオンアートやネオンアクセサリーも手掛けていて、ファンが多い!(ネオン、エモすぎる!)

国内に数少ないネオン職人さん。ガラス管を手ですっすと曲げていく姿がカッコイイ

※1枚目はCCCで開催された「静岡のスゴ技!工場のヒミツ展」のパネル写真を担当した際に撮影

ウッドクラフトコバヤシ

 ファクハク前のリハーサルに参加して、ヒノキのムク材で調味料ボックスを作らせてもらった。今も台所が爽やかなヒノキの香りがして、QOLがバク上がりしている。

プロの日常を垣間見るのが好きで、道具の写真は絶対に撮ってしまう

開発紙業

 古紙が回収されたあとどうなるかなんて知らなかった!でっかいショベルカーでドカーンと機械に放り込まれて圧縮、1トンの塊となって富士方面の各製紙会社で再生紙に生まれ変わる。

変なものが混ざっていると機械がとまって大変なので、定期的にチェックする
かなり現代アート

※CCCで開催された「静岡のスゴ技!工場のヒミツ展」のパネル写真を担当した際に撮影

静岡市駿河区

駿河区はJR静岡駅の南側~安倍川の向こう側。海にぬける風が気持ちいい住宅街。

青島歯車製作所

 名前の通り、歯車を作っているのですが、量産品ではなく特注品!大きなものから小さなものまで、ゆっくりと回るドリルが歯車の溝を削っていく様子は大人も子供も夢中。何度お伺いしても別の機械に吸い寄せられて、見入ってしまいます。

金属の削りかす「キリコ」が美しい
古い機械も現役で動いていて、操作盤がレトロでかわいい
これは働く歯車。歯車を削る機械の中でも、歯車が活躍しているのだ。

 青島歯車さんには、愛機 dp3 Quattroを持ち込み、Foveonセンサーで工場写真を撮らせてもらった。かっこよすぎるので先日あった展示会に出し、フォトブックも作成させてもらった(強欲)。

北八ヶ岳の自然と工業を並べた
ブックもめちゃくちゃかっこよく仕上がったので
色んな人に見せたいけど、見せる場所がない

エクタス

 エクタスさんは社長を筆頭にものづくり大好き人間が集まっている。大手企業から個人発明家などいろんな人の「作りたい」を一緒になって試作するのだけど、子供の夢のようなアイディアも実現してしまう。

小学生のアイディアをもとに製作したおでん型けん玉「おでけん
おでけんの製作途中の姿。具材ごとに素材も塗装も違う。おいしそう。

栗田産業

 御前崎に大きな工場をもち、本社のある静岡では工房併設のショップがある。鋳物は製品も工程もとにかくかっこいい。

近所のひとには蕎麦屋だと思われることがあるらしい。この和モダンな店がショップ兼工房。
江戸時代の鋳物職人たちがすんでいた鋳物師いもじ町近くにある。
ショップに錫鋳物工房が併設
私の推し鋳物「サンコウチョウ」の栓抜きがセンター。
最近、公式からあまり推されていないことが一番の悩み。

ナガハシ印刷

 印刷機はジェット機並みの部品精度らしい。高速で大量に0.01mmのズレもださずに印刷をする。そしてなによりCMYKで再現できない色は職人さんがインクを練って作る(特色)。

インクをねっている。これはたしか自社製品「いいかげんノート」の罫線のインク
最後はめちゃくちゃ細かく人の目でチェックしていた

前田工業

 Recipe(レシピ)という自社ブランドをもつ靴メーカー。企画・デザイン、製造、販売すべて自社でやり切っている。しかもほぼ全ての材料や工程が国産!

 工場にはショップが併設されていて、さらに事務所2Fにはアウトレットコーナーもある。私の足にあっているのか、持っているヒールの中で一番歩きやすくてお気に入りの靴も前田工業さんのものだ。

村田ボーリング技研

 溶射ようしゃという金属の表面加工技術を中核とした、知る人ぞ知る会社。大音量・大迫力で炎が噴き出す現場は圧巻!!

溶射ようしゃ
溶射のあとのフュージョニングという工程。炎色にうっとりする。
切削加工の若手の職人さんが、技術向上のために作ってみた作品(ご本人は作品とはいってなかったがどうみても作品)これ金属から削り出しているというから、脳がバグる。

理研軽金属工業

 アルマイト漆器というロストテクノロジーがもととなった工場。今はアルミの建材メーカーで、アルミの棒から建材までこちらの工場で一貫加工。工程はマル秘なので写真がないが、めちゃくちゃかっこよかった。

遠くの茶色い建物、てっきり木造とおもいきや、外壁はアルミ(木材のような塗装がされている)あとなんと左の鳥居もアルミ製だった
これがアルマイト漆器のタイルで作られたモザイクアート・・
アルマイト漆器は、80年前に当時の最先端技術であるアルマイトと伝統工芸を組み合わせた挑戦的な技術。戦争で技術が失われてしまい、現代では100%は再現できないらしい

清水区

国内有数の国際拠点港・清水港がある

アイエイアイ

 静岡市を代表する大メーカー。実はこの日くるまで何を作っているか知らなかった。工場ラインで製品を右から左へ移動させるアクチュエーターなど(幅広い)の設計開発製造。

ものづくり・理科好きを増やすために
子供向けにミニロボと呼ばれるサッカーロボットを作っている。

伊豆川飼料

 国産ツナ缶97%を製造する静岡県にうまれるべくしてうまれた会社、それが伊豆川飼料さん。マグロの残渣(ツナ缶に使わなかった部分)を使った肥料・飼料を製造する。このマグロ肥料は美味しいみかんとお茶のもと。

肥料の袋詰めラインはずっと眺めてしまう
魚粉は"おかか"のにおい
成分分析のための、理科室みたいな部屋

セイシンメタルプロ

 興津川の上流で鉄骨を組み立てている。溶接の香り漂う工房の隣はおしゃれなジャズ喫茶のような事務所。

溶接体験をさせてもらえる。超本格的でかっこよすぎる。
仕事場スペース
同行者も私もかっこいい・・おしゃれ・・とつぶやきまくっていた。
鉄の武骨空間とのギャップが計算されていて最高

セイリン

 世界中の鍼灸しんきゅう用のはりをつくっている医療機器メーカーさんが清水にあるなんて、しらなかった・・。1年で数億本の鍼を作っているらしい。清潔・ぴかぴかの工場!

