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お酒もご飯もおかわり必至! 「へしこ」とは? 【読みサバ】8尾目

突然ですが皆サバ、「へしこ」って知ってますか?
食べ物ですよ。
簡単に言うとサバの漬物、糠(ぬか)漬けです。保存食品であり、発酵食品ですね。
サバ好きであれば知ってるわい!という方も多いですよね。
GoogleやらYahoo!やらを調べてみると、結構検索されているんですね。
きっと頂き物だったり、旅先土産で買ってみたはいいが、はてどのように食べるのであろう?ということを調べているんじゃなかろうかと(サバやし見解)。
切り身も購入できますが、一匹丸っと姿でも販売されていて、丸の方はなかなか迫力もありますので、ひとつ調べてからという流れは想像に難くありません。
ぼくも初対面は戸惑いました。
都内で偶然購入したんですが、速攻ググりましたね。
しかし、今では偏愛しているといってもいいくらい。
特に、日本酒好きとしては晩酌のアテにヘビールーティンしてます。

とある日のサバやし晩酌(この日はビールでした)

「へしこ」は地域性のある食べ物で、主に日本海側で作られています。なかでも北陸は福井県の郷土料理として知られています。さらに言えば、福井県南西部に位置するかつての若狭国、つまり美浜町以西が発祥では、と言われています。
美浜町は2005年5月に「へしこの町」として商標登録し、2019年6月には「美浜のへしこ」が地域団体商標登録されるなど、町をあげて「へしこ」力の向上に努め、地域の活性化へつなげています。サバやしはサバ・へしこを含め若狭地方やこの町が大好きで、公私にわたり何度も訪れています。

観光道路「レインボーライン」の山頂公園からみた景色の画像
美浜町と若狭町にまたがる観光道路「レインボーライン」の山頂公園から見た日向湖(手前)と若狭湾。レインボーラインは若狭湾国定公園の観光名所。山頂公園からは三方五湖を見渡せる。

さて、へしこは江戸時代の中頃にはすでに作られていたという記録があります。生魚の輸送や保存が未発達だったゆえの知恵・保存食として水揚げ地の各家庭で作られたのが始まりでしょう。近年では各家庭で作るほどではないようですが、土産物として人気があります。
ちなみに、「へしこ」という名前の由来は、押し込む意味の「へしこむ(圧しこむ)」からとも言われます。なので、サバが有名ですがイワシやイカ、フグなんかも「〇〇のへしこ」として売られているものがあります。

そんな「へしこ」ですが、どうやって作られているかを知る人は案外少ないのでは。ここでは、以前取材させていただいた美浜町のへしこ小屋(へしこを作る作業小屋。代々にわたり住みついてきた“小屋つき酵母”がいい仕事をしてくれるとか)での作り方をご紹介します。

船小屋を改装したへしこ小屋の天井の画像
船小屋を改装したへしこ小屋の天井。天井の白い部分はこのへしこ小屋に住みついている「小屋つき酵母」だとか。

①サバを背開きにし、塩漬けにする。

塩漬けされたサバの画像
塩漬けされたサバ

②①をいったん取り出し、塩漬けでできた「シエ」と呼ばれる魚の旨みの詰まった液をベースに調味料(秘伝のタレ)と米ぬかで漬ける。漬け樽に層ごとに糠をかけて何層にも重ねていく。
※この過程を本漬けといい、美浜のへしこ作りの特徴がこの二段仕込み。

糠漬けされた塩漬けサバの画像
秘伝のタレを使って塩漬けサバを糠漬け

③②の樽に重しを乗せ、約1年間、樽の中で熟成させる。この間、毎日様子を見て向きを変えたり重石を調節したりと手間をかけている。

本漬け(糠漬け)の樽の画像
本漬け(糠漬け)の樽。重石は一つ20kg。

④③から約1年後、発酵が進み、へしこになったサバを樽から上げる(樽上げ)。背開きの背に、旨みがたっぷり染み込んだ米ぬかを詰めて、形を整える。樽上げしたへしこは、すぐに真空パックされる。