※CCCで開催された「静岡のスゴ技!工場のヒミツ展」のパネル写真を担当した際に撮影

大日工業

 業務用エアコンの基盤を量産するラインを見せてもらった。コンデンサーや、爪先に100個ぐらい載りそうな細かな部品を緑の基盤の上に正確に素早くロボットアームが載せていく。

出発待ちのコンデンサーたち。ジョンッジョンッと前に進んでいく
パーツの交換

東海テクノ

 プラント、産業機械メーカー。すべて特注なので、毎回つくっているものが変わる。基本的にはでかいものが多い。ものづくりに詳しい方がここの熔接をみて感嘆していた。分厚いステンレスのでっかいものを正確にひっつけるのは、あらゆる工程に難しさがあるらしい。

でっかいものが作れる空間。クレーンもデカい。
ファクハク見学者向けに溶接セッションをみせてくれた
めちゃくちゃたくさんの道具と部品があるけど、素晴らしく整理整頓されている。
素人目にもわかる美しさだった。

東名鍛工

 折に触れて思い出し、人に語ってしまう大好きな工場のひとつだ。アプセット鍛造と呼ばれる、1200℃に熱せられた真っ赤な鉄の棒を上下左右からバーンと数百?数千?トンの力で成型する。

1200度の鉄棒をでっかい火ばさみみたいなのでつかむ

 大迫力で圧倒されるし、工場各所に遊び心があって、社長の人柄がにじむ。

ワークショップでは、刀鍛冶体験(熱された鉄をぶったたく)

長澤瓦商店

 清水瓦の復活にチャレンジしている、いま日本で一番注目される瓦屋(だとおもっている)。

鬼師・長澤玲奈さん
瓦粘土でアクセサリーや小物を企画・製造・販売している

 日本三大瓦産地に数えられた清水だけど、その歴史は50年前に途絶えてしまった。かつての記憶をたどり語ってもらったトークが最高だったので、ぜひ見てほしい(リンク先にYoutubeあり)

三保造船所

 興奮しすぎて、途中から記憶がない。三保半島を象徴する風景になっている「三保造船」さん。中型の船舶を作る(中型って規模にはみえなかったが、もっと大きなものはあるから、ということらしい)

 鉄板一枚から折り曲げ溶接してじょじょに船っぽくなる。

進水式用のドック。海を割る壁の上を歩いて興奮しました。

山崎製作所

 ファクハクの実行委員長、山崎社長の会社。板金屋さんで、少量多品種の金属加工をおこなっているのだけど、とにかく全ての工程がかっこいいし、働いている人達がとても朗らか。

ピンクのラインとクレーンがかわいい。
溶接はいつみてもカッコイイ
(後ろの図面っぽい映り込みは生成AIで処理しているのでご安心を)
湯気がたっていた
BtoBだけでなく、toCの自社製品がたくさんあって、そのなかでも有名なのがKANZASHI。社内で絵企画~販売まですべて行っているらしい。
ファクハク2024のご褒美に、3本目のKANZASHI買ってしまった!うれしい。ステンレス一枚から切り出され、丁寧に曲げ磨かれているので剛毛my hairをしっかり支えてくれる。

工場見学のススメ

 インターネット上への公開をOKと言っていただいた写真のうちからごく一部を抜粋してご紹介させていただいた。工場の写真を撮りたいと思う人は多いとおもうけど、工場内は機密の塊だったりする。無断撮影は厳禁だ。各社ともリスクを承知で、それでも一般の人に見てほしい、知ってほしいという思いと信頼関係で工場を開いてくれている。(何様やねんというセリフが続いて恐縮なのですが)感謝とリスペクトの気持ちで工場に出会ってほしい!

 ところで、ファクハク期間中、たくさんの人が工場にきて、興奮したりニコニコしていたのを見た。もともと私利私欲の延長で始めたファクハクの実行委員だったけど、知らない人が工場で喜んでいる様子を見ると嬉しかった。
 ある小学生姉妹のお母さまのセリフが忘れられない。「娘たちには将来好きなことをやってほしくって。女の子だってものづくりできる時代だもんね。」

今年のファクハクも楽しかった~!
(photo by イネさん)

 就職とか採用とかそんな直接的な話しはちょっと脇に置いておいていいと思っている。ただ、色んな人が工場(つまり地域の産業)のことを少しずつ気に掛けるようになるだけで、長期的には地域や産業にとってものすごくポジティブなものが生まれる気がしています。ご縁は繋がる。10年先行する燕三条なんかまさにそんな感じ。
やれやれ、静岡がさらにいい町になっちゃうなー!!!



 ファクハク(静岡工場博覧会)2024は終了しましたが、また一年後に開催予定。2025年は本番までにもっと工場の魅力を発信するイベントをやっていきたいなと思っていますので、お楽しみに。

ファクハクのnoteもあるので、ぜひフォローしてください~!


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