糠をたっぷり詰めた背開きのへしこの画像
糠をたっぷり詰めた背開きのへしこ

ところで、若狭湾といえば、サバ旅@小浜でもご紹介した鯖街道。この地方でサバの保存食品「へしこ」が生み出されたのもむべなるかな、なんですが…。
実は、若狭湾におけるサバの漁獲量は1980年代から激減したまま。
このままではへしこを含む若狭地方のサバ食文化も風前の灯…ではなく、今ではノルウェーからの輸入サバを使って継承されているのです。
とりわけ、へしこ作りには大型で脂がしっかり乗った、しかも価格が安定しているノルウェーサバはうってつけでした。「へしこの町」美浜町のへしこも、今ではほぼノルウェーサバを使っているそうです。国産サバの漁獲量減少は悲しいことではあるものの、地域の食文化や特産品という産業を守ったノルウェーサバへの切り替えは英断であったとサバやしは思います。

もちろん、他の地域では今もサバは獲れるので、国産サバを使ったへしこを作り続けているところもあります。
それぞれの場所で、それぞれのこだわりをもって作られているへしこは、当然、味も食感もさまざま。消費者としてはありがたく食べ比べを楽しんでいます。

あ~今日も日本酒がススむ!
個人的には、赤ワインともマリア~ジュ! 
お試しあれ!

(サバやし的)へしこのおいしい食べ方は?

刺身
糠を洗い落として、骨があれば除き、お好みで薄皮をはがして薄くスライス。薄切りにした大根と一緒にいただくと塩味がほどよく緩和され、後口もスッキリ。サクサクとした大根の水分と、凝縮されたサバの旨味が合わさってたまらんです。

薄切り大根にのせたへしこの刺身の画像
薄切り大根にのせたへしこの刺身

炙り・焼き
いちばんポピュラーな食べ方。グリルやオーブン、フライパンなどで炙ったり焼いたりしても美味しいです。ポイントは、表面のヌカを少し残した状態で焼くこと。焼いたヌカの香ばしさと食感がいいアクセントに。もともとそのままで食べられるものなので、火の通しすぎは禁物。軽く炙る程度に焼きます。とにかくご飯と合います!

オーブンで焼いたへしこの画像
オーブンで焼いたへしこ

お茶漬け・ふりかけ
白ご飯との相性も尋常でないのがへしこ。特に、へしこの塩気を活かした茶漬けはおすすめです。薬味はネギや海苔、わさび、白ゴマ、あられなどお好みで。個人的には細切り青じそをたっぷりのせると旨い!

へしこのお茶漬けの画像
へしこのお茶漬け

そのほかにも、炒飯やパスタの具としても最高ですよ~

※サバの旨みが染み込んだ糠は、フライパンで炒ると「へしこふりかけ」ができます。

※へしこは保存食のため塩気が強いものもあります。気になるという方は水や酒に浸けて塩抜きをするという方法もあります。

最後に、へしこ好きへの朗報です。2003年に福井県立大学の赤羽教授によるへしこの血圧抑制効果の研究発表で、サバのへしこは、血圧を抑制し、正常化する効果があることがわかりました。優れものですね〜。ただし、適量を食べることがポイントで、一日一切れ(約3cm:約15g)が目安のようです。

赤羽名誉教授はへしこに含まれる高血圧などを予防する効果のある成分についても調査。発酵の過程で(1)サバのタンパク質が分解されてアミノ酸の結合物であるペプチドが大量に生成され、血圧の上昇を抑える(2)ぬかの糖質の働きで乳酸が生成され、脂質代謝を促進する-メカニズムを突き止めた。

産経新聞 保存食品「へしこ」で生活習慣病予防
https://www.sankei.com/article/20160112-CVWENW3F3BIQVOJQ3HUMLEAHFA/4/

「塩分摂取量を上回る血圧抑制効果が期待できるとはいえ、食べ過ぎないようにすることが大切」と赤羽名誉教授。1日1、2切れ程度が適量とする。

産経新聞 保存食品「へしこ」で生活習慣病予防
https://www.sankei.com/article/20160112-CVWENW3F3BIQVOJQ3HUMLEAHFA/5/


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